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A Fostered Love
Cameron Dane
FosteredLove★★★ summary:
Marisolは多くの子供を引き取り、里親として育て、送り出してきた。Christian Sanchezもまたその1人であり、成人して29歳になった今もMarisolともっとも近い存在だった。彼がMarisolの葬儀やその後の遺言執行を受け持つのは当然のようなものだった。
葬儀の前日、里子の一人だったJonah Robertsが、その姿をMarisolの家の戸口に見せる。
Jonah。Christianは、Marisolのこの家でわずかな時間ともに暮らした少年を、ふたたびこの目で見ることがあるとは思わなかった。
いつでも人と距離をへだて、何かに怒っていたJonahはついに破滅的な犯罪を犯し、警官に引きたてられてこの家を去った。Christianはその時に自分の心のどこかが壊れたような気がしていた。

あれは15年前。Christianは14歳、Jonahは16歳。Jonahは彼の初恋だった。

一方のJonahはChristianのことを一度も忘れたことがなかった。たとえChristianが自分を忘れてくれるよう願っていても。
少年刑務所で車の修理を覚え、今では自分の店を持つようになった彼だが、自分がほかの人間とちがうことを感じていた。彼は誰も愛したことがなかった。誰かと何かを分けあったこともなく、友人と呼べる存在すらいない。事務的なことを除いて、人とどう関ればいいのかわからず、関ることを望んでもいなかった。
だがその深い奥で、Jonahは自分がChristianを求めていることを知っていた。その感情は、Christianを目にした瞬間から無視しようもなく強まり、彼を心底怯えさせる。彼は生きのびるすべも何かに立ち向かう方法も知っていたが、Christianとどう接していいのか、どうすればいいのかはわからなかった。

Marisolの遺言にそって、彼らは協力しながら、家を売るための修理と手入れをはじめる。
再会は果たしてどこへ彼らを導くのか。15年の空白を経て自分たちの間を何がつないでいるのか、まだどちらにもわからなかった。
.....


Cameron Daneの新刊が出ていたので、読んでみました。
相変わらずとても激しく、どこか攻撃的な恋の話です。
里子の「兄弟」同士の恋。彼らはほんの2月ほど同じ部屋を分け合っただけで、その後の15年、1度も顔をあわせていない。それが里親Marisolの死によってふたたび会い、彼女の家の手入れをはじめる。
里親の思い出、Jonahとともにいた記憶のある家を片付けて人に売ることにChristianは痛みを感じており、その痛みゆえに彼は時おりJonahに攻撃的になってしまいますが、もともととても優しい男です。子供の時からどこか純粋で、ひたむきな少年だった彼を、Jonahは忘れたことがなかった。

Jonahは自分が「hell」と呼ぶような場所で子供時代をすごし、人に道具のように使われて捨てられ、ねじまげられた人生を生きてきた。それらへの怒りや傷を内に秘めたまま、だが彼は2度と道をそれずに、自分の人生をきちんと作りあげる。強い意志を持った男ですが、一方で自分が他人を愛せるような人間ではないと思っていて、他人に近づくやりかたもよく知らない。
Cameron Dane特有の「内側に脆いものをかかえこんでもがく、強い男」そのもので、彼が自分自身の魂を剥ぐように、自分の苦しみをChristianに明かしていく姿がひとつの話の核になっています。

そして相変わらずエロはとても激しい。「そこはもうちょっと理性を」とかつっこみたくなる状況もないではないですが、そこを含めて強烈な感情のぶつけあいがこの作家の魅力でもあり、互いのどちらをも呑みこんでいくような激しさの中で、彼らは相手の存在を自分に刻みつけるように確認していく。特にJonahのように心に高い壁を作りあげてしまった男には、その壁をわずかでもゆるめるにはそれだけの強い衝撃が必要なんだろうなあ、と思わせる、時に痛々しい行為でもあります。
Jonahが自分の中にある夢や人への思慕を、体に刺青として刻んでいるのはとても暗示的です。そしてまた、そうして体に刻むことでしか語ることのできない男が、やはり痛々しい。

かつて、15年前、Jonahがただ破滅への暗い道をころげ落ちようとしていた時、その人生を変える決断をさせたのはChristianの存在だった。
15年たって、彼らはふたたび、自分の人生をかけた瞬間と向かいあう。

激しいものが好きな人におすすめ。

★エロ多め(ちょっとダーティな感じ)
★再会

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The Broken H
J.L. Langley
The Broken H★★★ summary:
The Tin Starシリーズ(独立して読めます)

保安官Grayson Hunterは、かつてあれほど愛した両親と、彼らの経営する牧場から遠ざかって久しかった。
いや、Grayが避けていたものは、両親でも牧場でもない。
彼が向き合うことのできない相手は、両親にとって「もう1人の息子」とも言うべき存在であり、牧場を切り盛りしているShane Cortezであった。
Grayの初恋の相手。そしてその初恋を砕いた相手。

Grayは傷心に追いたてられるように故郷を去ってロデオのカウボーイとなり、特殊部隊にくわわり、やがて故郷に戻って保安官となった。だがあれから12年たってまだ、Shaneへの思いと傷は彼の中で生々しいままだった。

ShaneはGrayがそんなふうに傷ついているとは知らなかった。両親に蹴り出されるように故郷を離れるしかなかったShaneは、Grayの父親に拾われて牧場に転がりこんでから20年、ずっと牧場のために働いてきた。もはやGrayの親は彼にとっての両親であり、ここが彼の故郷であった。そして彼をこの牧場につなぎとめるものはそれだけではなかった。

打ちひしがれて飢えた少年として、未来への希望もなく牧場にやってきたあの遠い日。Shaneを、大きな緑の目で見上げた子供がいた。憧れと尊敬に満ちたまなざしで、彼はShaneに聞いたのだった。
"Are you a war chief or a peace chief?"
そのあどけない問いとまなざしが、Shaneを暗闇から救い出した。
それからずっと、ShaneはGrayを守ろうとしてきた。たとえShane自身からでさえ。

どちらも互いを求めながら、どちらもそれぞれの理由で互いの間に壁を築いた。
そして時がたち、その壁は崩れようとしていた。
.....



The Tin Star」でちょこっと出てきた保安官、Grayの話です。
Grayは複雑な人間で、理知的で、考えすぎるが、それは彼の思慮深さをあらわしています。物事を見た目で判断しない。いつも、その裏にあるものを見ようとする。
その彼が唯一直視できなかったものは、過去のShaneからの「拒否」。
Shaneが、ゲイであるGrayを拒否したのだと感じたGrayは、いてもたってもいられず、故郷を去る。愛する両親、愛する牧場、そして何よりも愛する相手に背を向けて。その裏にあるものを見ようともせず。

Shaneには一方で、複雑な思いがあります。彼は子供のころのGrayを愛し、甘やかし、Grayがほしいというものは何でも与えた。Grayが「あの馬がほしい」と言えば、まだ人に慣れていないその馬を牧場につれ帰り、自分の体を張ってその馬を人に慣らした。
だがあれから時がたち、もはやGrayは少年ではなく、1人の大人の男としてShaneと向き合う。

意地っぱりな男2人の、でもめろめろな愛の話です。めろめろなエロ話でもあります。13歳の年の差。年上はそれを気にして距離をあけようとするし、年下はその態度を拒否だと思う。でも2人はちょっとしたきっかけで互いの求めるものに気付き、後戻りのできない道へと入っていくのです。
ただ、保守的な小さな町ではゲイだということは非常に大きな意味をもち、Grayの保安官再選を目の前にして、Shaneは自分の存在がGrayへの足枷にならないかどうか悩む。その問題は、彼らの間に新たな亀裂を生んでしまう。
Shaneは今でもGrayを守りたいし、Grayはもはや守ってもらいたくなどない。それが互いの思いを犠牲にするのなら。
どちらも強い、誇りをもった男同士の話です。

この作者特有の幸福感があって、とても楽しく、一方で人生の長い時間をかけた恋としても味わい深く読めます。
「保護者」ネタが好きな人なら絶対!
エロは濃厚かつ、感情にあふれていて、読んで楽しい。互いの互いへの信頼がエロを通して見えてくる、それがいい。
それにしてもGray、眼鏡萌えにもほどがある…!

ところで、LanyonDark Horseなんかでも出た「Chief」って何なのかと思ってましたが、目上・年上の人に対する親しみをこめた呼びかけみたいですね。
しかし和英辞書だと「だんなさん」とか訳してありますが、ちょっとそれはなあ…
どう解釈すればいいんだろう。たとえば訳すなら「おやっさん」とか?「おやっさん、愛してる」とか…萌えないことおびただしいのですが。
これに萌えてこそ一人前なのか。何の一人前かはともかく。

いやまあ、英語のまま読むのが一番いいってことですね。

★保護者
★エロ濃い目

Chasing Smoke
K. A. Mitchell
Chasing Smoke★★★ summary:
FBI、そして国土安全保障省で働くDaniel Gardnerは、母親が家を引き払う手伝いをするため、渋々クリスマスに休暇をとって生まれ故郷へ帰る。彼は家族と折り合いが悪く、そして故郷にはもう苦い記憶しかなかった。
自分を殴った酒飲みの父親、家庭内での言い争い、苦い恋と失恋の傷。
15年前の恋。彼を誰より惹きつけ、混乱させ、傷つけた年上の少年、Trey。

Treyの父とDanielの父はベトナムでの戦友で、彼らは家族ぐるみのつきあいをしていた。DanielはTreyへの恋に落ち、Treyも時にはそれに応えるようにも見えたが、彼はいつも人前ではDanielなどいないかのようにふるまいつづけ、自分がゲイであることを否定しつづけていた。
Danielは故郷を去る時、Treyに一緒に来てくれるよう懇願した。だがTreyはその願いを一蹴するように軍隊に入り、Danielの人生からそれきり消えたのだった。

あれはもう遠い昔のことだ。その筈だった。

だが戻った実家に空き巣が入り、その捜査に訪れた刑事の顔を見て、Danielは呆然とする。Trey。
彼は刑事になっていた。そしてそれが何のためか、Danielには一瞬でわかった。DanielがFBIをこころざしたのと同じ理由だ。
遠い日の犯罪の正体を暴くため。そしてTreyの父親の無実を証明し、妻殺しの罪を晴らすため。

再び動き出した過去の事件が、彼らを結びつける。
だがそれが解決した時、2人を待つものは今度こそ最後の別れなのかもしれない。
.....



Treyは、かつてのDanielにとって家族よりも必要な、大切な相手だった。Danielは自分を投げ出すようにしてTreyを求め、TreyはDanielに惹かれながらも、その先にあるものが恐しくて彼をつきはなす──
お互い複雑な家庭をかかえた少年同士の、切羽つまった、抑えきれない情動は、結局破綻します。
Danielは今でもその傷をどこかにかかえている。彼は今の恋人にも誠実に対そうとするが、人生や自分自身を彼らと分かちあうことができない。かつてTreyにしたように、自分をひらいてみせることができない。

TreyはTreyで、ゲイであることを恐れ、Danielを恐れ、同時に父親の犯罪によって彼の少年時代は滅茶苦茶になっています。
15年たって、彼は自分にとってDanielがどんなに大切な存在だったかわかっているが、距離を近づけようとしても、Danielがどこかに逃げ道を残していることを感じる。
体だけならいくらでも近づけるのに、Danielは過去の傷にしがみついて、Treyを許そうとしていない。
それでも2人は惹かれあう。

頑固で一途で繊細なDanielと、迷いと怒りに満ちた過去を持つ執念の男Trey。この2人の、緊張感に満ちた、時にもう未来などないかのような関係が読みどころです。
どちらも相手を恋しいと思う。人生の中で、これほど何かをほしいと思ったことはない。だがどちらの男も、相手の人生の中に自分の姿をはめこむことができない。
この事件が解決すれば。そしてDanielの休暇がおわれば。母親の家を売ったら、Danielがこの町に戻ることは2度とない、それはどちらもわかっている。

一方、謎解きの部分もしっかりしています。そして謎解きでも2人は対立する。
空き巣が「何か」を探していたと感じるDanielは、家の荷物の中からベトナム戦争中のポラロイド写真を見つけ、それが何かを意味すると感じる。だがTreyは簡単にはとびつかない。彼は父親が有罪にされた事件について、15年間ずっとかかえこみ、ずっとその重さを感じてきた。袋小路にいることに慣れてきた。その彼にとって、Danielはあまりに簡単に出口を指さしているように思える。

この話は、2人の男が自分なりの「出口」を探すまで、の物語でもあります。Danielにとっては過去の怒り、その過去がつくってきた自分自身の殻。Treyにとっては、父親の事件にとらわれつづけてきた自分からの。
タイトルの「Chasing Smoke」の「Smoke」は、まるで煙のようにとらえどころのない15年前の事件、そしてさらに昔のベトナム戦争でおこった「何か」と同時に、過去の自分自身を表しているようにも思えます。
そして「Smoke」は過去からたちのぼるばかりのものではない。事件を調べ出した2人を、現実の炎が追ってくる。煙の裏に隠れた殺人者を、2人がつきとめるまで。

読みおわって気付いたのですが、K.A.Mitchellを読んだのは2冊目でした。
Collision Course」を読んだことがあって、これずっとレビュー書こうかどうか迷ってるんですよね。すごくおもしろかったんですが、1つどでかく腑に落ちないところがあって、それがまた、自分の英語力でニュアンスを読みおとしたせいじゃないかという疑いが抜けず。
んで何度か読み返している作品です。どっちも多少ボリュームがありますが、エロ満載で(この人はエロのテンションを高めるのがうまいと思う)、ベタ惚れなんだけど甘々ではない、読みごたえのある話です。ほかのも読んでみよう。

話も人間関係もがっつりと読みたい、という人向け。
相当に自我の強いキャラ同士ですが、大体において受け攻めの分担ははっきりしてる感じなので(100%ではない)、やっぱりカプは固定が落ちつくよね!という人にも。

★エロ多め
★再会

Diving In Deep
K. A. Mitchell
Diving In Deep★★ summary:
Cameron Lewisは水難救助のインストラクター兼トレーナーとしての自分の仕事を気に入っていた。
あちこちの町から町へ講習を行うためにとびまわり、30歳に近くなった今も決まった恋人はいなかったが、寝る相手に困ることもなく、人生に満足していた。いた筈だった。

Noah Winthropは兄の幼馴染にずっと恋をしていた。それは初恋だった。だが16歳の時に思いきって打ちあけても、Cameronは彼を相手にしなかった。
Noahが19歳の時、兄の結婚式でCameronが介添役をつとめる。そしてその夜、NoahはCameronと一夜をともにした。
目がさめるとCameronは姿を消していて、それから6年間、NoahはCameronの姿を見ることはなかった。

のりこえたつもりでいたが、いつもNoahの心の中にはCameronがいて、あの一夜を忘れることができずにいる。
そんなある時、水難救助の研修の概要に、NoahはCameronの名前を見つけ、6年ぶりの再会を果たした。Cameronは大人の男になったNoahに強く惹きつけられるが、Noahは2度とかつてのまちがいを繰り返すつもりはなかった。
これを一夜の関係にはできない。NoahはCameronのただのセックスの相手ではなく、もっと意味のある関係になりたかった。
そしてそれは、まだCameronにとって心がまえのできない関係でもあった。
.....



親友の弟に迫られて、うっかり寝てしまった。しまったと思って背を向けて、6年たって近くの町まで戻ってみたら、その相手はとんでもなくゴージャスな男になっていた、さてどうする。というような話。
NoahはCameronの「特別」になりたいけれども、6年前にCameronが何も言わずに消えてしまったことはトラウマになっていて、Cameronに強く踏みこむことができない。また逃げ出されたらどうしようかと思って、何だか自分にとって曖昧なまま関係を続けてしまう。

一方のCameronは強い男で、つねにTop(攻め)です。
だがNoahはいわゆる「Bottomタイプ」ではなく、そのことがCameronを悩ませたりする。自分はTopでいたいけれども、Noahは一体どうなんだ、とか。あんまり本当は相性よくないんじゃないか、とか。
「リバ上等」が多いスラの中で、ここまでTopがBottomがと悩みつづけるのは珍しい。でもそれはただの嗜好ではなく、Cameronの性格というか、Cameron本人にとって大事な立脚点です。コントロールを握りたい男。だがNoahは彼を揺さぶる。ほかの誰にもできないような深みから。
それが余計、彼にNoahとの間に一線を引かせる。

NoahはCameronを愛していて、こうやって関係を持てるだけで充分だと思っていますが、それだけでは駄目かもしれないとも思う。
好きでも。好きだからこそ。
そのあたりでぐるぐるするNoahが、ちょっと馬鹿馬鹿しいくらいかわいいです。でかいゴージャスな男が捨てられたことのある犬みたいにうろうろしながら、それを隠そうとたまに意地を張っている。初恋だから仕方ないな!

K.A. Mitchellの話の特徴としては、人と人を結ぶ力関係の複雑さと、それに翻弄される感情描写の強烈さです。そのあたりの表現が非常に細かい。「細かいことは気にするな」というタイプの人には向かないくらい、細かい。キャラが強烈なだけに読んでいておもしろいんですが。
人間関係のあれこれを読みたい、という人におすすめ。情動、緊張感、期待、失望、息苦しさ。時に争い、時に言ってはならないことを言ってしまったりもする激しい2人です。
エロも相当に濃厚。

で、私はこの話を読んでやっと「Collision Course」の内容が腑に落ちました。Joey(この話ではNoahの元彼)が主役なのですが、この「Diving In Deep」の彼を見ると、あっちの話での言われようが理解できます。たしかにJoey、問題あるな。そう思って読み返すとわかる。ああ、半年かかってすっきりしました。
やっぱシリーズはちゃんと順番に読むものですね。この本を読むまでシリーズだったことも認識してませんでしたが。
そのうちあっちもレビュー書こうと思います。

★初恋(再会)
★エロ多め

Somebody Killed His Editor
Josh Lanyon
Somebody Killed His Editor★★ summary:
Holmes & Moriarityシリーズ1

40歳のミステリライター、Christopher Holmesは作家人生の岐路に立たされていた。彼が長らく書いてきたシリーズの売り上げが落ち、エージェントから「もっと時代に即した、売れるものを書かないと」と強く言われる。
エロティックなものや吸血鬼やらが出てくるもの。一体どうやって?

エージェントのすすめで、彼はとある作家の集会にしぶしぶ参加する。そこに来る出版社の人間に新しいシリーズのアイデアを買ってもらわなければ、作家としての彼のキャリアは行き詰まったも同然だった。
問題は、彼にはまるで新しいシリーズのアイデアがなかったこと、さらに切迫した問題は、集会のあるロッジにたどりつく前に女の死体に行きあたったことだった。

橋が落ちて、誰もそのロッジから──嵐がやむまで──出ていけない。まるで推理小説の舞台のようなその状況で、Holmesは思わぬ男と顔をあわせる。
J.X. Moriarity。元警官のベストセラー作家。
10年前、週末をともにした相手。ただ1人、彼を「Kit」と呼ぶ男。
そしてJ.X.は、Christopherを殺人の容疑者として部屋に軟禁すると言う…
.....



Moriarityと言えばモリアーティ教授かと思いきや、あっちの綴りは「Moriarty」らしい。でも当然、あの2人を念頭にしたキャラですね。性格はかけらも似てない(似せてない)と思うけど。
古典のミステリのスタイルを踏まえつつ、それを使って現代のスラにしてみた、というユーモアミステリです。

外界から閉ざされたロッジ、嵐、正体不明の殺人者、2つ目の死体、主人公にかけられる嫌疑──と、古典的なミステリの要素がたっぷりつめられています。作者のLanyonは非常にテクニカルな作家なので、色々とほかにも計算されているにちがいないと思いますが、私はミステリの原書を読んだことがほとんどないのでどこまで何を踏襲しているかわからないのがちょっと残念。
あと時事ネタとか、実在する人の名前とかが散見されますね。「セーラームーンのフィギュアか」とか、そういうツッコミしかわからない自分がちょっと切ない。わかる人なら10倍は楽しめるでしょう。
でもそれはそれとして(得意技でスルーしつつ)、おもしろく読んだ一冊です。

主人公のChrisはかなり悲惨な状況です。ずーっと書いてきたシリーズが打ち切りになるかもしれない。古典的なミステリというのはもう求められていないのかもしれない。
マーケティング、すべてをひっくるめた「パッケージ」の問題なの、とエージェントは言う。小説そのものはもはや問題ではないのだと。
それで嫌々、作家の集会に出てくるわけですが、落ちていく橋を命からがら走りきり、死体を見つけ、うっかりJ.X.とよりを戻したと思えば「気の迷いだった」と言われる。挙句に新シリーズの話なんかそりゃもう、砂上の楼閣です。ていうかこの人がでたらめに話す新シリーズネタが、実際無茶苦茶なんですが。

踏んだり蹴ったりの状況下、Chrisは持ち前のユーモアで周囲をさらに苛々させていく。それも、主にJ.X.を。Chrisは繊細だけど相当に図太い。
J.X.はどうもChrisを守りたいと思っている様子ですが、10年前の逢瀬の時の出来事を許してもいないし、でもChrisに惹きつけられる自分を否定もできない。
J.X.のChrisに対する人あたりにも、相当にきついものがあります。

この2人の関係がなかなかいい。J.X.は5つ年下で、かつてはChrisを憧れの目で見ていた新人の後輩だったのに、久々に会ってみたらえらい皮肉屋で悠然としたベストセラー作家になっていて、Chrisは正直落ち着きません。そりゃそうです。それにしてもJ.X.は魅力的。
作家と元警官、というのは同作者のAdrien Englishシリーズにも似た流れですが(あっちは作家志望の本屋と警官ですが)、あれほどヒリヒリした、さわると怪我しそうな切迫感はありません。J.X.はゲイである自分を否定してないしね。
それだけに、反発しあいつつも、ひとつ転がれば2人で幸せになれそうな感じがあって、読んでいるとじれったくも楽しい。

J.X.はずっとChrisが好きだったんだろうなー、それで怒っているんだろうな、というのがあちこちに滲み出ているのに、当のChrisが鈍いのもかわいい。セックスなら別に平気だけど、それ以上のところに話が及びそうになるといつも慌ててはぐらかそうとするし。
そういうつもりはないのについつい事件をつっついてみるChrisを、J.X.は本気で心配し、苛立っている。でもそんなJ.X.をChrisは助けたり、最後のしっぺ返しをしてのけたりする。いい組み合わせの2人です。

ミステリ部分も、やはり古典ミステリへの敬愛をこめてだと思いますが、基本パターンにのっとっているのでわかりやすい。
わりと軽めに楽しめる一冊。
古典ミステリやユーモアミステリが好きなら勿論、「10年ぶり」とかに萌える人にもストライクだと思います。

作中に「Elementary, my dear..」という決め台詞がありますが、これはホームズの「Elementary, my dear Watson」(初歩だよ、ワトソン君)からのものです。
ほかにもそういうのいっぱい隠れてるんだろうなー。
しかしdearとか入ってたのね、ホームズの台詞。萌える。

★ミステリ(古典系)
★再会

His Convenient Husband
J. L. Langley
HisConvinientHusband★★★ summary:
Micah Jiminezは7歳で孤児となった時、貪欲な親族たちによってすべてを奪われ、あやうく施設へ行くところだった。
だが叔父が働く牧場に引き取られ、そこの経営者の一家に育てられて、まるで家族のように受け入れられた。
Michahはあの時の痛みと喪失、自分が得た幸運と恩を忘れたことはなかった。

二度とあんな思いをくり返すつもりはない。そして、愛する者たちの誰にも、あんな痛みをくぐらせたりはしない。

だが今や、牧場は危機に瀕していた。オーナーは年老いて病となり、その医療費は牧場の維持費を食いつぶしている。Michahはあらゆる手を使って金をかき集めたが、オーナーの死も、牧場の破綻も、時間の問題だった。

そんな時、彼はオーナーの遺言を発見してしまう。

遺言の内容に追いつめられたMichahは、ダラスでビジネスマンとして働いているTuckerに助けを求めた。
Tucker。オーナーの孫であり、Michahとは兄弟同然のように牧場でともに育った。
Michahはその頃からずっとTuckerに恋をしていた。そして18の誕生日、Tuckerとともについに一夜をすごしたが、TuckerはそのままMichahに背を向けてダラスへ去っていったのだ。
彼に救いを求めるのはMichahにとって最後の、プライドと痛みを呑みこんだ、ギリギリの決断だった。

やつれたMichahの来訪に驚き、遺言を見たTuckerは、ひとつの結論に達する。
その奇妙な遺言によれば、彼らが牧場を人手に渡さず相続する方法がまだ残されていた。Tuckerが結婚することだ。
そしてTucherは、Michahと結婚することに決める。牧場のためならMichahがノーと言わないことを、彼は知っていた。
.....



J.L.Langleyの新刊。「Innamorati」シリーズの1、ということで、シリーズものらしい。「Innamorati」というのはイタリア語で「恋に落ちた人たち」という意味らしいです。
そのシリーズ名にふさわしい、葛藤と渇望、さらにちょっとコミカルな部分も加えた一編になっています。

TucherはMichahが牧場に来た時からずっと、この年下の少年を守ろうとしてきた。彼が何を失ってきたか知っているから、Michahをすべてのものから守りたかった。たとえ彼自身からでも。
そして4年ぶりに現れたMichahを守るため、Tucherは結婚という手段に打って出る。
だが結婚は形だけのもので、すべてが終われば、また離れるしかない。そのつもりだった。

Micharが18歳の時なら年上のTucherが「つけこんでいる」ような気がして離れていこうとしたのもわかるんですが、22歳になったんだからもういいじゃん、くっついちゃえよ、とはちょっと思います。
でもTucherがMicharにあまりにもめろめろで、タガが外れそうな自分を怖がっているのも伝わってくるので、その気持ちもわかる。
2人は形式上の「結婚」をして牧場に戻り、伯父(相続を争っている)が納得して引き下がるまで頑張ろうとする。一緒のベッドで(相手にふれないようにしつつ)眠り、伯父の目の前であてつけのキスをして、寝室でちょっとエロい声を上げてみせたり。
たまに本気でキスしたくなったり、しちゃったりしますが、我慢我慢。MicharはTucherがいずれいなくなってしまうことを知っているし、Tucherは最後にはMicharから離れなければならないと思っている。
…もういい加減、幸せになろうよ。何故そこで耐えるかなー。

その意地だけでなく、2人の間にはまだまだ大きな溝がある。
何をおいてもMicharを守ろうとするTucherと、子供みたいに盲目的に守られるのは我慢ならないMichar。彼らは対立し、挑みあいます。なんせMicharはラテン系が入ってるので、気性も激しい。

重い部分もありますが、全体に可愛らしくて、互いが互いにめろめろなのに、距離を置こうとしてもがいているのが笑えます。
わりとあっさりと中編くらいの長さ。J. L. Langleyの割にエロは控え目。短いからか。
Tucherなんか嫌いだ!大好きだけど嫌いだ!と頑張るMichahが本当に可愛いので、「意地っぱり受け」とか、うっかりそれをつついてしまう「ちょっと傲慢な年上攻め(受け溺愛)」が好きなら鉄板のおすすめです。

ちなみにタイトルの「His Convenient Husband」の「Convenient」は「お手頃」とか「都合のよい」という意味ですが、「marriage of convenience」で「政略結婚」という成句になります。成程。

★偽装結婚
★遺言

Deceived
Lexie Davis
Deceived★☆ summary:
Matthew Vaughnは警官としての職に満足し、パートナーのShayne Lewisとの絆にも満足していた。
Shayneは物静かで考え深く、Matthewとはまるで正反対であったが、Shayne以上のパートナー、Shayne以上の恋人などMatthewには考えられなかった。

だがそんな毎日は、一瞬で瓦解する。

誰かがMatthewをはめたのだ。証拠品のドラッグを動かし、Matthewの痕跡を残し、Matthewの家にそのドラッグを隠した。
有罪とされたことだけではなく、Shayneが1度も会いに来なかった、そのことが何よりMatthewを苦しめた。ただ1人の恋人は彼を信じず、彼を見放したのだ。

Shayneは事件以降、誰かとパートナーを組むことも、同じ仕事を続けることもできなかった。
彼は部署を移り、誰とも親しくなることなく、ただ乾いた毎日をすごしていた。

そんなある日、刑務所にいる筈のMatthewがShayneの目の前に現れる。
2年ぶりの再会。
脱獄を果たしたMatthewは、自分の無罪をはらすためにShayneの力が必要だと言う。

Shayneは法を破ったMatthewをかくまって、彼に力を貸すべきだろうか。彼を信じていいのだろうか。もし失敗したら、彼はまたあんな痛みをくぐりぬけることができるだろうか。
.....



刑事×刑事、かつ受刑者×刑事という、なかなかおいしいカプです。
静のShayneと動のMatthew。コントラストがいい。

再会した彼らの間はぎくしゃくしています。
Matthewは、Shayneが裁判の途中で消えたことや1度も刑務所に面会に来てくれなかったことに裏切られた気持ちでいるし、ShayneはMatthewを失った痛みがあまりに大きくて、Matthewの存在をまっすぐ見ないようにしてきた。裏切られたと感じていたのはShayneも同じです。
でも2年たって脱獄したMatthewが行くのはShayneのところしかないし、ShayneはそんなMatthewを見捨てることはできない。

Shayneのジレンマと、2人の間に横たわる生々しい傷と、それにもかかわらず彼らを引きつける欲望の衝動──
濃密な一瞬が痛々しい。

おいしい設定でおいしいキャラで、楽しく読めますが、背景がちょっと甘いのは難ですね。Matthewの脱獄もほとんど「脱獄してきた」という一言で片づけられるとか、細部のつめは甘いです。Matthewをひっかけたトリック自体も、無理がある気がするし。
そういうところを流して、キャラとシチュを楽しむ話。
Matthewの荒々しさとShayneの慎重さはとてもいい組み合わせで、読んでいて引き込まれます。Matthewの暴走をとめられるのはShayneだけで、Shayneの壁を打ち破れるのもMatthewだけという感じがいい。

警官物が好きな人におすすめ。

★脱獄
★濡れ衣

★Three-Star rating system★


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