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[タグ]キャラ:奴隷 の記事一覧

Many Roads Home
Ann Somerville
Many Roads Home★★ summary:
Sardelsa大公の息子Yveniは、父親の死後、義理の兄の罠を逃れて命からがら故国を離れる。
あと2年たって19歳になれば、彼は法定年齢に達し、その時こそ国に戻って自分の継承権を主張し、簒奪者である義兄と対決することができる筈だった。
それまで身を隠し、力をたくわえるしかない。

姿をやつし、身分を偽り、密輸業者とともに船に乗ったYveniは、船の難破で連れを失って一人ぼっちになってしまう。
たよれる者がいる国まではまだ遠い。どうにか商隊とともに旅に出るが、道中でさらわれ、奴隷として売られる羽目に陥った。

Paoleは子供の頃に奴隷業者にさらわれ、売られてからずっと奴隷として生きてきた。いい主人も、悪い主人もいた。
だが最後の主人は思いやりがあり、Paoleに人の治療をする能力が生まれつきそなわっていることを知ると、彼に教育を施した。そして自分の死とともに、Paoleを解放した。
自由になり、村から村へと治療の旅を続けながら、だがPaoleは自分の内側に埋められない孤独を感じていた。
長い冬を1人の小屋でこす前に、彼は市場で奴隷を買う。1人でも、苛烈な運命から救い出せればいいと思ってのことだったが、その相手が本当の奴隷ではなくSardelsaの世継であると知り、Paoleは怒りにかられる。

YveniとPaole。2人の運命は奇妙な形で絡み合い、その中で、Yveniは国に戻って使命を果たそうともがくのだったが…
.....



作者のAnn Somervilleはサイトで素晴しいエンパスのシリーズを書いていて、彼女が商業デビューしたことが、私が商業スラッシュを買って読むようになったきっかけでした。
相当な筆力のある作家で、芯の通った設定とストーリー、キャラの間にあるテンションや、時に相手を傷つけずにはいられないほどの価値観のせめぎあいが読みどころです。
なかなか商業では彼女独自の持ち味を発揮できずにいるように見えましたが、「Many Roads Home」では2人の登場人物の生き方を、ファンタジー世界を舞台に鮮やかに描き出しています。(電話とかあるんで、ファンタジーと言ってもまたちょっと毛色がちがう感じですが)

Yveniは姉や妹を故国に残して、遠い国で奴隷として売られる。Paoleは奴隷を助けて、ついでに旅のつれになってくれればいいと思って大枚はたきますが、Yveniは彼にとって憎い国の人間だった。そして、奴隷ですらなかった。
なかなか本当のことを言わないYveniをPaoloは信頼できず、YveniはPaoleからどうにか逃れようとする。
2人のいきちがいと、激しい対立、やがてわかりあうまでに至る日々が丁寧に書かれています。

国を逃げた時にはまだ弱々しい、我侭で高慢な部分もあるYveniは、色々な苦難の中で自分の知らなかった世界を知り、成長していきます。
Paoleは彼を厭いながら、その中にあるしなやかな強さに惹かれていくけれども、いずれYveniが国へ戻り、自分の手の届かない存在になってしまうだろうこともわかっている。
故国からさらわれ、奴隷として異国に育ち、Paoleには戻る場所がない。そんな彼にしてみれば、Yveniの中にある理念や理想が、ひどくまぶしく見えるのです。

この作者の作品はディテールが細かいこと、設定が非常に骨太であることが特徴で、ファンタジーとかSFとか、非常にうまい。
今回もPaoleの(Yveniと出会う前の)村から村への旅と、その中で感じる孤独や、Yveniの逃亡の日々が細部に渡って書かれています。
スラとしての2人の関係というよりは、他の登場人物も含めたそれぞれの生き様と選択、それが交錯するさまがメイン。

そういう、ファンタジー世界のディテールを読むのが好きな人におすすめ。
作者のサイトではかなりの量のフリーストーリーが読めますので、こちらもおすすめです。とりあえず「Darshian Tales」を読むのがいいかな、と。

★ファンタジー

Dark Heart
Thom Lane
Dark Heart★★☆ summary:
Amaranthの国の旅人ギルドは、繰り返し何者かに襲撃されていた。
ある夜、魔道士Lucanが嵐を逃れてギルドの屋敷を訪れ、屋敷の奴隷であるTamは彼に仕えることになる。

魔道士は誰もが恐れる存在であったが、その中でもLucanは特に恐しく見えた。闇よりも暗く、強烈な力と意志を持つ存在に。
Tamはベッドの中と外の両方で彼に奴隷として仕えながら、Lucanの冷厳さに惹かれていく。
だが奴隷は未来のことを考えない。過去のことを考えない。彼らにはその一瞬ずつの人生をやりすごして、その時々に目の前にいる者たちにつくしていくだけだ。今をこえた望みなど、身にすぎたことだった。

Lucanはギルドにたのまれて襲撃事件を調べはじめ、Tamは彼につき従って手伝う。
LucanはTamをしきりに呼びつけ、つれ回し、ベッドに入ればTamを抱くが、それ以上の個人的な興味を見せる様子はない。ただ道具のように彼を使うだけだ。
奴隷と主人、その関係の中にTamは自分の思いをとどめておくしかない。そしてLucanが去っていけば、また次の主人に仕えるしかない。
それが、盗賊としてとらえられ、奴隷の烙印を押された時にさだめられたTamの運命だった。
.....



書店的には「BDSM」のカテゴリに分類されてますけど、そういうわけではありません。主人/奴隷で支配と服従の関係ではありますが、それは人間関係であって、この話の性的嗜好はわりとノーマルです。
ただ、「奴隷」というもののありよう、その心の向きの特殊さが実によく書かれています。それがおもしろい。

この世界での奴隷はどうも、1度奴隷になったら解放されたりしないらしい。
Tamは、決してひよわでもなく、むしろはねっかえりで反骨精神にあふれた少年なのですが、こと主人に対する服従となるとそこには鉄の規律があって、つねに主人やギルドを自分の上に置いています。たとえ直接の命令に反して、罰せられる時でさえも。
彼の迷いのない忠誠を一身に受けながら、魔道士LucanはTamを時に冷たくあしらったり、生意気な物言いや反論を鞭で罰したりする。
奴隷をしつけるのは主人の権利でもあり、義務でもあって、それは自分の体面のためだけではなく奴隷のためでもあります。奴隷はきちんとしつけられてふるまう限り、奴隷としての人生をまっとうできますが、その規範を踏み越えた奴隷にはさらに厳しい人生が待っているからです。

Tamが、新しい奴隷が馬車を引いている姿を見るシーンがあります。Tamはその奴隷の中にまだ反発があるのを感じ、やがて彼も落ちるだろうと思う。「ある日、必ずその時がやってくる。鞭が怖いから主人に従うのではなく、ただ従うために従う、そういうふうになっている自分を知る」のだと。
そのことを悲しんだり、痛みをもって振り返っているわけではない。単純にそういうものなのだ。それが自分におきたことであり、他の多くの奴隷におこったことであると、Tamは知っている。
いつかその新しい奴隷も、Tamのように根っからの奴隷となる。そうなればもう戻ることはできない。

そのあたりの特殊さがリアルに書かれていて、おもしろいです。
彼らの力関係を踏まえた上で、LucanとTamとの間に生じる感情や軋轢、決して口には出されない思いなど、なかなか巧みに書かれています。
ファンタジーらしさも満載で、LucanがTamをつれて地獄の門をくぐるシーンなど見所も多い。それにしてもLucanはTamを悪魔との取引にさし出しちゃったりするんだ。鬼ですな。
それでもLucanが好きなTamがかわいいやら、かわいそうやら。

ファンタジーや主従ものが好きな人、「傲慢攻め×けなげ受け」の組み合わせにぐっとくる人におすすめ。
シリーズ続編の「Healing Heart」では、彼らのバカップルぶりも楽しめます。

★主従(奴隷)
★ネクロマンサー

The Sheikh and the Servant
Sonja Spencer
The Sheikh and the Servant★☆ summary:
奴隷のNooriは遠い北の海を越えた向こうの民だった。周囲の人々と違うきゃしゃな体つきと白い肌、金髪と青い目からも一目で明らかだ。
父親の死後、借金のためにamir(アラブの首長や王族のこと)に買われた彼は、そこで人の快楽に奉仕する日々をすごしていた。
ある日amirの客として訪れたとあるsheikh(同じく族長)の接待に割り当てられ、彼は熱心に相手に尽くした。
いつか親切な男が彼を買い、今の生活から這い出せるかもしれない。それがNooriの夢であったが、かなわないこともどこかで悟っていた。

だからそのsheikhが旅立ちの前にNooriを買ったと聞いて、彼は驚いた。
sheikhは滞在の間、Nooriの体に指一本ふれなかったのだ。

Shahinというのがその男の名前だった。彼のために、Nooriはすべてを賭けて尽くそうと思う。
だがShahinは、奴隷を得ようとして彼を買ったのではなかった。
Nooriは奴隷の立場から召使いとなり、Shahinによって自分の意思や決断を持つことを求められる。それはNooriにとってとまどうばかりの、だが新鮮な暮らしだった。
そんな日々の中、Nooriの心はShahinを求めるが、寡黙な男は相変わらずNooriにふれようとせず…
.....



アラブ風のファンタジー。日本ではよく見るけどスラでは珍しい気がしますね。
全体にほのぼのとした雰囲気と、淡々とした話運びで、のんびり読める感じです。

Nooriがけなげで可愛い。奴隷の立場を必要以上に恥じたり悲観したりもせず、でもふってわいた幸運には涙を浮かべるほど喜ぶ。まだ子供っぽい、純なところが残っています。
彼はすぐShahinに恋に落ちて、それをほとんど隠そうとしませんが、肝心のShahinが何を考えているのかよくわからず、彼の一言ずつに右往左往してしまいます。
懸命に生きながら、新しい人生に出会って、少しずつNooriが希望を持ちはじめ、持ち前のしなやかな明るさを発揮して場をなごませる、その様子がほほえましい。

ShahinはNooriの知性や品格を見て、快楽奴隷にしておくのは勿体ないと自分のところにつれていき、彼に「自分の判断」を持たせようとします。
それまで奴隷としてひたすら人の言うことだけに従ってきたNooriに、人として自立する道を教えようとする。
そんな日々の中で彼もまたNooriの細やかな心遣いや、優しさに惹かれるが、自分の立場を使って無理強いするようなことは決してできないと、心の深くにそういう気持ちを封印しています。
これがまた寡黙と言うか、ほぼ用事以外はしゃべらない男で、族長としての責任をすべてに優先させるあまり、重荷を背負いすぎているのではないかと周囲に心配されている。前の妻が死んでから、彼が身近に近づけたのはNooriだけなのです。

寡黙な族長とけなげな奴隷、という鉄板カプで、いじらしいというか何ともじれったく話が進んでいきます。
手をつないでるだけで盛り上がったり、微笑を見るだけで幸せになったりしつつ、一向にちゃんとくっつかない。いい感じのじれったさです。

アラブ系の話が好きな人、けなげな奴隷が素敵な主人に買われる話がツボの人におすすめ。エロ少な!ですが、そこが楽しいんだ。
居心地がいい、読み心地がなんとも可愛い話です。

★アラブ
★奴隷

Healing Heart
Thom Lane
Healing Heart★★ summary:
Corynは、魔術師たちの中でも非常にレアな、癒しの才を持っていた。
旅の途中、道で流行り病にかかった奴隷の少年に出会った彼はその病を癒してやり、彼の新しい主人となる。

それは少し変わった奴隷だった。明るく、Corynに命を救われたことに忠誠心を感じ、魔術師を恐れない。そして、最近まで自由人であったためか、奴隷としての振る舞いをわきまえないところがあった。
Corynはその奴隷をRaffと名付け、自分の助けを必要とする町へと足を踏み入れた。

そこは、疫病に冒された地であった。

人は次々と死んでいき、その中でCorynは自分の力を尽くして救えるものを救おうとする。
だがそれは出口のない道であった。
自分の命を削るようにして癒しの技を行うCoryn。彼を、Raffは奴隷の範疇を踏み越えて守ろうとするのだが…
.....



Tales of Amaranthシリーズ2。
奴隷たちの、服従を当然のように要求され、物のように扱われる立場が非常にきめこまかく書かれたシリーズです。
Corynは魔術師の島(秘密の島で、魔術師は一人前になるまでトレーニングされるらしい)から出てきたばかりの癒しの術師で、奴隷の扱いを忘れていることもあって、非常に甘い主人です。根本的にやさしい気持ちの持ち主でもある。
そんな彼でも、Raffが一線を踏み越えた時は容赦しない。主人の言いつけに背いた時、主人の言葉を途中で遮った時。
奴隷が逆らうのは他人に対する主人の恥でもあり、奴隷をしつけるのは主人の義務である。奴隷は2度と自由人には戻れない以上、奴隷としての生き方をきちんと学ぶことが、その先の人生をたやすくするからです。

そういう、絶対的な奴隷の立場の描かれ方が読んでいておもしろいのですが、Raffの場合は前作の奴隷とちょっと違っていて、彼はほんの3年前まで自由人だった。
だからこそ、あまり悟ったりあきらめたところがなく、どこか奔放な部分を残しているのだけれども、このRaffがまるで主人に反発せず、奴隷としての立場に完全に甘んじているのはちょっと違和感あるかもしれないな。もう少し、葛藤を残しつつもCorynの飴と鞭を使い分けたしつけっぷりにほだされちゃう、なんて感じの方がしっくりきそうな気はします。

疫病の町で、1人でも多く助けようともがくCorynの姿は詳細に描かれています。
でも彼の力は尽きていく。それでも戦いをやめようとしない、若い魔術師の姿は凛々しくて素敵。それをどうにもできないRaffの無力感もいいコントラストを出していて、萌えます。
そうした疫病との戦いや、彼らの心理が事細かに書かれた話です。

奴隷の立場が非常に低い世界での、主人と奴隷の絆は、あからさまな愛情を示すことなく、それぞれの奇妙な形を取ります。
彼らは決して、「奴隷」と「主人」という立場を踏み出すことはない。でもその中で、誰よりも親密な絆を作るのです。
絶対的な格差の上で成り立つ愛情が、一風変わった感じ。いくら愛していても、Raffが生意気な態度をとれば、Corynは迷わずに罰する。

前作のカップル、魔術師のLucanと奴隷のTamが重要な役で出てきていて、彼らの絆の形も見せてくれます。傲慢なLucanと、彼にめろめろだけど生意気なTamの組み合わせも可愛い。
でもそんなTamでさえ、立場をわきまえて、決して主人が罰しなければならないようなことはしない。奴隷歴の短いRaffは、油断するとうっかり罰を必要とするようなことをしてしまう。これは年期の差かな。

ファンタジーの世界が事細かに描き出されていて、独特のリアリティがあります。
ファンタジー好きな人、優しくて年若い主人と、まだあぶなっかしい奴隷の組み合わせに萌える人におすすめ。

★主人/奴隷

Hidden Heart
Thom Lane
Hidden Heart★★☆ summary:
Tales of Amaranthシリーズ3。

Tiffinは奴隷だった。
奴隷商人に売られ、High Holdという古い砦に送りこまれた彼は、奴隷として労働と奉仕の日々を送り始める。
Zanderという名の兵士に出会い、支配的で強引なこの男に惹かれたが、奴隷の身ではTiffinの意志や望みなど何の価値もなかった。すべてはZanderの意志と望みだけにかかっている。

だが、High Holdに来てすぐに、Tiffinの身に異変がおこりはじめる。
誰か、Tiffinの体の中にいる何者かが彼の意識を乗っ取り、動き回っている。その何者かは、この砦の中に封じられた何かを探しているようだった…
.....



奴隷の視点からファンタジー世界を書いたシリーズ3冊目。
1と2は読んでなくても独立して読めます。わずかに1のカプが顔を見せてますが、わからなくても問題なし。ただ、この世界の当たり前のように「奴隷は奴隷でしかない」という独特の価値観をしっかり踏まえてから読んだ方がおもしろいと思います。

この世界では、奴隷は「奴隷」という範疇から決して踏み越えることはない。誰かに解放されて自由になれるとか、そういう可能性はないのです。
それがここの価値観であり、システムで、誰もがそれを当たり前と感じている、その独特の雰囲気が読みごたえのあるシリーズです。ファンタジーならではのうっすらとした「異界」感がちりばめられている。

今回は、奴隷のTiffinにふりかかる危難の話で、わけもわからずZanderになつこうとするTiffinの気持ちの動きが哀れでちょっといじらしい。奴隷だというのにあまりにも無邪気で、簡単に傷つきそうなので、読みながらハラハラします。
ZanderはZanderで、Tiffinに対して愛情はあるようなのですが、それでもあくまでTiffinは「奴隷」であるというところからは決して外れない。奴隷は永遠に、誰にとっても──当人にとっても──奴隷であるのだという、切ない部分まで描かれた1作です。
Tiffinが幸せならいいんだけど、恋の形は色々だなあ。ハッピーエンドである一方、ちょっとした寂寥感の残るラストでした。

魔法の世界と奴隷と、ファンタジー好きならかなり楽しめます。1や2の方がストーリーはドラマティックでしたが、その分この3は読みやすく仕上がってますね。

★軍人×奴隷
★記憶喪失

Captive Prince 1
S.U. Pacat
CaptivePrince.jpg★★★ summary:
Akielosの世継ぎの王子Damenは、腹違いの兄に裏切られ、父王を殺され、自分は奴隷として隣国のVereに売られる。
王子Damenはすでに死んだものとされ、彼はただの奴隷として鎖をかけられ、貢ぎものとして海を渡った。

AkielosとVereの二国の間には深い因縁があった。Damen自身、かつて二国の戦場で敵国Vereの王子を一騎打ちの末に倒したことがある。
その死はVereを大きくゆさぶり、まだ幼かった第二王子が第一継承者となり、その叔父が摂政としてそれ以来Vereの実権を握っていた。

Damenの新しい主人は、その第二王子──次のVereの王となる若きLaurent。
兄を殺したAkielosの人間を心の底から憎む男。氷のような王子。

尊厳を奪われた一人の奴隷として、Damenは退廃したVereの王宮で生きのびようとする。いつか国へ戻る日のために。
だが、Vereの王宮に渦巻く陰謀が彼をも巻きこみはじめ……
.....



ブログに連載されていたものがペンギンに買われてメジャーから出版されることになり、今年ちょっとしたセンセーションを巻き起こしたファンタジーシリーズです。今2まで出ていて、来年出る3で完結予定。
ペンギンから出たら変わると思うんですが、とりあえずアマゾンキンドルのリンク貼ってあります。1と2で表紙が同じなのでせめてナンバリングをっ……(キンドルの上で見分けがつかぬのです)

国を奪われて奴隷として売られた王子様、というのは箇条書きにするとよくある設定ですが、この設定を実によくこなしています。
Damenの誇り高く、国を離れても自分の民を守ろうとする男の心意気が格好いいんですよ。

Damenの主人となったLaurentは謎めいている。ひどく冷たい、残酷なだけの男にも見えるし、摂政の叔父に対して子供っぽい反抗心を剥き出しにしているだけのようにも見える。21歳かな、老成した雰囲気も漂わせるし、策略家でもある。
Damenは、はからずもそんなLaurentを誰よりも近くから見ることになる。

二人の間にある緊張感が実に冷たく、時にお互いの憤怒に満ちていて、読みごたえがあります。彼らは敵国(今は同盟を結んでいますが)の者同士としての敵意と、主人と奴隷としてのいびつな関係の中で、最初は互いの姿がまるで見えない。
ただ支配しようとし、ただ抗おうとする。それはパワーゲームです。
そこから少しずつ、互いを一人の人間として見るようになっていく。
キャラクターの描写がとても丁寧で、それぞれのエピソードに基づいているので、その変化にも説得力があって読んでいると実にじれったく萌え萌えできます。
二国の文化差もおもしろい。体の美を重んじるAkielos(ここは古代ギリシアがモデルになっているのではないかと)と、王族は肌を見せずに過剰に装い、退廃した宮殿文化を誇るVere(古代ローマの饗宴がモデル?)。読み進むにつれ、それぞれの国の雰囲気が段々とわかってくる。


1巻では二人の出会いから、Vereの宮殿内の力のバランスを描き、Damenの立ち位置を明確にしていきます。そんな中で後々重要になっていきそうないくつかの物事もあって、先が楽しみな展開。
非常によく練られた話で、ファンタジー好きでもそれほどでなくとも楽しめる一冊になっています。
続き物ですが話にゆるみがなく、2巻になると一気に人間関係も展開も怒濤の展開を見せます。1の段階だとほぼエロはなしに近いのですが、二人の間にある緊張感は充分エロいぞ。

それぞれの立場で、それぞれの敵と戦っている二人の男が、立場の差を越えて相手の中に尊敬できる「男」を見つけ出していくのです。しかし見つけたところで未来はない!というのも大変おいしい。
ファンタジー好きなら鉄板の一冊、敵からほだされていく展開や、身分差(ちょっと複雑だけど)好きならやはり鉄板です。おすすめ。

★本格ファンタジー
★敵同士

★Three-Star rating system★


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・2017年
・後半 王子二巻
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・ほかにも出るかも
・王子とか何か売れてくれ〜(色々軽くピンチ)
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・狼を狩る法則
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・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
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*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
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・恋人までのA to Z
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