Slash×Slash

Slash(m/m小説) レビューブログ

※万人向けの内容ではないのでご注意ください
→このブログについて

[タグ]キーワード:年の差 の記事一覧

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

A Strong Hand
Catt Ford
A Strong Hand★★★ summary:
SMシーンの高名な写真家であるDamianは、予定していたモデルが来られなかったある日、思いついたイメージをためしてみるためにアシスタントのNickを使う。そして、Nickが完全に彼のイメージを再現していることを発見した。

Nickは学費のために仕事を必要としていた。全裸でSMシーンの写真を撮ることにもそれほどの抵抗を感じなかった。Damianはすぐれた写真家で、モデルを大事に扱っているのを見ていたし、カタログの写真はモデルの顔が判別できないよう暗い影にされていることも知っていた。
彼が知らなかったことは、自分がDamianのイメージの中で折り曲げられ、器具に拘束されることにどれほどの興奮を覚えるか──どれほど、Damianの支配の下で昂揚するか、ということだった。
彼は欲情し、驚く。Nickはゲイではなかったし、SMに対するわずかな知識も、興味もなかった。だがDamianの下で彼は服従の喜びを覚えていく。

DamianとNickは、互いの間にあるものを探りはじめ、DamianはNickを自分のSubとして様々なことを教えはじめる。
一度Nickが自分の中の性癖に気付いた以上、無自覚にその世界に入っていくことは危険をともなう。「セーフワード」の存在すら知らないNickを無知なまま放置しておくことはできなかったし、DamianはNickを支配する誘惑には勝てなかった。
だがNickの持つ好奇心が満たされた時、Nickが彼を去るだろうことも、Damianにはわかっていた。彼らは10の年の差があり、Nickを動かしているのはあくまで未知の世界への誘惑でしかない。
そう思いながらも、いつのまにか、DamianはNickに対する気持ちを無視できなくなっていく。支配と愛情の境い目で、彼は苦しみ、主人としての自信も失い‥‥
.....



わりとSMってサディズム/マゾヒズム的な観点からとらえられがちですが、スラにおける(というか欧米における、か?)SMというのは「Slave/Master」の関係性を重視するものが主で、嗜虐的な(だけの)ものは少ないように思います。
BDSM系の名作と言えば「Remastering Jerna」なんかもすごく好きなんですが、このへんを読むと「主人にもスキルが必要」ということがよくわかります。奴隷の欲望と限界を正確に読み、己を律するだけの強さがない人間は、Dom(Dominant=支配者)になる資格がない。
奴隷と主人とは言っても彼らの間には深い信頼が必要で、互いを信頼するからこそ彼らは深くシーンの中へ入っていく。奴隷の服従と屈服を得た主人には、その信頼に応える義務があります。
信頼を基礎として、彼らは互いの限界をさぐりながら、行為を深めていく。痛みや拘束具は、己を通常では感じられない世界へ解放していくための道具であって、目的ではない。

この「A Storong Hand」は、そのへんを見事に凝縮した話で、プレイの物理的な詳細だけでなく、そこにある精神的なつながりやハーモニーを書いています。
初心者で、ゲイでさえないNickを新たな世界へ導こうとしながら、DamianもまたDomとしての資質を問われる。彼は経験の深いマスターですが、Nickとの間にあるものはそれまでの彼の経験だけでは対処できないものです。
NickはDamianの支配を望んではいるが、一方で見知らぬ行為に怯え、途中でセーフワードを口走ってしまうこともある。
この場合、セーフワードを発した奴隷(ってのも何かちがうんだけど、Subをどう訳せばいいものやら…)ではなく、そこまで追いこんでしまった主人に問題がある。それが、即座に行為をやめて反省するDamianの様子からもよくわかります。
話の中でも何度か言及されますが、彼らはDomとSubの関係ではあるが、本質的にその関係を支配し、すべての力を持っているのはSubの方なのです。

Nickは迷い、惑い、Damianはいくつもの間違った手段を取ってしまう。
失敗と葛藤をのりこえ、彼らは互いを信頼することを覚え、相手のリミットを覚え、単なるプレイをこえる人間関係をつくりあげていく。そして、さらに深い感情も。

SMの話というより、信頼と人間関係の葛藤の話です。エロは山盛りですが、特にハードなプレイもなし。痛くもないし、受けもそんなにいじめられたりはしないので、SM読まない人でもおすすめ。
あと、写真を撮るシーンで紡ぎ出されるイメージがとても艶っぽくて美しい。
ラストはちょっとあっさりしすぎた感もありますが、そこまでがとてもおもしろかったし、特殊要素ではあるけれども、人間関係の絡みがよかったので★みっつ。

★BDSM

スポンサーサイト

The Ghost Wore Yellow Socks
Josh Lanyon
The Ghost Wore Yellow Socks★★ summary:
傷心をかかえてサンフランシスコの旅行から帰ってきたPerry Fosterが自分の部屋で見たのは、空のバスタブに入っている死体だった。穴のあいた靴、黄色い靴下。見知らぬ顔。
愕然として、Perryは部屋の外へとびだす。
彼の住むAlton Estateは古い建物で、今は各部屋ごとに住人がいる。Perryと同じ3階には、元海軍のSEALに所属していたNick Renoが住んでいた。
Nickは不承不承ながらも部屋をチェックしてくれる。だが死体はどこにもなかった。

Alton Estateに住む誰もが、そして警官たちも、死体はPerryの思いこみだと判断する。
だがNickだけは少しちがった。彼はPerryの部屋をチェックした時、床に落ちていた古ぼけた靴の片方を、何気なく窓際に置いたのだ。警官が来た時にはその靴は消え、かわりにPerryの靴が置いてあった。
Nickは死体は見ていない。それを信じればいいのかはわからない。だが、この部屋で何かがおこっている。それはたしかだ。

Perryは自分の見たものが幽霊だったとも、幻だったとも思っていなかった。誰かが彼の部屋に死体を隠したのだ。だがPerryが部屋の外に出てからNickが見にいくまでに、一体どうやって廊下を通ることなく死体を運び出したのだろう。Perryは事件を自分で調べようとする。
警告、新たな死体、建物にまつわる古い物語、遠い昔に恋人を奪おうとして死んだ男の伝説。住人たちは皆挙動不審になり、重苦しい空気の中で、彼らが秘めてきた隠された顔があらわにされていく。逃亡者、覗き屋、昔の持ち主の子孫…

その中で、殺人者の顔を持つのは誰なのか。
.....



Perryはゲイであることが原因で親元を離れ、画家を目指している23歳の童顔の青年です。喘息がちで、失恋したばかりで、今月の家賃まで旅費に使いこんでしまった上、とぼとぼと家に戻ってきたら死体が待っていた、と、もう踏んだり蹴ったり。
Nickはそんな彼に巻きこまれることを避けようとします。だがPerryは彼が思っていたような「ドラマクイーンタイプ」ではなく、じつのところは快活で賢く、粘り強い。最初こそじめじめ落ちこんでいますが、すぐに気をとりなおして、根っこにあるポジティブな気性を見せ、自分で建物の謎を調べはじめる。

Nickは軍をやめて仕事を探している最中で、LAの友人のところで職をもらえればバーモントを離れるつもりなので、なるべくPerryに近づきたくはないのですが、少しずつPerryの新たな一面を発見しながら段々と惹かれていくのをとめられない。
その経過はゆっくりで、まるで似たところのない2人が互いの距離をつめていく様子が、物語のもうひとつの核となっています。ものすごくドラマティックなことがおこるわけではありませんが、Nickが「駄目だ」とか「馬鹿げてる」とか思いながらちょっとずつ傾いていくのがおもしろい。Perryに対する庇護欲がどこからわいてくるのかわからなくて、自分でとまどっている。そしてNickが思っているほどPerryは子供でもなかった。
彼らは互いに惹かれるが、たとえ今はうまくいっても、Nickはバーモントへ行ってしまう。続くわけのない関係です。
だからといって踏みとどまれるものでもない。Perryもまた後からくる喪失をわかっていて、一歩踏みこむ。「ただのセックスでいい」と言うPerryに、Nickはたじろぐ。「お前に、そんな言い方は似合わない」

自分がこの場所を去る前に、Nickは死体の一件を解決したいと思う。何だかわからないものの中にPerryを残していくのは気がすすまない。
2人は一緒にこの事件に取り組むことになります。その先にある謎を、彼らは無事解くことができるのか?
そして謎を解いた先には、別れが待っている。


Josh Lanyonはおもしろいのがわかっているので、わざといくらか読み残してあって、その一冊。やはりおもしろいです。
こう、Lanyonの特徴でもある強烈に凝縮された感じはあまりないのですが、その分読みやすいとも思う。ミステリとしての核ははっきりとしているし、NickがぶすっとしながらPerryの面倒をついつい見てしまう様子がほほえましく、Perryは若々しくてかわいい。「こんなガキにかかわりたくない」と思いながらくらっとするNickがいい味を出してます。
甘くはない、さりとて苦くもない、映画のような陰影のくっきりした話です。話自体がおもしろく、雰囲気も楽しめますので、小説全体を楽しみたい人に特におすすめ。

★ミステリ(消えた死体)

Crossing Borders
Z. A. Maxfield
CrossingBorders★★ summary:
結局のところ、19歳になった時、Tristanは自分がゲイだと認めざるを得なかった。ガールフレンドに会いに行って、別れの最終通告を聞くよりもそれを伝えに出てきた彼女の兄弟の股間の方が気になるとなっては、もはや自分を誤魔化しようもない。
常に行動の早いTristanは、すぐさま誰か「自分を知らないゲイ」を引っかけて、行きずりのセックスを体験してみようと試みる。同性との関係というのがどういうものなのか、彼にはどうしても知る必要があった。

だがTristanの目の前に現れたのは「見ず知らずの相手」ではなく、何年も前からTristanにスケートボード中のヘルメット着用義務を言いきかせ、彼を追い回して罰金を取っていく警官──Tristanが呼ぶところの「ヘルメット巡査」であった。

Michaelは何年もTristanを追っていた。この怖いもの知らずで、アグレッシブな少年の安全を案じて。その感情がただ保護欲というには強すぎるものであることには気付いていたが、Michaelはこの年下の少年を距離をあけて見守りつづけていた。
Tristanがゲイであり、無謀にも自分の安全をかえりみることなく男と関係を持とうとしていることを知った時、Michaelはこの少年を放っておくことができなかった。Tristanは傷つくかもしれない。
それに、それは見ないふりをするには、大きすぎる誘惑だった。

MichaelはTristanに同性同士のセックスを教えることを申し出て、Tristanはそれにとびつく。
はじめは好奇心。だがその先にあるものが自分の一生を変えることを、MichaelもTristanもまだ気付いていなかった。
.....



Tristanは19歳なんですけど、それにしちゃ表紙はちょっとショタっぽすぎると思うですよ。
それはともかく、丁寧な心理描写に定評のあるZ. A. Maxfieldの話。これもまた、全編にわたって精緻に少年と年上の警官との関係、その心の変化を書いています。

Michaelは保護欲の強い人間で、だからこそ警官になったのですが、その一方で時おり自分自身をコントロールされることに喜びを覚える。
それがSlave/Masterのたぐいの欲望だと誤認した彼は、かつてもっと若い頃にSMのシーンに入りこみ、関係を破綻させ、今でもどこかにその影を持っている。
Tristanは若い、経験の浅い恋人ですが、Michaelの内側にある欲望を正確に感じとって、セックスの中で時おりMichaelを支配します。痛みではなく、愛情で。

Tristanは無謀なところもあるものの、理知的で、とても自己犠牲の強い少年です。父が死に、傷心の母が弟妹を育てるのを助けるため、行けた筈の大学をあきらめて近くの大学に通っている。
MichaelはそんなTristanの中にある輝きに、どうしようもなく恋に落ちていく。Tristanが好奇心を満たせばどこかに去っていくのではないか、19歳のTristanにはまだ愛情と欲望の区別がついていないのではないかと迷いながら、関係が深まっていくのをとめられない。

一方でTristanは幸福を感じながら、やがて現実に気付いていく。Michaelの警官という職業が危険をともなうものであること、警官の中でゲイとしてカミングアウトすることが危険をともないかねないこと。
自分はまだ、恋に落ちる準備ができていないのかもしれない。この先の人生をMichaelと生きていきたいが、それを決心して踏みこむだけの心がまえが、Tristanにはまだなかった。なにしろまだ19歳です。
だが物事は早く、時に残酷に動く。

どちらも優しい、豊かな情感をもったキャラクターです。無謀できかん気なようで心のきめこまかい、そして揺れ動きやすいTristanの少年らしさが、物語に躍動感を与えている。
ゲイであることを気付いた19歳の少年の目覚めと、はじめてで最後の恋。そして一方ではMichaelの静かな孤独(彼自身が気付いていない空白)が埋められていく、長いけれども丁寧で美しい物語です。
エロシーンも繊細で、関係の深まりとともに変化していきます。やはりエロにキャラクターとか物語が反映されているものは、読みごたえがあると思う。

※追記。
前半、Tristanがハロウィンパーティに「剣心」の格好をしていったりするシーンがありまして、それはとっても気恥ずかしいです。その格好でのエロシーンとかね!
でもそうだよね。「仮装」っちゃあ「仮装」だもんなー。コスプレは当然ありだとは思いますが…でもそれが日本の漫画キャラだってだけで、ものすごく恥ずかしいのは何故なのだ。


★エロ多め
★庇護欲

Blue Fire
Z. A. Maxfield
Blue Fire★★ summary:
炎がJared Kennyの家を焼きつくした。人生の半ばをともにすごした恋人の記憶、彼の残したすべても灰になった。
何ひとつ、彼には残っていなかった。

Adam Collinsは、燃える家を見つめて茫然としていた男のことが忘れられなかった。
絶望と悲嘆で心をとざしたJaredをAdamは何度も見舞い、リハビリ施設からつれ出して、自分の故郷にあるバンガローへとつれていく。

Adamの情熱とその青い目は、Jaredにそれまでの人生で得たことのなかったものを与えた。情熱、愛情、優しさ。Jaredは、その中にたやすく溺れてしまう自分を知っていた。かつて年上の恋人に溺れ、人生のすべてをたよってきたように。そして人生のすべてを炎の中に失った。一瞬で。

恐れ、迷って、JaredはAdamのもとを逃げ出す。
自分の過去から、炎から、Adamの青い目から。

だがその青は、どれほど時間がたっても彼の心から消えなかった。ほかのすべての青よりも彼を惹きつけてやまない、冷たい、だが同時に炎のようにあたたかな青。
その青への情熱を、Jaredはガラスへと向ける。火で溶け、火の中で作られていく色と形に。
そして炎は、形を変えてふたたび彼らを結びつけようとしていた…
.....



Z. A. Maxfieldにしてはわりとあっさりとした長さの、中編くらいといった感じです。
出版社(LooseID)の企画もので、Cameron Daneが「Dreaming In Colors」で「赤」をテーマにしたように、彼女は「青」をテーマにしています。

年上(37歳)の男と年下(24歳)の消防士。
炎を通した彼らの出会いと、短いが激しい人生の交錯、時がすぎ去った後のふたたびの思わぬ出会いの物語です。人の尊厳、プライド、そして傷と回復の物語。
繊細なJaredをAdamは強く求めるけれども、当のJaredは、自分の中にそれに値するものを見つけることができない。Jaredは死んだ恋人を愛していた一方で、彼に支配される人生を嫌ってきたようです。でもいざとなると、自分の人生をどうやって確立すればいいかわからない。
恋人を失い、家を失って、彼は袋小路に迷いこむ。

その年でモラトリアムか、という感じもないではないですが、「優柔不断に落ちこんでいる年上の男を年下の若者が力まかせに追っかける」の図はなかなかいいものです。
若さゆえの情熱に引きずりこまれたい、でも怖い、というわけで、当然のように年上受け。
この作者は、基本的に年上受け萌えなんだと思います。優柔不断だったり優しすぎたりする年上男の心の安定を迷いのない年下がつっこんで叩き壊す、というのが基本。ツボにはまるとすごく楽しい。

この一編は、ちょっと短いこともあってか2人の変化が唐突に感じられるところもあるんですが、モチーフが美しいので、ビジュアル的な美しさがあって、風景や物が2人のかわりに彼らの心にうつるものを語っているようです。そのへんの行間は味わい深い。
炎によってダイナミックに変えられてしまう2人の男の対比は激しく、陰影がくっきり浮き上がってくるのはさすがの筆力です。もうちょっと長さがあればぐっと鮮やかな話になったのではないかと思わないでもないけれど、逆に話の展開はこっちの方がわかりやすいかもしれません。

この作者らしく、繊細な話で、雪やガラスのイメージが綺麗です。
消防士萌えだったら勿論、年の差やちょっとたよりない年上受け萌えなんかもおすすめ。

これはLooseIDの企画、「Flying Colors: Red White and Blue」の一環です。
我知らずとは言えもう2冊読んだので、折角なのでほかのも(m/mのは)読んでみようかなと思ってます。

★年の差
★炎

Happy Ending
LB Gregg
※出版社の問題で一時的にリンクを外してます。
LB_Happy_Ending.jpg★★ summary:
双子の妹が残した子供を育てるSeth Westonは、ストレスをマッサージでやわらげるのがいつもの習慣だった。
姪を可愛く思いながらも、Sethは6歳児をどう扱ったらいいのかわからない。
妹は癌で死に、彼女を看取っている間にSethの恋人は彼を去った。彼は1人だった。

そんなある日、いつものマッサージ師の臨時の代わりとして現れたのが、David Cookeだった。Sethよりずっと若く、妙なイヤリングをつけ、刺青のある青年。おだやかに見える彼の物腰の下には、頑固で、苛立たしいほどの強気な顔が隠れていた。

Davidは、Sethのタイプとはあらゆる意味でかけ離れていた。それまでのSethの好みは常に同年代の大人で、服装に金をかけ、彼と同じような暮らしをしている男──たとえば、彼を置いて去った前の恋人のような。
だがDavidはSethの自制を打ち砕き、欲望と、名付けようのない荒々しい感情を呼びおこす。
そしてそれを感じているのはSethだけではないようだった。

強烈に惹かれあう彼らの周囲で、様々な物事が巻きおこる。
彼らを脅迫するかのような写真、町に帰ってきてSethと復縁を望む元恋人、いきなり姿を現した、姪の血縁上の父親。
そしてDavidの語らない、過去の秘密。
.....



Men of Smithfieldシリーズ2冊目。
どこかミステリアスで活発な若い男にいきなりよろめいてしまったSethと、生命感にあふれたDavidの話。

このDavidがとても魅力的なキャラで、マッサージ師かと思えばウェイターもやってたり、児童書を書いていたりと、色んなところが謎。
Sethはマッサージ師をやってるDavidを見て「一時的な仕事だろう」と思いますが、Davidがそうした仕事や生き方に誇りを持っていることを見て、自分の中にある差別感に気付き、たじろぎます。
ごく自然に、自分やそれに似た人間たちを世界の中心であるかのごとく考えている。それまで何度もレストランで見かけた筈のDavidのことを覚えてもいない。
DavidはそうしたSethの価値観を揺るがして、彼の壁の内側へ入りこみ、Sethの感情をかき乱していきます。

強く、保守的な年上の男と、若々しく、穏やかに見えて時おり破滅的なほどに強い感情を爆発させる男。DavidはSethを挑発し、挑戦し、Sethのペースをひっかき回す、その様子が読んでいて楽しいです。
SethはDavidのおかげで、子供に対する接し方を覚え、人生に楽しみを取り戻す。当人はあまり気付いていませんが、その様子が幸せそうでいい。

にぎやかで、感情表現の鮮やかな話です。
色々と周囲でおこるものの、それほど複雑な話ではないですが、その分2人の感情の対比がくっきりと見えてくる。
キャラが立っていて、一気に楽しく読める話だと思います。

やんちゃ受けが好きな人、若者にひっかき回される年上の男というシチュに萌える人におすすめ。

★年の差
★子育て

Bound and Determined
Jane Davitt & Alexa Snow
Bound and Determined★★☆ summary:
もうじき21歳になる大学生、Sterling Bakerはたまたまパーティで見たBDSMシーンに衝撃を受け、それこそが自分の求めるものであると感じる。
彼は支配的な父親に常に反感を覚えてきた。それは、自分が支配する側になりたかったからではないだろうか。

だが初めて行ったクラブで、大学の教授Owen Sawyerの姿に行きあたって、Sterlingは自分の考えが間違っていたことに気付く。
彼が求めているのは、支配することではない。支配されることだ。
Owenのような、強い、確信に満ちたDomに支配され、コントロールされるSubに、彼はなりたいのだった。

Owenは、何のスキルも経験もない、しかもかつての教え子を自分のSubにするつもりはなかった。
長い間、彼はどんなSubにも満足できなかった。多くの者が彼の名を求めてすり寄ってきたが、誰もがあまりにわかりやすく、あまりにも平凡で、常に誰もがOwenを失望させた。

だがSterlingは不屈だった。ついにOwenから手ほどきを受けることに成功し、それが思っていたほど単純でたやすいものではないと悟りながら、彼は引かなかった。
彼の中にある強さ、しなやかさ、そして複雑な痛みはOwenを引きつける。
ふたりの関係はいつしか単なるDomとSubの域を越えていたが、どちらもそれを言い出せず、いつしか生まれた亀裂はSterlingをより破滅的な行為へと押しやり…
.....



Sterlingは、父親の支配によって精神的に傷つき、自分の中に高い壁を作っています。常に他人にチャレンジしたがり、挑戦的で、高慢。
Owenが最初に見て、拒否したのはそういう「外側」のSterlingですが、その内側には脆い、優しい、誰にも手をふれさせない部分があります。
Owenは支配とコントロールによってSterlingの思考を吹き飛ばし、壁を崩し、SterlingはOwenにだけはすべてをさらけだす。それはOwenが彼を知り、彼の限界を知り、決して傷つかないよう守ってくれると信頼しているからです。
Sterlingには、支配される必要がある。信頼する相手、自分のすべてを預けられる相手に。そしてOwenは己のすべてでそれに応える。
それはほとんど、そのまま恋のように見えます。
支配と被支配、関係としてはいびつなようでもありますが、彼らの間ではそれは健全で、純粋で、必要なことなのです。

Owenはとても強い、卓越したDomです。
彼はSterlingの中にあるものを引きずり出し、Sterlingの欲するものをあたえ、そうすることに喜びを感じる。
どんなSubも──かつて別れたただ1人を除いて──彼を満足させることはなかった。だがSterlingの不屈さ、それと対をなす心の底からの服従、Owenを喜ばせようとする姿はOwenを揺さぶっていく。

プレイそのものも色っぽくてよいですが、DomとSubという特殊な立場を踏まえた上での感情の変化が非常に微細に書かれていて、読みごたえがある。
BDSMの話ってプレイの物理的な描写以外は単調になりがちな傾向があるんだけども、これはプレイの中で起こる葛藤や、2人の互いに対する理解が、そのまま彼らの人間関係に投影され、互いへの感情を深めていく。とても繊細に書かれた話だと思います。
生き生きしたSterlingも、彼を支配して愛でるOwenの強さも、とても魅力的です。

BDSMを中心とした人間関係、そして「初心者のSub」と「それを導くDom」の物語と言うと「A Strong Hand」に近い構成ですが、あれがプレイそのものよりは主人公同士の感情的な絆を中心に据えていたのに対して、この「Bound and Determined」はプレイの比重がとても大きい。
ので、がっつりとBDSMが読んでみたい、という人向け。
BDSMって日本のSMとはちょっとちがう(ものが多い)ので、「SMって何がいいのかわかんない」という人でもためしに読んでみるといいんじゃないかなーと思います。苦痛や拘束は「手段」であって、その先にあるものにたどりつくには、何よりも信頼が必要で、その信頼の存在が、この話のテーマにもなっています。

苦痛や、公開プレイも(一部)含んでいます。(強烈なものではないので、すごく苦手な人以外は大丈夫かと)
公開プレイってあまり好きじゃないんですが、この話の中での位置づけはよかったですね。何故人はBDSMを求めるのか、何故クラブ内で公開プレイをするのか、という「何故」のあたりがきちんとしたフォーカスで描き出された話です。

★支配
★焦らし

On a Bruised Road
Pepper Espinoza
On a Bruised Road★☆ summary:
Edwin Mastersはカーマニアではなかったが、人生の半ばを特定の車を探しながら生きてきた。
1962年型アルファロメオ2600 スパイダー。
世の中で一番早い車というわけでも、一番希少な車というわけでもない。だがEdwinはその車を愛していた。

かなりの値ではあったが、ついに彼は念願のスパイダーを手に入れる。
その車は彼の人生を根底から変えることになった。まるで予期していなかった方向へ。

Edwinが車を買った時に知らなかったことがあった。
この車は47年前に事故を起こし、運転者の若者Cooper Jamesは車内で死んだ。
そして今も、Cooperは車の中にいるのだ。
ゴーストとなったCooperはEdwinに手をのばし、しがみつき、抗えない力で彼をどこかの深みへ引きずり込もうとする。

自分のレストランを持つことを夢見る若い男、Carson Hestonだけが、EdwinがCooperに抗うための力であった。死んだ男ではなく生きた男との未来を選ぼうとEdwinはもがくが、そのたびにCooperはより強い力で彼にしがみつく。
Coorerの中にある孤独、怒り、傷。長い時間をかけて彼を凍りつかせてしまった、父親からの憎悪。
そこからどうやってEdwinが自由になれるのだろう。Edwin自身の中にも深い孤独や怒りがある、この時に。

そしてCooperの怒りはCarsonにまで向けられる。Carsonの命を助けるために、Edwinは幽霊の願いを受け入れるべきなのだろうか。
.....



幽霊とビジネスマンと、若い料理人の話。
かなりセクハラな幽霊です。

Edwinは幽霊のCooperを恐れつつも、それだけではなく、共鳴するものも感じている。彼らの間には同じ、深い孤独があって、だからCooperはEdwinに手をのばしたのかもしれません。
そしてEdwinにふれているとCooperは自分の死や孤独を忘れられるらしい。しがみつき、抱きしめてかきくどく幽霊の青年と言うのは、なかなか可哀想な姿です。Cooperは害を為したいわけではなくて、誰かと一緒にいたいだけなんですね。
Cooperがふれて温度を感じることができるのは、車とEdwinだけなのです。

もしCarsonがいなければ、Edwinは幽霊のひたむきさに落ちていたかもしれない。Edwin自身、深い闇を見て、1度は底に落ちたこともある人間です。
だが若く希望にあふれたCarsonの姿は、Edwinにとって人生の大事なものを見せてくれる。生きること。あきらめないこと。そして、人の肌の温度。

幽霊エロでもあるので、ちょっと背徳的な雰囲気があって、EdwinとCarsonがベッドにいる最中に幽霊のCooperが入りこんできたりもします。3Pあり。
そりゃCarsonも怒るよ。というか不気味だ。
しがみつくCooperの手を振りほどけないのはEdwin自身の問題でもあって、Carsonはそれをどうにかしてわからせようとするけれども、EdwinとCooperとの間をつなぐ奇妙な感情は彼を悩ませる。だが恋人を見捨てることなど出来ない。Edwinは、ひとりではCooperから逃れることが出来ない。

キャラはしっかりとしていて、それぞれの背景もよく書けている(Edwinが何故その車に執着するのか、など)。そのわりにやや型通りなところもありますが、逆に奇をてらわないまっすぐなキャラという印象も受けます。
幽霊に執着されてその快楽に翻弄されつつ、若い恋人とともに人生を生きていこうともがく親父、の図は大変においしい。

ゴーストストーリーとか三角関係とか年の差とかが好きな人におすすめ。

★幽霊
★三角関係

★Three-Star rating system★


[カテゴリ]View ALL
レビュー (310)
★★★ (88)
★★ (188)
★ (34)
モノクローム・ロマンス (10)
電子ブックリーダー (23)
iPodTouch・Stanza (19)
nook (4)
雑談 (84)
英語 (29)
文法 (4)
読書日記 (11)
…このブログについて (8)
…書店情報 (2)
[タグリスト]

03 | 2017/03 [GO]| 04
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

カテゴリ一覧 最近の記事一覧 プロフィール リンク一覧 メールを送る
[カテゴリ]


モノクロームロマンス(M/M翻訳)


■公式サイト■

・2017年
・7月 ヘルハイ3巻
・夏 雑誌短編
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas
・冬 雑誌短編
・ほかにも出るかも
・不甲斐なくてごめん

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター

 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。