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Boys of Summer
Cooper Davis
Boys of summer★★☆ summary:
Hunterは、親友Maxと恋に落ちた自分を知っていた。
だがMaxはゲイで、彼はストレート──少なくともMaxと恋に落ちるまで、自分がストレートだと思って、生きてきた。

もしMaxとつきあうのならば、友人や、周囲の人間に彼らの関係を隠しおおせるものではない。今のように親友としてすべてを覆い隠すことはできない。
Maxはそんな、暗い秘密のような扱いを受けるいわれはない。それはHunterにもわかっていた。

彼らはフロリダの海岸へと2人でバカンスに出かける。互いの気持ちをたしかめ、それをはっきりと認めるために。
Maxは長い間、その時を待っていた。Hunterに恋をした彼は、ほかの誰とも寝たことがない。そしてHunterの覚悟がはっきりと固まるまで、彼と寝るつもりもなかった。

友人たちから数千マイル離れたフロリダの海岸で、2人は互いと向き合う。
それが一瞬の夏の出来事で終わらないことを、彼らのどちらも知り、どちらも望みながら、その瞬間を深く恐れてもいた。
.....



ゲイとストレート(だと信じていた)の若者の話。
2人は惹かれあい、恋に落ちますが、まだ決定的な体の関係には至っていません。

Maxがちょっと古風というか、純情で、どうしてもHunterとの関係を「特別」なものにしたい。彼は隨分前にクローゼットから出て(=カミングアウト)、もう戻るつもりはない。だからもしMaxとHunterが関係を持つのならば、それは友人たちにすべてを明らかにするという覚悟の上でなければならない。
でもHunterは、Maxの存在、彼と最後の一線をこえることが自分の人生を変えてしまう、そのことに怯えています。Maxがいなくては生きていけないと思う。だけれども、この先に待つだろう人生の変化も怖い。

そのあたりの気持ちの揺れがHunterの視点から書かれた、非常にきめのこまかい物語です。
一夏の、濃密な思い出を作りながら、彼らはどちらも踏みこんだことのない場所へと踏みこみ、互いを変えていく。

夏の出来事を書きながら、同時に彼らの過去が描かれていきます。
Maxへの気持ちや自分がゲイである可能性を否定しようとするHunter、それでも離れられないまま2人は行き違い、ほとんど絶望的に求めあう。嵐のような感情と、痛みに近い葛藤。
カジュアルによそおったはじめてのデート、お互い同士を友人だと見せかけながらの夕食、ファーストキス──そしてそのキスひとつで、彼らは離れられなくなる。そんなふうに何よりも互いを必要としながら、最後の一歩を踏み出せない。
生々しく、痛々しい気持ちの揺れの重なりあいが丁寧で、なかなかに読ませます。

描写が繊細で、エロシーンにも独特の切羽つまった色っぽさがある。表現が詳細なわけではないんですが、生々しいというか、感情と体が剥き出しになった感じがあります。
中編くらいの長さで、全編を通してあやうい緊張感が張りつめている。
若者だからか「青春」っぽい繊細さもあって、「はじめて」シチュが好きな人や、迷いやためらいがある話が好きな人におすすめ。

続編「Taking You Home」が出てます。

★友情→恋
★はじめて

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Jacob's Ladder
Z.A. Maxfield
Jacob's Ladder★★★ summary:
Jacob “Yasha” Livingstonは、ほぼ人生最悪の日を迎えていた。
まず、風邪で具合が悪い。そして家に戻った彼は複数の男が恋人のベッドにいるのを見る。
恋人はもともと口より手が先に出るような男で、だがかつてイスラエルで従軍したこともあるJacobは自分の身は自分で守ってきた。その日までは。

散々叩きのめされて血の海に残された彼は、病院を出てすぐに兄のところへ行こうと長距離バスに乗る。だがバスの運転手はJacobの咳を嫌がり、彼を途中で放り出した。
モーテルにまではどうにか行きついたが、意識を失ってしまったJacobは救急に搬送される。意識を取り戻して、迎えにきてくれと兄に電話したが、週末までは行けないという返事だった。

そんなふうに、JacobのSt. Nacho'sでの暮らしが始まった。
そこには、彼を運んだ救急隊員の男、JTがいた。JacobとJTはどちらもユダヤ人だが、Jacobはユダヤ教徒であることとゲイであることの折り合いをとうの昔につけていた。
明らかに、JTはそうではない。彼はJacobに惹かれる自分を恥じている。

ストレートであろうともがく男、ゲイであることを認められない男との関係に未来はあるだろうか?
それともそれは、Jacobの新しい傷になって残るだけなのだろうか。
.....


St.Nacho'sシリーズ3。
Jacobのイディッシュ語(移民のユダヤ人が使うらしい)での愛称が “Yasha” なんだそうです。何で?と思ったけど、Jacobは読み方によっては「ヤコブ」ですね。多分アメリカでは普通に「ジェイコブ」と発音して構わないと思うんだけど。
タイトルの「Jacob's Ladder」は日本語ではヤコブの梯子、天使が上り下りする、天と下界をつなぐ梯子のことです。

JTはさわやかで魅力的でやさしい男だけれども、いざ己のセクシュアリティのことになるとひどく混乱しています。
Jacobを求めながらも、彼は日の当たる場所ではそのことを自分自身に対してすら否定しようとする。そしてその否定がJacobを傷つけたのを見て、自分も傷つき、さらに混乱する。

JacobにはJacobの問題があり、彼は暴力のある場所に惹かれる自分をどうにかしたいと思っている。彼と兄は暴力的な父親の元で育ち、力を合わせて母親を守ろうとした。兄は結婚しながら、「自分が父親のようにはならない」ことを証明しようとし、Jacob自身はどこか母親のように暴力の被害者としての立場に入りこんでしまう。
実際に殴られたことがあるかどうかではなく、それは自分に対してどこかしら投げやりになってしまう彼の生き方の問題なのです。

そんなふうに複雑なものをかかえた2人の男の人生が、このSt. Nacho'sで交錯する。
St. Nacho'sは不思議な場所で、ここに来た人に自分の人生を立ちどまって見つめるための「隙間」を与えます。シリーズの1、2でそうしてこの町にとらえられたCooperやJordanの近況がかいま見えるのもいいですね。
Jacobを雇うことになるパイの店の女主人は、Jordanのお母さんです。彼女も多くのものをくぐりぬけて、St. Nacho'sで人生を取り戻した。

相変わらずなごやかな町の様子もいいし、今回はサブキャラがなかなか立っています。兄とか、JTの同僚とか。
Z.A. Maxfieldはここんところ書く物が今いちハマらなかったんですけど、やっぱりこのシリーズはいいな。
静謐な描写が重なり合っていく感じの小説で、静かでいながらおだやかに賑わっている町の背景と、2人の心の交錯がうまくとけこんでいます。交わされるのは愛情や情熱だけでなく、傷や痛みでもある。

これ単独で読めますが、St. Nacho'sという場所の特別感を味わいたい人は1から読むのがおすすめ。いいシリーズです。
心理描写を読むのが好きな人におすすめ。

★家庭内暴力
★立ち直り

Out of Bounds
Viki Lyn
Out of Bounds★★☆ summary:
Titan Douglasは元アメフトのスター選手で、膝の故障で引退後は故郷の小さな町に戻り、地元の高校でアメフトのチームを教える日々に満足していた。
だが、彼は町の人々と少し離れた場所に1人で住み、家族にも誰にも言えない秘密を抱えていた。

彼はゲイだった。そしてそのことは、このまま墓場まで持っていく秘密になるはずだった。

Chandler Stoweは、長年の恋人の裏切りと破局に傷ついて、両親の残した土地がある故郷の町に戻ってきた。
ひとまず、高校の時間外授業で美術を教えながら、作品展に向けて作品を作ることにする。

そんなふうにして、2人は教師同士として出会った。
Chandlerは、深くクローゼットに入った男と関係を持つつもりはなかったし、Titanは、町の人間と関係を持つつもりはなかった。
それでも、彼らのどちらも互いに深く落ちていく。

だが、自分がゲイであることをオープンにするChandlerには、地域の人々からの偏見や憎しみのまなざしが向けられて…
.....



2010年の「Coming Out Day」を記念した、LooseIDの「カミングアウト企画」の1作です。

かつて一度、自分の人生をめちゃめちゃにしかかったTitanは、アメフトを引退し、その後の放浪からも身を引いて、今は故郷でのんびり暮らしている。彼は地元ではまさに「スター」で、「男の中の男」でもある。
アメフトのスター選手というのは、ある意味アメリカの男社会の頂点みたいなもんです。

Titanの9歳下のアーティスト、Chandlerは胸を張ってゲイとして生きてきた。彼は年上の恋人との破局で傷ついていますが、フェアで、芯の強い男です。

彼らは互いに惹かれて肉体関係をもちはじめますが、Titanは用心しようとしながらも、自分を抑制することができず、どんどんChandlerとの距離を詰めてしまう。
ゲイ嫌いの町の人に「ゲイとそんなに仲良くするのはやめた方がいい」と言われ、それをはねのけようとしながら、同時にTitanは「ゲイではないか」という疑いの目が自分に向くことも恐れています。恐怖や自己嫌悪、Chandlerへの気持ちが彼の中で完全に絡み合ってしまっていて、息苦しいほど。

ずっと年上の恋人の言いなりだったChandlerは、帰ってきた故郷でTitanと出会い、土地を買って自分の望むような工房を建てます。
今度こそここに腰を据えて生きていけるかもしれないと思う彼を、だが思わぬ災難が襲う。その災難は人の憎しみや偏見から出たもので、Chandlerは戦おうとするし、そんな彼をTitanは守りたいと願いながら、表立ってChandlerをバックアップするだけの決心ができない。

2人がそれぞれの人生の痛みや、今の状況に苦しんでいることが行間からよくあらわれてきます。
町の「スター」であるTitanがカミングアウトすれば、彼はこれまで築いてきたすべてを失ってしまう。Chandlerはそれは望まない。でも、そのままの状態で関係を続けていくことは、そんな「秘密の汚い存在」のように扱われるのは、Chandlerを深く傷つけています。

ラストシーンは鮮やかで、美しい。
カミングアウト物としてはバランスもよく、彼らを最後につないだ物がTitanのおじいさんの描いた風景画だったというのもひねりが効いています。
「アメフト選手とアーティスト」という組み合わせも萌え萌えで、カミングアウトに苦しむアメフト選手の図に萌える人におすすめ。

★カミングアウト
★差別

Rules of Engagement
L.A. Witt
Rules of Engagement★★☆ summary:
Dustin Walkerの結婚ははじめから失敗だった。10年の忍耐の末、ついに彼は離婚するが、それは母の怒りを買ってしまう。
みっともないから次の妻を早く探せとせっつく母親にうんざりしながら、バーに飲みに行った彼は、そこでビリヤードの名手、Brandon Stewartに出会う。

それは運命の出会いだったのだろうか。
Dustinはこれまで男に興味を持ったことがなかったが、Brandonのすべてが彼を惹きつける。

これは、恋なのだろうか?
それとも、押しつけがましい母や妻に嫌気が差したDustinが、そのリバウンドで、妻に似ていない──似ることの不可能な──相手を求めているだけなのだろうか。妻にかけらも似ていない、愉快で、心が広く、気持ちがこまやかな…男性。
どちらにしても、Dustinは決して家族にBrandonとの中を知られるわけにはいかなかった。母は卒倒するだろうし、弟のひとりはゲイに対する憎しみを普段から隠そうともしていない。もしDustinが男とつきあっていると知られれば、彼は家族を失うだろう。

だが、その日はやってくる。
DustinがBrandonと家族と、どちらかを失わなければならない日が。
.....



18歳で結婚してすぐに、Dustinはそれが失敗だったと悟ります。彼が妻と結婚した理由は主に、母親のお気に入りだったから。
彼はそれほど優柔不断な人間ではないけれども、母親に対してはどうしても弱い。力関係で弱いと言うより、母がとにかく自分の我を通そうとすると面倒になってつい多少のことは譲歩してしまう、という人生を続けてきたように見えます。

一方のBrandonは、ビリヤードの腕前に絶対の自信を持ち、大学で教鞭を取りながら人生を楽しんでいる。
彼は、Dustinが深く「クローゼットの奥に入っている」ことを責めはしない。
自分が男に惹かれることに驚き、とまどうDustinをゆっくりと包容していくBrandonは、家族に知られることを恐れるDustinの気持ちをよく知っている。Brandon自身、家族の中でもかつてとても近しかった兄を、カミングアウトによって失っているのです。
彼らの関係をとことん秘密にしようとするDustinの気持ちをよくわかって、Brandonはそれ以上を求めようとしない。やんちゃでちょっと傲慢なところもあるけどいい男だー。

一緒にいる時の彼らの様子がとても幸せそうです。二人とも口が達者で、軽口を叩きあっては笑いあっています。
そんな様子から、彼らに取ってお互いがかけがえのない相手であることがよくつたわってくる。ライバルで、親友で、恋人。
お互いに馬鹿みたいないたずらを仕掛けて、仕返しをして、盛り上がってるのも悪ガキみたいですごくかわいい。Dustinにとっても、Brandonにとっても、これは失えない恋で、だけれども状況は決して彼らにやさしくはない。
Dustinは家族にどうしてもBrandonのことを言えないし、この恋が離婚からのリバウンドではないかと、まだ心のどこかで疑っている。

心理描写がきめ細かくて、全体に緊張感を保ったまま、最後まで先がどうなるのかと惹きつけられる話です。Dustinがどうしてもカミングアウトできない様子にも説得力があるし、やがて彼のそうした態度がBrandonを傷つけてしまうのもよくわかる。二人でいるとすごく楽しそうなだけに、物事がこみいってしまった時の彼らの様子は痛々しい。お互いが好きなだけなのに、彼らのどちらも無傷ではいられない。
エロシーンもよく書けてます。エロはどうしてもワンパターンになりがちですが、話の中での二人の関係性を映すように、エロの最中でもお互いに強い感情のやり取りがあって、それが萌える!


28歳になってのゲイへの目覚めとカミングアウトが読みたい人におすすめ。
続編と言うか、後日談の「Rain」という話も出ていて、こちらも実に味わい深いです。お互いの絆だけでなく、家族のありかたや絆もテーマになっている話です。

彼らがやっているビリヤードは、よく知られたナインボールではなくエイトボールなので、その辺把握したい人はルールを最初に読んでおくとビリヤードシーンも楽しい。とりあえず、最後に8番を落とした人が勝ちで、落とす時にはどこのポケットに落とすか宣言するってことをつかんでおけば、勝ち負けはわかります。

★カミングアウト
★ストレート

The Dark Tide
Josh Lanyon
The Dark Tide★★★ summary:
Adrien Englishの人生は、やっと平穏の時を向かえたかのように思えた。
銃で撃たれ、心臓の手術を受け、生き延びた彼の前には、ついに新しい人生がひらけているはずだった。
彼が愛したかつての恋人、Jake Riordanはカミングアウトを果たし、Adrienと生きて行きたいと告げる。それはAdrienの望みでもある筈だった。

だが、Adrienには未来も希望も見えてこない。
Jakeとの関係を取り戻すことすら怖く、Adrienは彼を遠ざけながら、彼のことを考え続けている。
Jakeと一緒にいた10ヶ月、離れていた2年間、そして再会の時に得た、心臓が引き裂かれるような心の痛みを。

そんなある日、Adrienが本屋を広げようとして買い取った建物から古い骸骨が見つかり、彼はその調査をJakeに依頼するのだが…
.....



Adrien Englishシリーズ最終巻。Lanyonは「ぐずぐずシリーズを続けるのは作家の最大の失敗のひとつ」とか言ってる人なので、多分潔く最後だろうなあ。残念。
とは言え、最後らしく読みごたえのある一冊です。表面的には穏やかだけれども、頑固で意地っ張りで人を一定以上よせつけないAdrienと、ゲイである自分自身に苦しみ、憎しみを抱えこんでいたJakeのたどりついた、人生の1ページが鮮やかに描かれています。

前作でJakeがカミングアウトし、彼らのハッピーエンドは約束されたかのようでしたが、果たして、そんなにうまくいくものではありません。Adrienは傷ついた痛みを忘れることはできないし、Jakeをどこかで信じ切れていない。
それは愛しているがゆえの痛みですが、深い痛みを知ったAdrienは怖じ気付いている。

今回の読みどころは、Adrienの痛みや迷いとともに、Jakeの変化でしょう。Adrienは、不可抗力のもとでカミングアウトをせまられたJakeが怒りや後悔を抱え込んでいるのではないかと恐れるのですが、Jakeは落ちついている。それどころか、これまで彼が抱え込んでいた刺々しい攻撃的な態度もなくなって、彼はきわめて穏やかで、平穏です。
JakeがAdrienに「カミングアウトはお前だけが原因ではない」というシーンがあります。Adrienの存在は一因でありきっかけで、ですがJakeはこれまであらゆる道を探したのだと。女とつきあい、結婚して家庭を作ろうとし、欲望は表から見えない形で吐き出してすませようとした。勝手ではありますが、それは彼にとって血のにじむような模索の結果だったわけです。自分ではないものになろうと。
そのすべてに失敗し、彼は、自分が生きるにはもはや偽りのない人生しかないと知る。そこまでもがきつづけ、自分を否定しつづけた──そんな壮絶な苦しみが文章の間から見えてくるような一冊です。

相変わらず、Adrienの皮肉っぽいユーモアや、斜めすぎる視点は健在です。つうかますます磨きがかってますね。物腰柔らかそうでキツい男なのですが、彼がJakeのそばにいると自分のガードを自然におろせる様子がほほえましい。
ミステリの部分もおもしろかったし、切なかった。チャンドラーのセリフや映画があちこちにちりばめられていて、Lanyonのチャンドラーに対する憧憬も見える。チャンドラーが舞台にした時代(ほぼ)を今回のミステリの背景にしたのは、偶然ではないでしょう。

上質の読書なので、じっくりと何かを読みたいときにおすすめ。あちこちに味わい深いシーンがあります。
中で言及される "Joan of Arc" はジャンヌ・ダルクのこと。
これだけを読んでもわからないので、シリーズまとめておすすめです。

★50年前の殺人

With the Band
L.A. Witt
With the Band★☆ summary:
Aaron McClureは、バンドのメンバーと恋に落ち、彼らの関係と破局がバンドをも終わらせてしまう。
バンドメンバーと肉体関係を持つことほどまずいことはない。
その教訓を胸に刻み、彼はバンドと恋人の元を去って、故郷へ戻ってきた。

そこで待っていたのは新たなバンドのオーディションだった。
無事テストに合格し、兄と姉がメンバーになっているハードロックバンド「Schadenfreude」のリードボーカルとして迎えられたAaronは、このバンドが成功への道を駆け上がっていくことをほとんど確信していた。それだけの力のあるバンドだ。

その一方で、AaronはメンバーのBastianに強く惹かれていく。ほとんど息苦しいほどに。

バンドメンバーとの関係は、バンドに悪影響をもたらす。バンドのことを考えたら、Bastianとの距離は保っておかなければならない。
だが、もし…
.....



バンドもの。
ロックバンドの仲間がみんな仲が良く、かなりキツい冗談を飛ばしたりお互いを楽しく罵ったりして、「バンド」感がよく出てます。
ステージの上での緊張感もよく伝わってくる。

AaronとBastianとの間にある磁力も鮮やかで、一気に坂をころがりおちるように関係を深めていくスピード感が充分に味わえる1冊です。
特にキスシーンがなかなかに秀逸。とにかく相手を離したくない、離せない、バンドメンバーにばれないように早くみんなのところに戻らなければならないのに、どうしようもなく「one more kiss」をくり返してしまう様子がかわいい。

AaronもBastianも、互いの関係だけでなく、自分がゲイだということも兄弟や家族に秘密にしています。バンドに対して自分たちの関係を明かすということは、ゲイであるとカミングアウトしなければならないことも意味する。
バンドは少しずつ成功への道をのぼりつつある。そんな時に水を差すようなことを言いたくはない。でもどこかからばれる前に言わなければならない、それはわかっている。複雑に絡みあうプレッシャーの中で、「いつかは言わなければ」と思いながら、「いつか」を先のばしにしてしまう様子はリアルだと思う。

ただ、後半の展開がちょっと解せないまま、消化不良に話がまとめあげられた感じで、終わり方が唐突です。うーん。複雑な感情を書くのはうまい作家なので、その技が見られなかったのは残念。
色々と納得できないところが残ってしまって、ちょっと宙ぶらりんな感じですね。勿体ないなあ。2人だけの問題ではなく「周囲の」問題でもあるんだけど、そこがそのまま棚上げされてしまっているのが消化不良。

ロックバンドの疾走感とか、それと同じペースで恋に落ちていく2人の様子を読むのが楽しい1冊。エロシーン多し。切羽つまったギリギリのところで相手に手をのばし、しがみつく、そんな刹那の濃厚さがいいです。
BastianがAaronにベースを教えるシーンもエロティックで印象深い。

バンドもの好きな人におすすめ。秘密の関係に萌える人にも。

★エロ多め
★バンドもの

Foxe Hunt
Haley Walsh
Foxe Hunt★★☆ summary:
SkylerFoxeミステリ2

高校の英語教師Skyler Foxeは、命からがら殺人事件を解決し、臨時のフットボールコーチアシスタントのKeith Fletcherとも、ついにうまくいきそうだった。
Keithとのデートや、朝のコーヒー。どれもSkylerにとってははじめての経験だった。

25歳のSkylerは、散々遊び歩いては来たが、いわゆる「ボーイフレンド」的なつきあいを1度もしたことがない。
いざ足を踏み入れてみると、居心地はいい一方で、常に逃げ出したいような気持ちにもかられて、Skylerはとまどっていた。

そんな時、彼は古い友人のEvanとJeffに出会う。イラクからの帰還兵である彼らは、体も心も傷つき、行き詰まっているように見えた。
心を痛めたSkylerだったが、何もできずにいる内に、恐ろしい出来事が起こってしまう。

学内でおこった教師の転落事件はまだ解決しておらず、「ボーイフレンド」のKeithにはまだミステリアスで、疑わしい部分も残る。
生徒のひとりはゲイ支援のサークルを立ち上げようとしてSkylerに協力を求めるが、Skylerは教師の職を失うことを怖れてカミングアウトには踏み切れず…
.....



前作「Foxe Tail」の続編です。次の「Out-Foxed」で完結の3部作ミステリ。
それぞれに大きな謎は解決されつつ、別の謎が持ち越されていくので、1冊読み終わるとすっきりしますが、次も気になる。上手な構成です。

私は前作をちらほら読み返してまして、Skylerのキャラが好きです。遊び人で軽い、教師の職にはとても真面目。親切だけどちょっとお調子者で、感情に正直。
何か、「いい奴だなあ」って感じがする。「善人」的ないい人ではなく、ドジふんでるのを見ながらちょっと笑って「あいつ、いい奴だなあ」って言っちゃうような感じ。
ああだこうだ考えながら、1度は決心しても、その決心が揺らいでしっぽを巻いてしまったり、そんな自分を嫌悪したり。人間くさくて底が明るいキャラクターで、読んでて結構気持ちがいいです。
Skylerの友達連中は、みんな1度はSkylerの遊び相手(寝る相手)だった男たちなんだけど、彼らがお互いみんなでうまくやっているのは、何となくSkylerを放っとけないからなんだろうなーという気がひしひしとする。またいい友達なんだ。ちょっと口が軽かったりするけど。

そんな友達連中と、謎の「ボーイフレンド」Keithと、久々に再会した友人と、Skylerの学校の生徒たちと。
話はそのへんをぐるぐる回りながら、Skylerの日常を中心にして進んでいきます。生徒とのやりとりもなかなかおもしろくて、GSA(Gay-Stcaight Alliance)というゲイ・ストレート同好会みたいなの(ゲイの生徒をサポートするのが目的だと思いますが)を立ち上げようとする生徒に対して、Skylerは自分がゲイにもかかわらず、参加やサポートにたじろぐ。彼は学校でカミングアウトしてないから。
そんな自分を偽善者だと思うし、勇気がないことを恥じる。あやまって、生徒になぐさめられたりして、いい先生です。

Keithとのつきあいも、Skylerにとっては一大事。デートに誘われて「おごってもらうべきか、割り勘か。誘われたんだからおごってもらうんだろうけど割り勘の方がよくない?」と悩みまくったりとか、いちいち大変。
まあ、何度か足を踏み外しながら、がんばってます。

ものすごく印象の強いシーンがあるとかではないのですが、ミステリ部分も興味深く書かれてるし、全体に渡って筆致が明るく、時にコミカルで、読み味がいい1冊です。
じたばたしつつ前向きに進んでいく主人公が可愛い。
ユーモアミステリの好きな人におすすめ。2だけでも何とかはなるけど、1から読む方が無難です。

★がんばる主人公
★初めてのデート

★Three-Star rating system★


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・2017年
・7月 ヘルハイ3巻
・夏 雑誌短編
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas
・冬 雑誌短編
・ほかにも出るかも
・不甲斐なくてごめん

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター

 
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