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Slash(m/m小説) レビューブログ

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[タグ]キャラ:弁護士 の記事一覧

Paul's Dream
Rowan McBride
Paul's Dream★★ summary:
Paul Grahamの人生はくっきりとして、シンプルであった。弁護士として働きながら、さらなるキャリアを目指す。
誰とも深い関係を結んだことがなかったが、興味もなく、彼は自分の今の人生に満足していた。

淫魔のKianは魔道士にとらえられ、下僕となっていたが、ある時その牢獄を1人の人間が訪れる。
人間はあっさりとKianの鎖を解き、彼を解放して、消えた。
自由になったKianはその男を探し、人間界へと入りこむ。あの男はとてつもなく強力なDream walkerだ。なのに自分が夢の中を歩いているということすらわかっていないようだった。

Paulは、いきなり目の前に現れた美しい男にとまどう。Kianを救った覚えなど、彼にはない。
一方のKianは、Paulが彼になびこうとしないことに仰天する。人間はインキュバスの力には抗えない。だがPaulは、Kianの魅力にまるで気付きもしない様子だった。
──KianがPaulにふれるまでは。

Kianの情熱はPaulの心の壁を押し崩し、情熱に火をつける。
Paulは人生の新たな面を味わっていた。喜び、欲望、そして幸福。そして彼の炎は、Kianにもそれまで知らなかった充足を与える。
だが、Paulの奥に秘められた謎も、忘れられた夢も、彼らを放っておいてはくれなかった。
.....



現代ファンタジーというか、舞台は現代で、夢と魔法をテーマにした話。
その中でもちょっと変わっていて、夢をどう解くかがポイントです。
あとはインキュバスと人間の甘エロな関係が、じつに濃くて楽しい。

Paulは覚えていないけれども、彼は眠っている間、人の夢の中で色々な謎を解きながら生きている。他人の謎を解き、その問題を解決するのが彼の人生です。
たとえば、そんな夢のひとつで、Kianを解放したように。

Kianはただ、自分を解放してくれた人間に一時の快楽を与えようとしてPaulに近づくけれども、予期せず恋に落ちていく。
インキュバスは恋をしない。する筈がない。そういう生き物ではない。
ならこの気持ちは何だろう?と、彼は彼なりに考えこむ。
一瞬の快楽を求めながらとんでもないほど長い時間を生きてきたくせに、意外と純情なインキュバスです。

うわべは冷ややかで、何にも心を動かすことのないPaulの壁をKianの情熱が溶かして、ラブラブになっていく様子がかわいい。その絆はPaulの人生に光を当て、その光でPaulははじめて自分のことを見ます。欠けた記憶。欠けた夢。そしてなおもPaulの中にある、凍りついた壁。
Paulの中には大きく欠けた部分があって、それを見つけ出していくのが物語のひとつの核となっています。Paulは人の謎を解くけれども、Paul自身の謎はこれまで手付かずだった。

全体にドラマティックで、魔力の存在とストーリーがうまく絡み合っています。
Kianは恋に落ちて幸せだけれども、一方でPaulの存在は彼の弱みとなる。Paulにも、恋はそれまで知らなかった苦しみや痛みを味わわせます。Kianの姿を見失うたびに、彼は苦しむ。
恋は幸福なことばかりではない。それでも2人でいることには深い喜びがあって、そのためなら弱さも痛みもその価値がある。
Paulの心の謎を解くことは、彼を殺しかねないけれども、Kianのために彼はそれを乗り越えなければならないのです。

シリーズ化するみたいな感じですね。
エロありドラマあり魔法ありで、キャラも一風ユニークですがしっかりと強い輪郭を持って書かれています。ニューヨークの守護者、天才魔道士Asherの話が読みたいな。
ちょっと変わった話が読みたいとか、人間にめろめろのインキュバスに萌え!という人におすすめ。

★謎解き
★現代ファンタジー

Thirty Days
Shayla Kersten
Thirty Days★★ summary:
Biton Savakisはニューヨークに住む42歳の裕福な弁護士である。
だが彼の人生は今や危機に瀕していた。10年にわたって彼のそばにいたErikを、3ヶ月前に癌で失ったのだ。
ErikはBitonの恋人であり、そして何よりも、従順で愛しい奴隷であった。

根っからのDom(主人)であるBitonは、それ以来喪失と、飢えにさいなまれていた。
誰かを支配したい欲望はあるが、クラブで誰を見てもそういう気持ちにはなれなかった。
そんな彼を見かねた友人が、傷ついて途方に暮れているSub(奴隷)を彼に紹介する。
迷い、自分ではどうすることもできないまま主人を求める奴隷、Cavan。Bitonは彼を30日間の契約で引き受けた。
それは喪失から気をそらす助けになるだろうし、もしかしたらまたBDSMの世界へ戻る足がかりになるかもしれない。

だがCavanはただのBDSMの奴隷ではなかった。
彼は、養子制度の隙間からこぼれおちて人身売買のシステムの中で売り飛ばされてきた、犯罪被害者であったのだ。
痛みと恐怖しか知らず、闇雲に主人に従うことしか知らない彼を、Bitonはその闇から救い出せるだろうか。
.....



10年以上のパートナー兼奴隷を癌で失ったDomと、現代式奴隷制の被害者でトラウマ持ちの奴隷の、30日の物語。

Cavanは里親の間をたらい回しにされる間、いつのまにか「奴隷」として訓練されて売られる存在になっていました。
彼はほかの生き方を知らず、支配するだけのマスターしか知らず、奴隷としての自分しか知りません。

Bitonも「マスター」であるけれども、彼とかつての「奴隷」のEricの間にあったものは豊かで深い、人間的なつながりです。支配することで愛情を示す者、支配を受け入れることで自分自身を解放し、完全に相手にゆだねる者。奴隷は主人を信頼し、主人は奴隷を支配しながら守り、彼らは対となる。
Cavanはそんな関係を知らない。ただ支配されることしか知らない彼は、ほかに生きる術を知らないから「主人」をほしがるだけで、その生き方は彼の選んだものではない。
BitonはそんなCavanをどうするべきかわからないけれども、もちろん、Cavanを見捨てることもできません。Bitonは犯罪を告発し、犯人をとらえる手助けをし、Cavanをカウンセラーに見せる。

彼らは2人とも迷っています。Bitonは愛するEricを失って人生の意義すら見失っているし、Cavanには何もかも理解しがたいことばかり。
わりとさっさとエロい関係になるのですが、それが解決にならないことは明らかです。セックスはその瞬間の迷いを吹きとばして体を満足させるけれども、何ひとつ変えることができない。
Cavanは迷える奴隷のままで、Bitonはそんな彼を支配の対象にはできない。Cavanが心底望まなければ、彼はBitonの「本当」の奴隷にはなれない。そして奴隷になれない相手を、Bitonはそばに置きつづけてはいられません。
どうしたらいいのかととまどい、もがく、両方の気持ちがよく書かれていると思います。

痛々しい奴隷と困りきった主人の話ですが、ちゃんと犯罪捜査やカウンセリングなど現実の側面も入ってきて、話にほどよい厚みがあります。
奴隷側からの「支配されたい」欲求を書いた話は多いけれども、主人側からの「支配したい」欲求、その切迫感を書いた話は珍しいので、そのあたりも読みどころ。Cavanにもちゃんと自立の気配が見えてきている、そういうラストも好感が持てます。

トラウマものが好きな人、主人/奴隷関係が好きな人におすすめ。

★BDSM
★人身売買

Only For Him
Shawn Lane
Only For Him★★ summary:
法律事務所でアシスタントとして働くBarnaby Lassiterは、事務所の弁護士の1人、Nathan Llewellynに惹かれていた。
だが、彼はどうしたらいいかわからなかった。
何故Nathanのような生真面目な、社会的地位のある人間がBarnabyに興味を持つだろう? 髪を染め、逆立てて、ピアスをして化粧をした若者に?
実際、Nathanの目にはBarnabyのことなどうつってないようで、彼らはまともに話をしたことすらなかった。

ひどいインフルエンザでベッドから起きられず、事務所に電話したNathanは、書類を届けにBarnabyが来ると聞いてうろたえていた。
Barnabyは今のNathanが一番会いたくない相手だった。
あのゴージャスな青年のそばにいると、Nathanはまともな口も利けなくなる。まるで初恋に落ちたティーンのように、目を合わせることすらできない。

思い悩みながらNathanがドアを開けると、そこにはBarnabyには見えない、だがたしかにBarnaby本人が立っていた。あの金髪と化粧はどこに行ったのだろう?
Nathanには、何故Barnabyが変わったのか、変わろうとしているのか理解できない。

彼らはまるで違う世界の、違う人間同士。誰が見ても似合いのカップルではない。
だがそんな差をのりこえて、2人は自分たちの恋を育てることができるのだろうか?
.....



opposite attraction、というやつがテーマですね。渋谷系の若者と堅物の弁護士(しかも眼鏡)、10歳差って感じでしょうか。
渋谷系っていうよりビジュアル系入ってる気がしないでもないんですが。

なかなかにBarnabyがかわいくて、彼はNathanが自分を見てくれない!と思い悩んだ末、兄に相談して、「Nathanが相手にしそうな人間」になってみることにする。髪染めと化粧を落とし、社会人らしい格好なんかしてみたりして。
でも、実はNathanは元の、奔放なBarnabyが好きなのです。自分にそういう自由さがないことを知っていて、過去から臆病になっているNathanは、人生を楽しむBarnabyの存在に惹かれている。
噛み合っているようで、噛み合わない2人です。

かいがいしくNathan看病しつつも、病人が寝てると飽きちゃうBarnabyの勝手さとかもかわいらしく書かれています。だってNathanが寝ちゃっててつまらないんだもん!みたいな、その感じがBarnaby。
看病のお礼に夕食をご馳走するよ、とNathanに言われれば天にも昇る心地だし、でもその後何の音沙汰ももらえないと土砂降りに降られたようにへこむ。
そんな活発なBarnabyを見ながら、Nathanは「彼が自分を好きになるわけがない」と勝手に決めている。

Nathanの「常識的なところ」がつい口うるさい注意の形で出たり、積極的に出てみたもののNathanがいつ「やっぱりやめよう」と言い出すのではないかと不安なBarnaby。
お互いの差そのものよりも、その差を気にする自分たちの心の内にこそ恋の障害があるようです。

短めで、ほどほどのアップダウンがあって可愛い一冊です。気楽な読書がしたい人におすすめ。
ここの弁護士事務所は、群像劇風のシリーズの舞台なんだと思います。ほかの本はまだ読んでないんだけど、そのうち読もうと思います。

★正反対の2人

Nine-tenths of the Law
L.A. Witt
Nine-tenths of the Law★★☆ summary:
“I believe you have something of mine, Zach.”
Zach Owensはバーで見知らぬ男からそう挑まれ、とまどうしかなかった。
彼の物を持っているだろうと言われても、Zachは目の前の男をまるで知らない。

だがZachの恋人、Jakeは相手の顔を見て顔色を変えた。
彼らは他人ではなかった。4年間の恋人同士だったのだ。

知らずに他人の恋人を寝取っていた事実をつきつけられて、Zachはひどい罪悪感にさいなまれ、立ち去っていく相手の男を追いかける。ただ謝罪したかった。そんなつもりはなくとも、彼を傷つけていたことにかわりはない。

相手の男の名はNathanと言った。おかしな出会い方をした2人は、そのテンションのままに一夜を共にして、別れる。
数日後、Zachの経営する映画館にNathanが姿を見せ…
.....



人の恋人を寝取ってしまった男と、寝取られて激怒している男の話。
彼らをつなぐのは2人を裏切っていた誠意のない男。でも憎しみに満ちた筈の出会いは、予想外の方にころがっていくのです。

同じ男に裏切られていたと知った彼らは、互いに惹かれるものを感じて関係を持つようになるのですが、Nathanが人を信頼していないことにZachは段々気付いていく。Nathanには恋人に裏切られた過去が──今回だけでなく──あり、そのため、Zachが仕事で遅くなったりデートをキャンセルしたり、電話に出なかったりすると、その裏にある物をすぐに疑ってしまうのです。
また裏切られるのではないかと。
疑われるたびにZachはとまどい、傷つく。

カジュアルなセックスフレンドならともかく、ある程度の関係になってくると信頼は重要です。信頼のない関係は長続きしない。
ZachはNathanに信頼されたいけれども、どうしたらいいのかわからない。Nathan自身にも、人をすぐに疑ってしまう自分の気持ちをどうしようもないのかもしれません。

誠実なZachの性格がなかなかいいです。場末の映画館を友人とともに買い取り、掃除をしてきれいにメンテナンスし、ギリシャの劇場の名前を付けて経営に精を出す。言うことを聞かない映写機をがんばって修理し、だらしのない従業員を解雇して溜息をつく。そんな毎日。
誰に対しても彼が誠実に接しているのがわかるだけに、何故Nathanが彼を信じられないのか、不思議になるほどです。

しかし信頼の問題をどうにかNathanが乗り越えない限り、彼らに未来はない。Zachは、永遠に疑われながら関係を続けていくことはできない。
どれほど好きでも。好きだからこそ。

「Nine-tenths of the Law」ってのは所有に関して定められた法律のようで、「実質的に所有していれば所有権がある」みたいなことらしい。
2人を手玉に取っていた男があんまり魅力的に見えないのはちょっと残念かな。ZachもNathanもいい男だから、彼らがだまされた相手はもうちょっと魅力的な方がうれしいなあ。でもそうなると話がまた複雑になるか。

L.A.Wittははじめて読んだのですが、凝った設定で人間関係をひねって話を始めるのがうまい作家です。人と人との間の緊張感が高くて、気持ちのねじれがおもしろい。
マイナス感情からはじまる人間関係が好きな人におすすめ。

で、この「Nine-tenths of the Law」をうっかり2冊買ってしまった(カートを行き来してる内に2冊入ってたらしい…)ので、1冊今週中にプレゼントします。うかつであった。

★恋人の恋人
★信頼関係

Winter Wolf
S.P. Wayne
WinterWolf.jpg★★☆ summary:
Axtonはゲイだと理由で父親の群れを追い出され、故郷を追われて、今は人里離れた静かな山のキャビンで暮らしていた。
自然に囲まれた、静かな暮らし。狼として走り回り、人の姿を取ることはむしろまれだ。
人と話すことは、もっとまれだった。

そんなある日、隣のキャビンにLeander Avilezがやってくる。
人間とどう接していいかわからないAxtonだが、Leanderの明るさは彼を惹きつけ、離さない。数回の滞在で、二人の距離はぐっと縮まっていった。
人間の、それもストレートの男に恋を?
それ以上に最悪なことがあるだろうか。

だが、あったのだ。
Leanderは冬の嵐がこようという時、またキャビンを訪れる。Axtonが冬をキャビンで越しているから、自分もできると思ったのだろうか。
だがこの小屋は、人間が冬を越せるようにはできていない。Axtonは冬を人狼の姿ですごすのだ。
降りしきる雪の中、Leanderをどうにかして守ろうとするAxtonだったが……
.....



人狼ものはどうしても似た設定が多くなる中、「これはちょっと違う!」と聞いて読んでみました。
本当に違った!

いやあAxtonの不器用な人狼っぷりというか、人間にあやしまれずにつき合おうとする努力が実にいたいけです。
「握手?握手は右手を出すんだよな?」「サンドイッチ?そうか、人間はハイキングの最中にウサギをつかまえて食ったりしないな!」「靴!靴なんかどこにやったっけ?」などなど。ひとつずつうろたえるAxtonはものすごく不審だと思いますが、Leanderは結構細かいことを気にしない男で、鷹揚に接している。
そんな中で、Axtonはこの人間の男に絶望的な恋に落ちていくのです。

ほぼすべてのストーリーがキャビンと、その周囲の自然の中で進んでいきます。この自然描写がなかなか素敵で、Axtonが狼の姿で駆け回って、テリトリーの中の動物たちに気持ちを向け、春には若い獣を狩らないようにしたり、飢えた山猫の子供たちに獲物を投げ与えたりしている姿もほのぼのとします。
楽しそうだし、Axtonが自分のテリトリーに心を砕いている様子がよくつたわってくる。人間としては不器用ですが、彼は世界を愛している。人間のことだって嫌いではない、ただどう接したらいいかわからないだけです。
それにしても、狼の姿であんな自然の中を走り回ったら本当に楽しいだろうなあ。

雪のキャビンに二人でとじこめられてしまい、「うっかり変身したらどうしよう!」と緊張しまくるAxtonがなんとも、本当に、かわいいです。深刻なシーンもありますが、全体にニヤニヤしながら読んでしまった。
二巻ではどうもこのAxtonが都会に出かけるようで、「大丈夫か?本当に大丈夫なのかお前?」と今から心配で仕方ないです。いや、あんな子をそんな怖いところに出したら絶対駄目ですよ。

変わった人狼ものが読みたい人、かわいい人狼が気になる人、人狼と人間の恋に萌える人におすすめ。

★人狼(ゲイ)/人間(ストレート)
★人見知りの狼

Stranger on the Shore
Josh Lanyon
Stranger on the shore★★★ summary:
20年前、幼かったBrian ArlingtonはArlington家の邸宅から忽然と姿を消した。
やがて身代金要求の手紙が届き、差出人は逮捕されたが、Brianは戻らなかった。
よく知られた、大富豪のArlington家の悲劇である。

その悲劇はずっと眠ったままであったが、何故かArlington家の当主がジャーナリストのGriff Hadleyを邸宅に招き、その事件をテーマにした本を書いてほしいという。
滅多にない幸運に、Griffはとびついた。

家族たちの多くは、Brianの悲劇を忘れたがっている。だが年老いた当主はGriffを温かく歓迎し、自由に調査する許可を与えた。
一方、弁護士のPierce MatherはGriffに対して、敵意もあらわな態度を取る。

20年前、幼い子供の身になにがあったのか。犯人は今、獄中にいる男ではないのか?
調べていくGriffの身に、不穏な出来事がふりかかり……。
.....



古い、子供の誘拐事件を追うジャーナリストと、それを眉をひそめて見張っている弁護士。
昔の事件、掘り起こされる敵意、対立する二人、とLanyonさんの得意技がそろってますよ!

いくつもの謎がストーリーの中にちりばめられてます。子供をさらったのは、本当に逮捕された男なのか? そうなら子供はどうなったのか? 殺されたのか? 死体はどこに隠されたのか?
もしほかに犯人がいるのなら、それは誰なのか。その人物はまだ、この壮大な邸宅に、富を蜜のように吸いながら、暮らしているのか……。その謎とGriffの疑心が絡み合って、緊張感が増していく流れがさすがです。

Griffはそれほど名のないジャーナリストですが、「この事件を調べて本を書いてくれ」という誘いにとびつき、これを自分の未来を変える大きな飛躍にしたいと思っている。とても有名な事件だが、Arlington家はその金と権力で自分たちを守り、これまで取材などに応じたことがなかった。
それが何故、20年も経って? そして何故、Griffが選ばれたのか?
その謎をかかえながらも、彼はできるかぎり誠実に、そして果敢に事件の糸をときほぐそうとしていきます。時に自分を疑い、時に家族たちから向けられる敵意にたじろぎ、時に自分の過去に刻まれた傷を隠そうとして必死になる。
迷いながら、それでもあきらめない。派手なキャラではありませんが、けなげさにぐっときます。

一方、Arlington家の弁護士Pierceは、一家に対して何らかの不利益が生じることを案じ、Griffに対して刺々しい態度を取る。
鉄板だな!
いやいや、この人たちの対立と、その一方でPierceが時おり見せる動揺とかひび割れとか、実に萌える。勿論(勿論!)二人は対立しつつも惹かれ合うのですが、惹かれながらも互いに相手を信用できない、そこがまたいい具合に陰影を落としています。

ミステリ部分の構成も美しくて、Lanyonさんは過去への郷愁を書かせると特に手腕を発揮する作家さんですが、今回のこの「20年前の誘拐」というテーマも彼の個性を非常によく生かしていると思う。
派手ではないけれども、隙のない、いい雰囲気のミステリに仕上がってます。

Lanyonさんファンなら鉄板だし、ミステリが読みたい、骨格のしっかりした話が読みたい時にお勧め。

★20年前の事件
★敏腕弁護士

Rescued
Felice Stevens
Rescued.jpg★★☆ summary:
Ryder Danielsは心に傷をかかえていた。
愛したはずの男は、彼よりも、ドラッグを選んだ。
今のRyderにとって、弁護士として関わる闘犬の保護活動と、弟の存在だけが支えであった。

だが母親は、Ryderがゲイであることを憎み、Ryderが弟に会うのを許そうとしない。
残ったものは仕事だけであった。

Jason Malloryはもう何年も付き合ってきた女の恋人にうんざりしていた。結婚するか別れるか、と迫られた時、Jasonは初めて自分が彼女を愛していないことに気づく。
別れてさっぱりしたJasonは、しばらく恋などするつもりはなかった。仕事だけで充分だ。
だがある日、工事現場に残されていた傷ついた闘犬たちを保護グループに通報した彼は、応じて駆けつけてきた男に目を奪われていた。

Jasonは一匹の犬の里親となり、それをきっかけにして、彼とRyderは心を許し合った親友になっていく。
親友以上のものになれるはずがないと、Ryderは知っていた。ストレートの男に恋をして何になる?
だがある夜、Jasonは自分がRyderに対して欲望を持っていることに気づき……
.....



犬(ピットブル)の保護活動をしている弁護士と、建設会社の社長(ストレート)の男の話。
カプだけでなく周囲のキャラの感情もよく書かれていて、それぞれの大きな人生の転機をうまく描き出した話です。

闘犬はもちろん違法なんですが、やはり地下で行われているという話は聞いたことがある。また闘犬に使われやすいピットブルは人気の犬種な一方、大きくなると持て余して捨てる飼い主も多いのです。そうすると野良になり、中には人間に対して凶暴になる犬もいる。
そんな、見捨てられた犬たちを保護するのがRyanの属するボランティア組織。Ryan自身も里親のひとりです。

Jasonも、自分の建築現場にいた犬の一頭を飼うことになり、「犬同士がとりもつ縁」で二人の距離が近づいていく。犬かわいいし、犬にめろめろな男たちはいいね!
Ryderは前の男との別れ方がよくなかったので、恋に対しては及び腰です。誰かをまた信じる気にはなれない。犬は裏切らないから、と犬に愛情を注いでいるふしもある。
だからJasonと恋(のようなもの)が芽生えはじめても、どこか信じきれない。ストレートだと思って生きてきたJasonが、家族に、兄弟に、社員に、社会に対して自分の恋人は男だと言えるのか、認められるのか。そしてそれを、Jasonの家族は受け入れてくれるだろうか?

ゲイ×ストレート話のお楽しみ、「カミングアウト」は今回もドラマティックで盛り上がります。でもJasonはいい男だからな!新しい経験にちょっとうろたえたりしつつも、何が自分にとって大事なのかを見失うような男ではない。
だからといって、すべてがうまくいくわけでもないですが。でもこの二人なら乗り越えられそうな雰囲気が話全体に漂っていて、ちゃんといい感じに「大人の恋」なお話です。

Ryderが愛する、でも母から会うことを禁じられた弟との仲も、ちゃんとJasonが取り持ってやる。この「お前の問題は丸ごと俺の問題だ」という包容力というか、地にどっしりと足がついている感じが読んでいて安心できます。
この作家さんは去年デビューなのかな?なんだか新しい人らしいのですが、キャラクターが愛情深くて、ちょっとほっこりしていて、この先も期待大。
大人の、ほろ苦いけれども甘い恋物語(犬つき)を読みたい時に。


★闘犬
★ストレート

★Three-Star rating system★


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■公式サイト■

・2017年
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas

・ほかにも出るかも
・王子とか何か売れてくれ〜(色々軽くピンチ)
・来年はもふもふやるよ!

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流
・夜が明けるなら(ヘルハイ3)

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター