Slash×Slash

Slash(m/m小説) レビューブログ

※万人向けの内容ではないのでご注意ください
→このブログについて

[タグ]キーワード:クリスマス の記事一覧

Mistletoe at Midnight
L.B. Gregg
MistletoeAtMidnight.jpg★★★ summary:
獣医のOwen McKenzieは、恋人と別れ、家族の住む場所に近いVermontに住まいと仕事場を移すことにした。
家族とのクリスマスパーティが行われるロッジに出向きながら、彼は、母親が息子のための「気づかい」を用意していないことを願っていた。どの集まりでも、どのパーティの時も、彼の母はOwenに誰か「いい人」を引き合わせようとしてきた。

だが今年のクリスマス、彼を待っていたのはこれまでとは比べものにならない驚きだった。

Caleb Black。高校の同級生。彼の初恋。そして何も言わずに彼の前から消えていった少年。
そのCalebが、15年たった今、ロッジの部屋に立っている。

久々に会った父親は病で具合が悪そうで、Owenは罪悪感と心配とで心が揺れる。さらに、Owenを捨てた筈の恋人までもが何故かクリスマスパーティに招待されていたことが判明し、このクリスマスは彼にとって史上最悪のクリスマスとなりつつあった。
.....



HisForTheHolidays.jpg今年できた電子出版社Carina Press(大きな出版社のスピンオフらしい)の、「最初のクリスマス」を記念して出されたクリスマスストーリーのひとつです。ほかにもJosh LanyonやZ.A. Maxfield、Harper Fox(この人は私は初読み)といった有名作家をそろえています。
ばらでも買えますが、4人全員のストーリーがそろったアンソロジーとして「His for the Holidays」でまとめ買いできます。

←こっちの方がちょっとお得。

Owenは、ちょっと不器用で、シャイで、非社交的な獣医。ただのシャイというより、「あーもう、くそう!」と内心のたうち回るタイプの、気持ちが活発なシャイです。外側から見てると楽しそう。
彼の家族、特に母と兄は活発でおせっかいで、お母さんはどうしようもないくらいのずば抜けたおせっかいママ。彼女があけすけに色々なことに口を出すたびに、Owenは内心のたうち回ったり、テーブルの下に隠れたくなるのです。

その家族、さらに15年前に見失った筈の初恋の男、そしてちょっと前に彼を捨てた男と一緒にロッジでクリスマスをすごすことになって、Owenは自分の立ち位置がもうわけわからなくなっちゃっている。
でも、病気がちな父親のために、「いいクリスマスにしなくちゃ」という決心はしている。そうでなければ逃げ出していそうです。30すぎた男に何ですが、実に可愛い。

彼の気持ちはいまだにCalebにあるし、Calebだって彼に色々な誘いを仕掛けてくるのですが、Owenはどうしても一歩が踏み出せないのです。
彼がその壁を破るには、やはりクリスマスの魔法とおせっかいな家族が必要なのかもしれません。

15年前の彼とCalebの恋の情景が入り混じりつつ、Owenの気持ちや妄想の暴走も入り混じって、なかなかにカラフルな話です。楽しいし、笑えるし、ロマンティック。ホリデーストーリーとして三拍子そろっています。
最後のちょっとしたひねりもよく効いていて、クリスマスの読書におすすめ。気持ちが明るくなります。

★クリスマス
★再会(初恋)

Nine Lights Over Edinburgh
Harper Fox
Nine Lights Over Edinburgh★★ summary:
刑事のJames McBrideは、もう少しのところまで人身売買の組織を追いつめてきた手応えを感じていた。

だが、彼の生活はすでにほとんど破綻していた。離婚、別れた妻からの娘への面会の禁止、上司の引退とともにやってきた新しい上司とはそりがあわず、仕事の上でぶつかり続けていた。
仕事のパートナーは若く、だが考えなしで、McBrideとの一度のあやまちがいつまでも二人の間に横たわっている。

上司に言わず、一人で勝手な捜査を続けながら、McBrideはイスラエル大使の警備業務を命じられる。
彼らは襲撃を受け、McBrideを銃口から救ったのは、大使についているイスラエルの護衛チームの中にいるTobias Leitnerという男だった。モサドの男。

救われる価値などない、とMcBrideは思う。すり減ったこの人生に意味など残っているだろうか。
だがクリスマスの直前、彼の幼い娘が行方不明になり、McBrideには何よりもクリスマスの奇跡が必要だった。ただこの1度だけでも。
.....



クリスマスものの企画アンソロジーの一編なので、ハッピーな感じのものを想像したら結構ハードでびっくりしました。
ハードってのはエロじゃなくて、話が。

人生に疲れてすり減っていて、頑固で、奈落の淵すれすれにいるような男、McBride。彼は人身売買の組織について執念深く捜査を続けているけれども、それは正義感からと言うよりもほとんど、自分の存在意義だからすがりついているような捜査の仕方です。
そんな彼を、誰もが少しずつ見離し始めている。誰よりもMcBride自身がすでに自分を見離している。
唯一の救いは幼い娘の訪問だけれども、それすら奪われかかっている。
そんな彼の日常が息苦しくて、重苦しい。ちょっと英語が硬質で(ハードボイルド系の硬質さがある)読むのに少し時間がかかったのですが、全体の雰囲気がうまく閉塞感を描き出していると思います。

Tobias LeitnerはそんなMcBrideを銃弾から救うのですが、Leitner自身も様々なものをかかえこんでアメリカへやってきた男です。かつてのパートナーを失い、傷ついている。
果たして二人にクリスマスの奇跡は訪れるのか。

大人の男とか親父とか、そのへんが好きな人ならこの「重さ」がツボだと思います。
しかし、新しい女上司の使えなさ具合がちょっと映画版の「踊る大捜査線2」みたいで、ここは読んでてかなり苛つきますね。上昇志向が強すぎて下がおろそかになるって、やっぱりひとつのステレオタイプなんだろうか。

疲れた親父のMcBrideと、傷ついたいい男のLeitnerの組み合わせはロマンティックで、重いながらも、最後はちゃんとクリスマス。
親父同士の、人生背負った重いロマンスが好きな人におすすめ。

★親父×親父

HisForTheHolidays.jpg
4人の作家によるクリスマスアンソロジーの一編なので、バラで買うほかにこちらで4編まとめ買いできます(ちょっとお得)

I Heard Him Exclaim
Z.A. Maxfield
I Heard Him Exclaim★☆ summary:
Chandler Traceyは、両親の家に向かって車を運転しながら、クリスマス気分などみじんも感じていなかった。弟夫婦が交通事故に巻きこまれて死に、彼の肩には残された5歳の姪に対する責任がのしかかっていたのだ。
子供から目を離さないようにしながら、Chandlerは必死に自分の務めを果たそうとするが、その責任は彼を押しつぶしかかっていた。

Steve Adamsは、いつも家族ぐるみで派手に飾り付けるクリスマスを離れ、気晴らしと楽しみを求めてラスベガスへ向けて車を走らせていた。
今年は彼はクリスマスを祝う気持ちにはなれなかった。

彼らの運命は路上で絡み合い、SteveはChandlerと姪を自分たちの家族ぐるみのクリスマスに招待する。

姪っ子は何故だか、Steveのことをサンタと信じて疑わない。痩せたサンタであっても、彼女にとってSteveは「サンタクロースの目をしている」のだった。
そしてChandlerにとっても、Steveはまるで奇跡をおこすサンタのような存在だった。おだやかで、ごく自然に人の求めに応じ、人を助ける。
.....



HisForTheHolidays.jpg
4人の作家によるクリスマスアンソロジーの一編。
His for the Holidays」でまとめ買いできます(ちょっとお得)

この話は、子連れでくたくたに疲れた男と、本能的に彼を保護してしまう年上の男のクリスマスストーリー。

2人のロマンスである以上に、これは5歳の姪っ子の物語でもある気がします。両親が死んだ事故の時に車に乗り合わせていた彼女は、すべてを理解しているわけではないけれども、どこかで苦しんでいる。

Steveの家族が飾り付けるクリスマス!ってのがまたなかなかすごくて、家族が住んでいる家が集まる一帯が、まるでクリスマスの夢物語のようです。
子供から一瞬も目が離せずにガチガチに緊張していたChandlerは、やっとSteveの家でその責任感を手放すことができる。でもSteveによりかかってしまう自分に対しても後ろめたさを覚えていて、彼は結局、色々な罪悪感と責任感でがんじがらめになっています。

Steveはそれを助けてあげたいけれども、深く踏み込んでいいものかどうかためらっている。
大人同士が、惹かれあいながらもたじろぎ、立ちすくむ、そんな中でクリスマスを一番楽しんでいる様子の姪が可愛い。

Z.A. Maxfieldはわりとよく子連れの話を書くんだけれども、登場人物の子供に対する保護責任感がものすごく強い。過保護というか、一種の強迫観念と言っていいくらい、子供から目を離すことができなかったり、その責任感を真正面から受けとめようともがいていたり。
読んでいるとどうも、男性じゃなく「子連れのママ」を代わりに据えても違和感がないんじゃないかという瞬間があるのが、個人的には少しマイナスポイント。
子供の存在ががっつり話に絡んでくるので(責任感とか、子供を抱えた将来への不安とか)「子連れの男」に萌える人だとまた別のツボだと思うのです。

クリスマス、家族、子連れと、アットホーム感満載なので、クリスマス雰囲気に浸りたい時におすすめ。

★クリスマス
★サンタクロース

Icecapade
Josh Lanyon
Icecapade★★★ summary:
2000年の1月1日、Noel Snowはベッドの中で目を覚まし、横にいるRobert Cuffeの姿を眺めた。
それは記憶に残る一夜だった。

そしてそのまま、Noelは脱兎のごとく逃げ出したのだった。
RobertはFBIの捜査官で、Noelは宝石泥棒だ。どれだけRobertに追われる瞬間を楽しんでいたとしても、Noelは牢屋に入るつもりはなかった。

その後10年たち、足を洗ったNoelは、犯罪の経験を元にしてベストセラー作家になっていた。
だがそのことがはからずもRobertのキャリアとプライドに傷をつけていることを知り、深く後悔した彼はクリスマスの夜に毎年Robertの電話にメッセージを残したが、男が電話を取ることも、コールを返してくることもなかった。

贖罪は無理なのだろう。Noelはシリーズ最後の本にRobertへのメッセージを込めたが、そもそも彼がNoelの本を読んでいるかどうかもわからない。

だが、2010年のクリスマスの夜、Noelの扉口には、10年ぶりに見るRobertが立っていた。
最近起こっている宝石の窃盗について、Noelに疑いが向けられていると彼は言い…
.....



HisForTheHolidays.jpg4人の作家によるクリスマスアンソロジーの一編。「His for the Holidays」でまとめ買いするとちょっとお得。

この一編は、ロシアのマフィア家族の中で育ち、家族の犯罪の片棒を担ぐ代わりに一人で宝石泥棒になった男と、彼を追い続けてきた男のロマンス。
洒落てて、ちょっと映画みたいです。Noelって「泥棒」というより「怪盗」という感じだし。


たった一夜、二人はベッドをともにしたことがある。Robertを酔わせてNoelが仕組んだ様子なのですが、実際にRobertが本当に前後不覚になるほど酔っていたのかどうかは謎で、想像がひろがる10年前のエピソードです。

Noelは犯罪から引退し、人里離れた牧場で馬たちと一緒に暮らしている。
そんな静かなクリスマスの夜は、Robertの訪れとともによって崩れる。さらに近隣住民が次々と助けを求めて訪問し、地面の割れ目に落ちたラマを救ったり、動かない発電機を救おうとしたり、忙しいクリスマスとなるのです。

Robertは頑固で、口数が少なく、感情を自分の中に押し込めるのが上手な男ですが、彼が尋問するためにNoelを訪問したのではないことはすぐにわかる。
Noelを逃がしたくないからと言いながら、彼は隣人の手助けに行くNoelから目を離さずにそばについて回り、Noelがどんな暮らしぶりなのか、すべてを見ようとします。Noelが隠そうとしている弱さすら、Robertは見抜いてしまう。

NoelはRobertの訪問の理由を探りながら、「もしかしたら」という望みを持ったり、そんな自分をいましめたりする。
犯罪一家の中で育ち、そこから逃れるために個人で犯罪を重ね、Noelには他人ときちんとした人間関係を築けたことがない。やり方を知らない。
でももしかしたら、Robertなら、と彼は思う。Noelを誰よりもよく知るこの男なら。
たとえ、かつて追う者と追われる者であったとしても。

傷つきたくないけど望みは持ちたい。そんなNoelの様子が微笑ましいし、切ない。

まあやっぱり猫とネズミの恋物語は萌えるよね!ってことで。
大体のことは笑って流してしまえそうなNoelが、Robertには毎年クリスマスの贖罪の電話をかけずにいられないというところも切ないですね。許されたいと思っているのか、つかまってもいいと思っているのか。
短めですが、Lanyonらしく切れ味がよく、ロマンティックで余韻のあるクリスマスストーリーです。

★FBI×宝石泥棒
★再会

Simple Gifts
LB Gregg
SimpleGift★★☆ summary:
Jason Ferrisは友人に無理につれていかれた彼女の実家のクリスマスで、居心地の悪い思いをしていた。あたたかな歓迎、プレゼント、笑顔──そのどれもに、彼は逃げ出したくなる。

孤児として育ち、荷物ひとつだけをかかえて里親のもとを点々としたJasonは、ひとりでいることには慣れていた。
だが、家族のクリスマスパーティ?どうしたらいいのか、わかるわけがない。

しかも、そこには友人の兄のRobb Sharpeがいた。
かつて、彼の心を奪って、消えた男。
軍から戻ってきたRobbはすっかり変わってしまい、まるで別人に見えた。

パーティから逃げ出そうとしたJasonは、庭でクリスマスオーナメントに激突されて気絶する。
彼を病院に運ぶ車のハンドルをRobbが握り、彼らは奇妙な再会を果たすのだった。
.....



ホリデーシーズンには色々なクリスマスものが出るので、M/Mもいつになく盛り上がるシーズンです。LB.Greggも去年に引き続き、ホリデー短編を書いてくれました。
明るい主人公が多い彼女にしては結構ダークなタッチで、暗いものを抱えた2人の男の再会の話。でもやはり主人公のどこかユーモラスなまでの頑固さや、ユニークさは健在です。
「A Cornwall Novella 2」となっていて、1はDudleytownですが、つながってないのでどちらも単独で読めます。

主人公のJasonは、分厚い殻にくるまったような人間です。友人のクリスマスの誘いを断りつづけたけれども、ついに泣き落としに負けて、家までつれてこられてしまう。
そして、即座に後悔するのです。あたたかな歓迎とプレゼントを見て。しかも、そこにはかつて愛した男がいたから。

歓迎されればされるほど、「自分はここに属していない」ということを強く感じるのは、Jasonが孤児であることに深く傷つきつづけてきたからでしょう。彼は里親にあたたかく歓迎されたことがない。恋した相手は自分を去って軍隊に入った。
孤独は、彼が自分を守るために築き上げた壁で、その中に誰もいれたくない。そんな孤独と、そこにしがみつこうとするJasonの様子がちょっとユーモラスに、そして痛々しく見えてきます。人から歓迎されると逃げ出したくなり、小さな紙が手元にあればすぐに折り紙で何かを折ってしまう。折り紙で折った星で家の天井を星座のように飾って、空間を満たしている。
痛々しいんだけれども、ちょっと微笑ましくもある。

Jasonをかつて去ったRobbも、深い傷を見せます。軍隊生活で様々なものを見てきたらしい彼は、身体的にも、心も傷ついている。家族は彼を歓迎したいけれども、まるで壊れ物のように扱う。
Robbにとっても、これは居心地の悪いクリスマスなのです。

頭を打ったJasonを病院に送るのは、Robbもクリスマスから逃げたかったから。
かつての恋人同士は、お互いの傷をかかえたまま、どちらもクリスマスパーティから逃げようとする。
どちらも相手に気持ちが残っているけれども、すぐさまお互いの手を取れるほどたやすい状態でもない。クリスマスの再会だけでは充分ではないのです。去っていくRobbをJasonは追わないし、これが最後だとも思う。
でもそれは本当に最後なのだろうか?

折り紙が話のちょっとしたアクセントになっていて、特に千羽鶴が小道具になってます。少しずつ送られてくる鶴ってロマンティックですが、千羽はかなり置き場を取りそう。まあ、Jasonはある程度まとまると糸を通して吊るしてるみたいだけど。

2年にわたる、クリスマスの夜の物語です。孤独な男と、傷ついた男。
いい具合に重みがあって、読後感はあたたかい。ロマンティックだけれども、ちょっと重みもあるものが読みたい時にぴったりです。
不器用さん同士の恋に萌える人におすすめ!

★クリスマス
★再会

My True Love Gave to Me
Ava March
MyTrueLoveGaveToMe.jpg★★★ summary:
1817年の12月。
Alexander Nortonは天にも昇る心地だった。
Thomas Bennettと、ついにふたりきりの夜を迎えられるのだ。初めての、それは彼らの愛を確かめる大きな1歩になるはずだった。
真実の恋。オックスフォード大学でThomasに出会った瞬間、彼らのどちらもそれを見つけたのだと、Alexanderは信じていた。

1821年の12月。
Alexanderはクリスマスが近づいて世間が華やぐこの時期を、心の底から憎んでいた。4年の時がたってもなお、彼は自分に背を向けた恋人のことと、その傷を忘れることができなかった。

そんな時、Thomasがニューヨークから戻ってくる。ある決心を心に秘めて。
彼は、4年前の許しを乞いにAlexanderと向き合うのだが…
.....



Alexanderは愛らしい、よく笑う、誰もが心を許すような青年だった。
彼に恋し、でも最後のところで怖じ気づいたThomasは背を向けて逃げ出す。
そして4年後、どうしてもかつての恋が忘れられずに戻ってきたThomasが見たものは、すっかりシニカルになり、警戒心を解かず、人に向かって壁の隔てを作ってしまったAlexanderです。
彼は変わってしまった。そのことを自分の罪と知り、Thomasは立ちつくす。

何せ、わんこのようにThomasになつきThomasを信じていた4年前のAlexがあんまり可愛いので、4年後の皮肉屋で冷たい青年の姿には読んでいるこっちも心が痛みます。
ThomasはどうにかAlexの許しを得ようと、そして4年前の傷を修復しようと様々な手を尽くすのだけれども、Alexは彼を拒みつづける。
まだ恋している──ずっと忘れたことなどなかったけれども、またThomasが去ったら、彼は今度こそ立ち直れる気がしない。だから拒むしかないのです。痛々しいな。

ホリデーシーズンのロンドン。あちこちでパーティが行われ、招待がとびかう中で、彼らはすれちがい、出会ってはぶつかり、どちらも新しい傷を抱えて、それでも相手から目が離せない。
Thomasを傷つけようとしてするどく舌鋒をふるいつつ、そんな自分に嫌気がさすAlex、Alexの憎しみや怒りを当然のものとして受けとめて手をさしのべようとするThomas。若い恋を引きずるふたりの感情表現が濃密で、美しい。

明るく機知にとんでいたAlex(今は皮肉屋のAlex)と、誠実だけれども不器用なところもあるThomas。
愛らしいカップルで、いいヒストリカルものです。
短めですがアップダウンがよく練られた話で、ヒストリカル好き、再会もの好きにおすすめ。

MenUnderTheMistletoe.jpgこの短編はCarina Pressのクリスマスアンソロジー「Men Under the Mistletoe」に含まれている1篇です。バラでも買えるけど、アンソロジーで買った方がお得。
1話が2~3万語弱なので、4話入って10万語ほど。
去年のアンソロ「His for the Holidays」も面子が豪華でよいアンソロでしたが、今回も読みごたえありますよ。

クリスマスの奇跡とか再会がテーマになっている様子で、苦い思いを引きずりつつ向かい合ったりすれちがったりするカプが楽しいです。話はどれも全体に重めですが、ハッピーエンド。


★クリスマス
★裏切りと再会

Winter Knights
Harper Fox
WinterKnights.jpg★☆ summary:
Gavin Lowdenは若い歴史学者で、アーサー王伝説についての検証を行いにNorthumberlandを訪れていた。
アーサーとランスロットとの間に特別なつながり──ロマンスがあったというのが、彼の説だった。

そしてそのクリスマスの日、ホテルで、彼は恋人のPiersを待っていた。敬虔なカトリックであるPiersは、宗教的な罪悪感や、家族に秘密をもつ後ろめたさをかかえながら、Gavinとの関係を続けてきた。
彼を楽にしてやりたくて、Gavinはこのクリスマスの日、家族にカミングアウトしてホテルに来るようにPiersに提案したのだった。

だが、恋人は来ず、かわりに別れの電話だけがくる。
雪の中にさまよい出したGavinは、やがてふたりのレスキュー隊員に救い出されるが、それは思いもかけずにエロティックな一夜となり…
.....



MenUnderTheMistletoe.jpgCarina Pressのクリスマスアンソロジー「Men Under the Mistletoe」に含まれている1篇。
それぞれバラでも買えますが、いいアンソロです。


この話を書いたHarper Foxは、人の心の痛みを書かせると本当にうまい。痛みがどっしりと心にのしかかってきて、ひびを入れ、今にも体ごと粉々になりそうなつらさが、文章からにじみ出してくるようです。
一方でそこに気合い入っちゃって、別のところがおろそかになる気配があるんですが。シーンはすごくいいけど話全体のバランスが。
どう言ったらいいのか、いびつでアンバランスですけど、読みごたえはある。


今回の話はかなり変わったクリスマスストーリーで、GavinとPiersというメインカップルよりも、Gavinを助けるふたりのレスキュー隊に話のフォーカスの半分があたっています。
謎めいたレスキュー隊で、しかも片方はGavinと地下にとじこめられた最中にちょっとエロい展開になったりして、読んでいるとびっくりします。いいのかそれ?と思うんですが、その先に「実は…」という真実のターンテーブルも用意されていて、正体が段々見えてくる。
この2人がマジですごく格好いいです。何とも心痛む、でも愛らしいカップル。

一方で、GavinとPiersには読んでてもあんまり気持ちがときめかなかったかなあ。とは言え、宗教的な重荷に苦しみつつGavinとの関係を続けてきたPiersの決断とか、彼の立場に立って思いやることが出来なかったGavinが自分の身勝手さに気付くシーンとか、印象深い萌え場面はいくつもあります。
もう少し話が短い方が、その印象は際立ったかもしれない。Gavinがレスキューの2人の正体を知ったあたりでどんと切ってくれたら、★ひとつ上がったと思うんだけど、ちょっと話の尻が長かったですね。
痛みとか別れとか、そういうドラマティックなシーンを書くのは半端なくうまいけど、それ以外の淡々としたシーンを書きこなすのがこの作家の課題かなと思います。期待してますが。

クリスマスの奇跡が、ひびわれたカップルをふたたび結びつける。そんなロマンティックな話です。
アーサー王伝説と噛んでますが、とりあえずアーサー王の友人で頼れる騎士がランスロット、というところだけ押さえておけばいいでしょう。Gavinはガウェイン、Piersはパーシヴァルと、ほかの騎士の名前とも絡めてあるんだと思うけど。
苦悩と幸福の対比が鮮やかで、読みごたえがあります。いくつかマイナスポイントはあるものの、読後感もよく、骨太のクリスマスストーリーが読みたい人におすすめ。

★超常現象
★レスキュー

★Three-Star rating system★


[カテゴリ]View ALL
レビュー (314)
★★★ (90)
★★ (190)
★ (34)
モノクローム・ロマンス (10)
電子ブックリーダー (23)
iPodTouch・Stanza (19)
nook (4)
雑談 (84)
英語 (29)
文法 (4)
読書日記 (11)
…このブログについて (9)
…書店情報 (2)
[タグリスト]

09 | 2017/10 [GO]| 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

カテゴリ一覧 最近の記事一覧 プロフィール リンク一覧 メールを送る
[カテゴリ]


モノクロームロマンス(M/M翻訳)


■公式サイト■

・2017年
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas

・ほかにも出るかも
・王子とか何か売れてくれ〜(色々軽くピンチ)
・来年はもふもふやるよ!

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流
・夜が明けるなら(ヘルハイ3)

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター