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The One That Got Away
Madeleine Urban and Rhianne Aile
★★ summary:
記者であるDavid Carmichael はある日偏頭痛に苦しみ、転んで肩をひどく痛めてしまう。
彼の親友でありライバル紙で働く記者のTrace Jacksonは一人暮らしのDavidの面倒を見るために彼の家に泊まりこみはじめる。その時は、どちらも何も考えず、それが何よりも自然なことのように思えた。
DavidもTraceも独身で記者という共通点があったが、彼らの間には決定的なちがいがあった。Davidはカミングアウトしたゲイであり、Traceはプレイボーイとして浮名を流すことも多いストレートである。だがそのことが2人の友情に影響したことはなかった。

TraceはDavidの面倒を見、食事を作り、2人は冗談をとばしては笑いあい、映画のDVDを見た。相手の存在が心地よく肌になじむ、そんな日々の中で、Davidはいつのまにかこの「親友」に恋に落ちはじめている自分を発見するが、そこに望みはなかった。Traceはストレートであって、そして何よりDavidの一番の友である。友情を失うより恋を捨てる方がまだましだった。

だがTraceの中にもまた、Davidに対してこれまで感じたことのなかった感情が芽生えはじめていた。それが何であるのか、彼はまだ知らない。だが2人の間でテンションは高まりはじめ、ゲイの男とストレートの男はその境い目で彼らの道を探しはじめる。
果たして友情は友情のまま愛へとかわるのか、それともTraceが感じているのはただの好奇心なのか? 深く踏みこんで友情を傷つけることを恐れながら、彼らは互いへと落ちていく。
.....


ゲイの男とストレートの男、という組み合わせの恋の話です。「男は好きじゃないけどお前は別だ」タイプ。
これはその中でも非常に軽いタッチの話で、「男を好きになるなんて俺はどうかしてる!」的ネガティブな逡巡はあまりありません。TraceはDavidのことを本当に心の底から大切な友人だと思っているし、Davidが自分を同じように大切にしていることも知っている。わりといい年の大人の男たちなんですが、互いに対してもともとちょっと盲目的です。
互いの間にあるものに気付いたTraceは一瞬あわてはするんだけど、どこかで「Davidならまあいいか」的な安心感もある。この場合の「まあいいか」は「恋をしてもいいか」で「カップルになってもいいか」とはちょっと距離があるんですが。
この話のおもしろいところは、「ああ、恋に落ちた」と思ってからのステップの踏み方です。男を「好きだな」と思って、その感情を受け入れても、ストレートであるTraceはその欲望までは簡単に受け入れられない。
え、男にキスする?本気かよ。…まあ何とかなるかも。してみると意外と悪くない感じ。
しかし男のペニスにさわる?ちょっと待て、それはないだろ!絶対ない!
大体、そんな感じで話が進んでいきます。そこのところの、じれったいほどに「少しずつ」な進み方と丁寧な描写がおもしろい。

もともとゲイであるDavid側にはそっちのためらいはないんですが、Traceが足踏みしているのはよくわかる。彼を強いたくはないし、友情にひびを入れたくもない。Traceよりちょっと年上で、とても優しい男です。恋がうまくいかなかった場合はどうにかしてTraceと友人に戻る道も残しておきたい。Traceの嫌がることをするとか弱味につけこむとかは死んでも嫌だ。…でもやっぱり欲しいぞ、と。
そんなふうにちょっとぐるぐるしながら、少しずつTraceの了解を得て、少しずつ互いの肉体的な距離をつめていく。ふれればふれるだけ、ほしくなるのもまた事実。果たしてDavidはTraceを安心させながら「最後」まで導くことができるのか。

洒落た会話とユーモア、それに優しさがちりばめられた、楽しい一冊です。どことなく映画っぽい雰囲気も漂う。
最後まで安心して読める感じで、親友同士のカプとか、おだやかなハッピーエンドが好きな人におすすめ。

★ゲイ/ストレート
★友情からはじまる恋


※2010年1月、15000語書き足した新バージョンがここで発売されました。気になる…

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Str8te Boys
Evangeline Anderson
Str8te Boys★★ summary:
Maverick HolmsとDuke Warrenは同じ大学のサッカーチームに所属し、4年の間ルームメイトであった。
Dukeは陽気で、不屈で、時に騒々しいほどのところがあったが、Mavはこの友人を心の底から大事にしていた。

大学生活、そしてDukeとのルームシェアが終わろうとしている時、2人で払っている家賃の半分をDukeが使いこんでしまう。
金に困った2人に、ゲイの友人が「Str8te Boys」というサイトを紹介してくれた。それは男同士の写真をのせているゲイ向けのサイトだが、タイトル通り「ストレートの」男をテーマにしたもので、あまり「ゲイっぽい」ものではない。ちょっと雰囲気のある写真を取るだけだ。
そのモデルをして、金の穴埋めをしないかと言うのだ。

Mavは少し迷ったが、それほど抵抗があるわけではなかった。MavもDukeもゲイではない──だがたまに2人は、「gay chicken」というチャレンジをして遊んだ。ふれたり、極端に近づいたりして、先に引いた方が負けというものだ。
2人のふざけあいは、時にかなりきわどいところまでいった。どちらも負けまいとして、そのチャレンジはどんどんエスカレートし、キスをしないという暗黙のルールさえもいつのまにかなし崩しになっていた。

それでも、彼らはどちらもゲイではない。
少なくともそれがMavの信じていることだった。そして彼は、Dukeとともに写真のモデルになることを承諾するのだが…
.....



卒業を目の前にした、大学生のルームメイト2人の話。
「Str8te Boys」てのは「Straight Boys」の意味で、ストレートっぽい男たちの、きわどい雰囲気の写真をのせているサイトです。2人はここでモデルをして稼ごうとする。

2人はとても仲がよくて、でもMavはそれをすべて友情だと思っている。
話はMav視点から語られるのですが、彼の視線を通してすら、「お前は鈍いよ」と言いたくなる鈍さというか、かたくなさです。「gay chicken」ゲームでキスをしても問題ない、何故ならそれはゲームで、相手はDukeだから。別に何もおかしなことはないな。Mavの頭の中ではそんな感じで物事が回っています。
気付け。せめて、キスの先にいってしまった時に気付け! ゲームを自分から仕掛けるようになった段階で、気付けよ! 
と、そのへんを楽しむ話でしょう。

陽気な雰囲気があって、全体に何か「大学生っぽさ」というか、荒削りな情熱で進んでいく感じがおもしろいです。話全体のノリがよくて読みやすい。
「gay chicken」とかも実際にあったらどうよ、という遊び方なんだけど、大学生だと思うと悪ノリはありだと思う。青春ぽいというか。
それでまた、気持ちの裏にあるものが段々わかってくるにつれ、Dukeの視点から物事を考え直すとすごく楽しいです。あー、ここで耐えてるな、とか。ここは地獄だなとか。

本当にノーマルだと思っていた、とか、自分との葛藤とか、同級生からの疑いや反射的な否定など、大体一揃い分のドラマが入って楽しく読める一本です。長さもそんなにないし。
友情発展ものが好きな人、言いたくて言えない感じが好きな人におすすめ。

★ルームメイト
★チャレンジゲーム

Timeless
Patric Michael ※リンク先はMS Readerフォーマット
Timeless★★ summary:
NateとAndyは高校の時から一番の親友であった。Nateがゲイであり、Andyがストレートであることも彼らの友情を妨げはしなかった。
大学に入ってからも一緒に遊び、パーティをし、ルームメイトとしても暮らした。
いい時も悪い時も、彼らは互いのためにそこにいた。
Andyが真剣に恋をした女がNateをホモだとののしって、Andyが彼女と別れた時も。Andyは傷つき、混乱し、Nateを責める気持ちや自己嫌悪にさいなまれていたが、それでも彼らの友情は崩れなかった。

そしてNateは、Andyが恋人ではなく友人である彼の側についたことについて、深く考えはしなかった。

2人は人生の様々なアップダウンを経験しながら、友人のまま強く結びついていた。
だからAndyが従姉妹の結婚式に彼を誘った時、Nateは喜んで一緒に一週間の旅行に行く。

友人とのふざけあいから出た、ただひとつのキス。それが彼の人生を引っくり返すことなど思いもせずに。
.....



To Have and to Hold」アンソロジー収録の1編。1本だけバラで買えます。

2人の親友が、長い友情の末に自分の気持ちに正直になる話。
「友達を好きになる」というよりも、「好きだけど、ずっと友達でいようと思っていた」話です。でもどちらもその気持ちをないことにしている。Nateは望みがないと思っているし、Andyは自分の気持ちを受け入れたくなかった。

彼らの友情はとても強固なもので、2人とも恋人をつれてダブルデートしたりしますが、その様子がタチの悪い悪ガキ同士がつるんでるみたいで可愛い。色々なところで、かなり笑えます。
その悪ふざけのような言葉の中でも、彼らが本当に相手を大事にしているのがわかる。
だからこそ、互いの気持ちを認めることは簡単ではない。後戻りのきかない、失うことのできない関係に入りこむことが怖い。

この話の読みどころのひとつは、関係がすすんでからのAndyの気持ちです。好きだと言って、互いを受け入れて、でもそれだけでは現実と向き合えない。Andyにはまだそこまでの覚悟がない。
Andyは自分やNateに対してだけでなく、自分の友人や家族に対しても正直にならなければならない。でもそれは、自分がストレートだと言いきかせて生きてきた男にはとても高い壁です。
NateはAndyの「dirty little secret」にはなりたくないし、何よりAndy自身、Nateがそんな扱いを受けることを許せない。Nateとのことを、そしてNateを恥じたくはない。
どうするか。一瞬の欲望や愛しさだけでなく、この先の人生に何を望むか。Andyは人生の選択をせまられます。
単純にくっついてハッピーエンドとはいかない、そこがなかなかするどいと思う。

「ウェディングマジック」の1日の中で、Andyは正しい答えを見つけ出せるのか。
長い時間と友情の積み重ねが見えてくる、笑えて、甘くて、ほろ苦い部分も織り交ぜた話です。後味もいい。
「ずっとお前が」というシチュに萌える人におすすめ。楽しいです。

★短編
★親友同士

Faith & Fidelity
Tere Michaels
Faith and Fidelity★☆ summary:
ニューヨーク市警風紀取締課の刑事、Evan Cerelliは、長年つれそった最愛の妻を交通事故で失ってから、まるで抜け殻のような人生を送っていた。ただ子供たちのために生き、仕事を続けてはいたが、世界はまるで、彼の周囲ですべての色を失ってしまったようだった。
彼は中学で妻に出会い、恋に落ちて、それからずっと他の女性を見たことはなかった。彼女は彼の最大の友人であり、理解者であり、恋人であり、妻であり、子の母であり、彼を世界につなぎとめる存在だった。

元殺人課の刑事Matt Haightは、仲間に背を向けられて警察を去ってから、警備会社で働いてはいるものの、ボトルの底をのぞきこむような日々を送っていた。
アパートにろくな家具も置かず、人生の目的もなく、ただその日をやりすごすために酒に手をのばす。

警官の退職パーティで、2人は出会い、お互いの存在にほっとする。相手を憐みもせず、詮索もせず、余計な世話も焼かない。
ただそこにいて、一緒に酒を飮むだけの友人。2人でいる間は、転落した人生を取り戻そうともがかなくてもいい。何か別のものになろうとせず、自分自身でいられる。

だがその気持ちがいつのまにか、友情以上のものへと変わりはじめる。それに気付いた2人は、仰天する。
それまで自分がゲイだと思ったこともなかった。そんなことはありえない。その筈だった。
.....



Mattは42歳、Evanは30代半ば~後半の筈、だと思う(探してみたけど年齢発見できず。でも長女が17歳だし)。
人生の荒波に叩きつぶされかかった2人が、まるで予期しなかった次の荒波にぶつかって、恐れ、たじろぎつつも、そこから新しい人生を模索していく話です。

Evanは、周囲から愛されています。4人の子供たち、彼の心配をして食事の面倒を見ようとする女性パートナー、理解ある仕事場の仲間。
彼らが自分を案じ、心にかけていてくれることはわかる。でもそのあたたかさを、Evanはもう感じとることができない。
妻が失ってから心がとじてしまった彼は、自分が「ゆっくりと死にかかっている」のを知っているけれども、どうしようもないまま、世界からすべり落ちていく。

その彼にはじめて届いたのが、Mattの存在です。彼のあたたかさにしがみつくように、Evanは人生のぬくもりを思い出していきますが、その先、どうしたらいいかわからない。
Mattと一緒にいて、果たしてどうなる? 事故から1年たったとは言え、亡くなった妻への裏切りにはならないだろうか? しかも男と? 子供たちがこれを知ったらどう思うだろう?
現実の重さをただ恐れ、引いていこうとするEvanを、Mattはとめることができない。

そういう、社会の規範や自分の常識の中で、自分たちの関係をどうするべきかわからない2人の大人の男(てか親父)の心模様を中心にした話です。
そんなに颯爽とした感じもなく、時々情けなかったり、ちょっとよれよれした感じもある親父っぷりがいい。

途中、Mattがたまたまひっかけるone-night-standの相手のJamesがめっちゃくちゃ格好よくて、この一夜のエピソードがいい具合に効いています。(シリーズ次作「Love & Loyalty」は彼が主人公の話です。すごくいい)
いかに色々こみ入ってしまったからと言って、それまで40年自分がストレートだと思って生きてきたMattが「男をひっかけに」夜の町に行くのは正直違和感があるんですけども、Jamesがあんまりいい男なのでそのへんはまあいいか、という気持ちにもなる。

細かい部分はいくつか気になりますが、感情表現が豊かで、全体によく書けている話です。
40すぎて、とか、自分がゲイだと思ったこともない親父、とか、そういうものが好きな人におすすめ。

★ストレート×ストレート(子連れ)
★親父

Boys of Summer
Cooper Davis
Boys of summer★★☆ summary:
Hunterは、親友Maxと恋に落ちた自分を知っていた。
だがMaxはゲイで、彼はストレート──少なくともMaxと恋に落ちるまで、自分がストレートだと思って、生きてきた。

もしMaxとつきあうのならば、友人や、周囲の人間に彼らの関係を隠しおおせるものではない。今のように親友としてすべてを覆い隠すことはできない。
Maxはそんな、暗い秘密のような扱いを受けるいわれはない。それはHunterにもわかっていた。

彼らはフロリダの海岸へと2人でバカンスに出かける。互いの気持ちをたしかめ、それをはっきりと認めるために。
Maxは長い間、その時を待っていた。Hunterに恋をした彼は、ほかの誰とも寝たことがない。そしてHunterの覚悟がはっきりと固まるまで、彼と寝るつもりもなかった。

友人たちから数千マイル離れたフロリダの海岸で、2人は互いと向き合う。
それが一瞬の夏の出来事で終わらないことを、彼らのどちらも知り、どちらも望みながら、その瞬間を深く恐れてもいた。
.....



ゲイとストレート(だと信じていた)の若者の話。
2人は惹かれあい、恋に落ちますが、まだ決定的な体の関係には至っていません。

Maxがちょっと古風というか、純情で、どうしてもHunterとの関係を「特別」なものにしたい。彼は隨分前にクローゼットから出て(=カミングアウト)、もう戻るつもりはない。だからもしMaxとHunterが関係を持つのならば、それは友人たちにすべてを明らかにするという覚悟の上でなければならない。
でもHunterは、Maxの存在、彼と最後の一線をこえることが自分の人生を変えてしまう、そのことに怯えています。Maxがいなくては生きていけないと思う。だけれども、この先に待つだろう人生の変化も怖い。

そのあたりの気持ちの揺れがHunterの視点から書かれた、非常にきめのこまかい物語です。
一夏の、濃密な思い出を作りながら、彼らはどちらも踏みこんだことのない場所へと踏みこみ、互いを変えていく。

夏の出来事を書きながら、同時に彼らの過去が描かれていきます。
Maxへの気持ちや自分がゲイである可能性を否定しようとするHunter、それでも離れられないまま2人は行き違い、ほとんど絶望的に求めあう。嵐のような感情と、痛みに近い葛藤。
カジュアルによそおったはじめてのデート、お互い同士を友人だと見せかけながらの夕食、ファーストキス──そしてそのキスひとつで、彼らは離れられなくなる。そんなふうに何よりも互いを必要としながら、最後の一歩を踏み出せない。
生々しく、痛々しい気持ちの揺れの重なりあいが丁寧で、なかなかに読ませます。

描写が繊細で、エロシーンにも独特の切羽つまった色っぽさがある。表現が詳細なわけではないんですが、生々しいというか、感情と体が剥き出しになった感じがあります。
中編くらいの長さで、全編を通してあやうい緊張感が張りつめている。
若者だからか「青春」っぽい繊細さもあって、「はじめて」シチュが好きな人や、迷いやためらいがある話が好きな人におすすめ。

続編「Taking You Home」が出てます。

★友情→恋
★はじめて

Shades of Gray
Brooke McKinley
Shades of Gray★★★ summary:
FBI捜査官のMiller Suttonは、有能で、非情であった。犯罪者を追いつめ、利用し、すべての物事を白黒はっきりつけながら生きてきた。
だが麻薬組織の幹部のひとり、Dannyと向き合った時、Millerのクリーンな世界は崩壊を始める。

FBIの罠にかけられたDannyは、ボスを裏切って裁判で証言するという取引を呑む。
それがどれほど危険なことか、彼は知っていた。裏切り者は楽には死ねない。地の果てまでも、追われるだろう。
FBI捜査官のMillerは身の安全を保障し、証人保護プログラムを組むと言ったが、Dannyはそれを信じていなかった。
だがそれが彼の運命なのかもしれない。泥水を飲むようにして生きてきた。麻薬のディーラーに拾われ、友人を組織に引きずりこんで死なせ、刑務所に入り、そして裏切り者としての死を迎える。
彼にふさわしい最後かもしれなかった。

MillerとDanny。FBI捜査官と情報提供役の犯罪者。
光の当たる場所ですべてに白黒をつけて生きてきた男と、暗い世界で多くの泥にまみれてきた男。
お互いが理解できるはずもない2人だった。だが彼らは互いに惹かれ、Millerははじめて白と黒だけでは解決しない世界の存在をつきつけられる。

生きのびるために。愛するものを守るために。時には暗い選択をし、重荷を背負わなければならないこともある。
その選択を、はたしてMillerはできるだろうか。そしてそんな自分に耐えられるだろうか。
.....



正義を盾に犯罪者を道具のように扱う捜査官と、泥の中で生きのびてきたしたたかな犯罪者。
しかもいずれ証人保護プログラムがはじまれば、彼らは二度と会うことも、連絡を取ることもできない。
こういうシチュは萌える!

MillerとDannyの価値観、2人の変化や融合が丁寧に書かれていて、緊張感のある話になっています。
Dannyがいいですね。減らず口を叩き、癇癪をおこしながらも、彼の中にはひどくやわらかい部分がある。これまで自分が気持ちをよせた2人の相手──古い友人と元妻──の人生を台無しにしてしまったのを見て、もう誰とも深く関わるまいとする。
ボスに対しても、恐れや憎しみもあるが、その一方で時おりに示される信頼や優しさに、心の深くで忠誠をおぼえてもいる。
弱さと強さが複雑に絡み合った様子がリアルで、とても強烈なキャラです。

Millerは、Dannyの中にある繊細な痛みに惹かれますが、その一方で自分が「FBI捜査官」であるということにしがみつこうとして、Dannyを傷つけることもある。
彼にとっては、白黒のつく世界がすべて。
だがDannyは彼を惹きつけ、彼の世界を揺さぶる。これほどまでに誰かを求めたことはない。これまでの白黒のついた美しい世界がすべて色あせて見えるほどに。

過去の追憶と現在の展開がうまい具合に混ざり合っていて、Dannyの中にある深い傷が徐々にあらわれる構成が巧みです。Dannyの人生が明らかになっていくにつれ、Millerとの対比がより際立つ。
彼らはまるで違う世界を生きてきた。まさに白と黒。
そしてDannyは、自分の生きる混沌の世界にMillerを引きずり込みたくはない。たとえMillerがそれをよしとしたとしても、状況はあまりにも絶望的で、彼らに道はない。
そんな中でのDannyの葛藤と荒々しさ、Millerへの愛しさ、そして暗い人生を生きのびてきた男のしたたかさが文章の中に凝縮しています。


Danny wanted to howl and rage like a wounded animal, demand that they find a way to make it work. But there was no point in that. Danny had learned early that sometimes there was nothing to do but suffer through.


Danny視点で、まだ知らないはずのMillerのファーストネームが地の文に書かれていたり、Millerの婚約者の存在感があまりにも薄いことなど、気になる点もありますが、でも全体に骨太で、最後まで緊張感を失うことなく書ききられた話です。
こういう、「心理の成り立ちと変化を詳細に描写した作品」って英語の方がいい気がしますね。日本語でひとつひとつ語られたらかなりループになると思うけど、英語は言葉の輪郭がくっきりしているので、読みやすいというか入ってきやすい。

FBI捜査官と犯罪者とか、マフィアに追われる明日のない2人、とかそういうシチュに萌える人ならまず買いの1作。

★FBI×犯罪者
★密室

Knowing Caleb
Cameron Dane
Knowing Caleb★★★ summary:
Hawkins兄弟は本当は兄弟ではない。彼らはそれぞれ悪魔の種族の出であり、今は一族から離れ、アメリカで牧場を経営しながら新たな人生を送る仲間であった。
そのうちの2人が恋人と出会い、それぞれ苦難を経て人間になった今、Caleb Hawkinsだけが残されていた。

だがCalebは、自分が決して兄たちのような真実の恋を見つけることはないだろうと、わかっていた。
彼の過去を誰も知らない。彼が背負わなければならない罪を、兄たちですら知らない。悪魔だとばれるよりも、その罪が暴かれることの方がCalebにとっては恐ろしかった。

Jake Chaseは6年前に最愛の妻を失ってから、生きる希望を取り戻せずにいた。
Calebは悲嘆に暮れているJakeを見つけ、牧場に雇い入れる。
特に何も問題はないはずだった。

だが2人は互いに強く惹きつけられるのを感じ、2人ともに愕然とする。
どちらもゲイではない。
それなのに、どちらも相手を無視できず、拒否できない。感じたことのない飢えや欲望に流されるように相手に手をのばしながら、どちらも、もがくようにそこから逃れようとしていた。

果たしてストレートの2人の男は、それぞれの過去を乗り越えて2人をつなぐものを直視できるのだろうか。そしてCalebは、自分の罪をJakeに見せることができるのだろうか。
.....



Hawkins Ranchシリーズ。最後に残った3人目の兄弟の話なので、もしかしたらシリーズ最終巻かもしれません。
これまであまり正体というか、本当の性格がよく見えていなかったCalebの話です。

Calebは陽気で、女好きで、これまでのシリーズでも実にいい男です。「Falling」でCainが人間になれる方法やその他あやしげな魔法を探し出してきたのも彼だし、「ReneCade」でRenの理解ある雇い主として気を配っていたのも彼。
でもその中で、Caleb自身がどういう人なのか、いまいち見えてきていないのも確かです。どこかつかみどころがない。

それが何故なのか、彼は本当は外に見せかけているほど「この世に悩みなき」明るい人ではないのだということが、この話の中でかかれています。

そして、いまだ妻の喪失から立ち直れないJake。彼の痛みも深く、その悲嘆は読んでいるこちらが息苦しいほどです。
それぞれ、強い輪郭を持つ男2人にフォーカスが強く当てられた話で、彼らをつなぐ性的な欲望も含め、強烈な話運びになっています。
やっぱとにかく激しいぞ、Cameron Dane。この人はこの牧場シリーズが一番強烈な気がする。
その中でも、「男と男」という感じでがんがんぶつかりあい、傷つけあったりしていくのがこの話。とにかくまっすぐぶつかりあい、はらわたを引きずり出すように互いの内側をのぞきこむ。
何と言うか、本当に力技な話だと思う。うっかり引いたりしないで一気に盛り上がって読んでいきましょう。いやもうほんと激しくて、Calebが本当は悪魔なんだ!ということなんか、ささいな問題な気がするくらいです。

話としては、彼らの関わりの他、Calebが何度も狙われる謎の狙撃事件などが起きたりして、そちらもなかなか相手の正体が見えずにおもしろいです。
そんでやっぱり、兄弟の絆がいいですね。色々なものをくぐり抜けてきた彼らが幸せに暮らしている様子を見ると、ほのぼのします。この話の中での数少ない息抜きポイント。

もう、台風かなんかの夜に読んだ方がいいんじゃないだろうかというくらい、激しくドラマティックな話。
激しいもの好き、ストレート同士がもがく話が好き、あとは苦しんでるキャラに萌えるんだよねという人におすすめ。

★ストレート×ストレート
★悪魔

★Three-Star rating system★


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・2017年
・7月 ヘルハイ3巻
・夏 雑誌短編
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas
・冬 雑誌短編
・ほかにも出るかも
・不甲斐なくてごめん

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター

 
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