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[タグ]キャラ:作家 の記事一覧

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Somebody Killed His Editor
Josh Lanyon
Somebody Killed His Editor★★ summary:
Holmes & Moriarityシリーズ1

40歳のミステリライター、Christopher Holmesは作家人生の岐路に立たされていた。彼が長らく書いてきたシリーズの売り上げが落ち、エージェントから「もっと時代に即した、売れるものを書かないと」と強く言われる。
エロティックなものや吸血鬼やらが出てくるもの。一体どうやって?

エージェントのすすめで、彼はとある作家の集会にしぶしぶ参加する。そこに来る出版社の人間に新しいシリーズのアイデアを買ってもらわなければ、作家としての彼のキャリアは行き詰まったも同然だった。
問題は、彼にはまるで新しいシリーズのアイデアがなかったこと、さらに切迫した問題は、集会のあるロッジにたどりつく前に女の死体に行きあたったことだった。

橋が落ちて、誰もそのロッジから──嵐がやむまで──出ていけない。まるで推理小説の舞台のようなその状況で、Holmesは思わぬ男と顔をあわせる。
J.X. Moriarity。元警官のベストセラー作家。
10年前、週末をともにした相手。ただ1人、彼を「Kit」と呼ぶ男。
そしてJ.X.は、Christopherを殺人の容疑者として部屋に軟禁すると言う…
.....



Moriarityと言えばモリアーティ教授かと思いきや、あっちの綴りは「Moriarty」らしい。でも当然、あの2人を念頭にしたキャラですね。性格はかけらも似てない(似せてない)と思うけど。
古典のミステリのスタイルを踏まえつつ、それを使って現代のスラにしてみた、というユーモアミステリです。

外界から閉ざされたロッジ、嵐、正体不明の殺人者、2つ目の死体、主人公にかけられる嫌疑──と、古典的なミステリの要素がたっぷりつめられています。作者のLanyonは非常にテクニカルな作家なので、色々とほかにも計算されているにちがいないと思いますが、私はミステリの原書を読んだことがほとんどないのでどこまで何を踏襲しているかわからないのがちょっと残念。
あと時事ネタとか、実在する人の名前とかが散見されますね。「セーラームーンのフィギュアか」とか、そういうツッコミしかわからない自分がちょっと切ない。わかる人なら10倍は楽しめるでしょう。
でもそれはそれとして(得意技でスルーしつつ)、おもしろく読んだ一冊です。

主人公のChrisはかなり悲惨な状況です。ずーっと書いてきたシリーズが打ち切りになるかもしれない。古典的なミステリというのはもう求められていないのかもしれない。
マーケティング、すべてをひっくるめた「パッケージ」の問題なの、とエージェントは言う。小説そのものはもはや問題ではないのだと。
それで嫌々、作家の集会に出てくるわけですが、落ちていく橋を命からがら走りきり、死体を見つけ、うっかりJ.X.とよりを戻したと思えば「気の迷いだった」と言われる。挙句に新シリーズの話なんかそりゃもう、砂上の楼閣です。ていうかこの人がでたらめに話す新シリーズネタが、実際無茶苦茶なんですが。

踏んだり蹴ったりの状況下、Chrisは持ち前のユーモアで周囲をさらに苛々させていく。それも、主にJ.X.を。Chrisは繊細だけど相当に図太い。
J.X.はどうもChrisを守りたいと思っている様子ですが、10年前の逢瀬の時の出来事を許してもいないし、でもChrisに惹きつけられる自分を否定もできない。
J.X.のChrisに対する人あたりにも、相当にきついものがあります。

この2人の関係がなかなかいい。J.X.は5つ年下で、かつてはChrisを憧れの目で見ていた新人の後輩だったのに、久々に会ってみたらえらい皮肉屋で悠然としたベストセラー作家になっていて、Chrisは正直落ち着きません。そりゃそうです。それにしてもJ.X.は魅力的。
作家と元警官、というのは同作者のAdrien Englishシリーズにも似た流れですが(あっちは作家志望の本屋と警官ですが)、あれほどヒリヒリした、さわると怪我しそうな切迫感はありません。J.X.はゲイである自分を否定してないしね。
それだけに、反発しあいつつも、ひとつ転がれば2人で幸せになれそうな感じがあって、読んでいるとじれったくも楽しい。

J.X.はずっとChrisが好きだったんだろうなー、それで怒っているんだろうな、というのがあちこちに滲み出ているのに、当のChrisが鈍いのもかわいい。セックスなら別に平気だけど、それ以上のところに話が及びそうになるといつも慌ててはぐらかそうとするし。
そういうつもりはないのについつい事件をつっついてみるChrisを、J.X.は本気で心配し、苛立っている。でもそんなJ.X.をChrisは助けたり、最後のしっぺ返しをしてのけたりする。いい組み合わせの2人です。

ミステリ部分も、やはり古典ミステリへの敬愛をこめてだと思いますが、基本パターンにのっとっているのでわかりやすい。
わりと軽めに楽しめる一冊。
古典ミステリやユーモアミステリが好きなら勿論、「10年ぶり」とかに萌える人にもストライクだと思います。

作中に「Elementary, my dear..」という決め台詞がありますが、これはホームズの「Elementary, my dear Watson」(初歩だよ、ワトソン君)からのものです。
ほかにもそういうのいっぱい隠れてるんだろうなー。
しかしdearとか入ってたのね、ホームズの台詞。萌える。

★ミステリ(古典系)
★再会

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Sins of the Father
D.W. Marchwell
Sins of the Father★★☆ summary:
Charlie Kirbyには過去があった。
彼の父親は人を殺し、刑務所で死んだのだ。

42歳になった彼は高校の教師をしながら、父親が入っていた刑務所でボランティアとして、囚人に高卒資格を取るための勉強を教えていた。
そんな彼に、Caleb Farmerという老いた囚人が手助けを求める。手紙を書きたいと。40年会っていない息子へ。

Calebは40年近く昔に妻を殺し、それからずっと刑務所で生きてきた。長い罪の時間を経て、彼は自分がどれほど愚かでどれほど周囲を傷つけたか悟り、それを謝りたいと思っていた。
彼の息子は事件の時にまだ6歳で、母が殴打されて死ぬ音をクローゼットの中で聞いていなければならなかった。Calebは彼に向けて手紙を書きたいが、文字の書き方を知らない。
そこで、自分の代わりに手紙を書いてほしいとCharlieにたのむ。

CharlieはCalebに文字を教え始めた。2人で一緒に手紙を書きながら、Charlieはその「息子」の行方を探す。
その探索は思わぬ形で彼の人生にはねかえり‥‥
.....



あえて、あらすじではいくつかの大きな要素を省いてあります。
これは導入がすごくうまい本で、まずは学生時代の若いCharlieからはじまる。父親の罪を背負うように生きてきて、他人との間に壁を作ろうとしているCharlie。
でも彼は変わります。
そのへんについても書きたいんだけど、書いてしまうと読む楽しみが半減する気がするので、割愛。すごくテクニカルな導入部だと思う。

本編の大部分は現代で、Charlieは42歳になっています。刑務所で出会った囚人のたのみを聞こうとして動き出す彼ですが、囚人と息子との間を結ぼうとする彼の行為は、ただの親切心ではなく、もっと切迫したところから出ている。
かつてCharlieは、服役している父親に毎週会いに行ったけれども、父親は彼に一度も会おうとしないまま死んだ。決して修復されることのなかった自分の家族の絆を、Charlieはこの囚人と息子のケースに重ねているようです。

Charlieはとても繊細で考え深く、ちょっと考えすぎるほどの人で、彼の慎重な視線のひとつひとつが過去の物事や人の心の動きを浮かび上がらせていく。そんなに神経質にならなくても!とつっこみたい時もありますが、その気配りが彼の魅力であるのもわかる。
また書き方がなかなかうまくて、盛り上がるまでは心理の動きが事細かに描写されている一方、物事の火花が散る時には、動作や表情、セリフを中心に淡々とつづられる。そこに至るまでの彼の気持ちを知っているので、読む方は、息をつめるようにしてその瞬間の彼の痛みやたじろぎを想像してしまう。
色々なことがよく計算して書かれた話だと思います。

やがて、彼の人生にはJamesという男が入ってくる。彼とCharlieの関わりはドラマティックで深く、2人ともに複雑な過去と現在に搦め捕られて、自由に動けない。その様子がもどかしくて読みごたえがあります。
ともに生きていきたいのであれば、彼らはそれぞれに過去の影から抜け出さなくてはならない。
この小説は痛ましい過去を重荷として描くだけではなく、過去や痛みのピースが「現在」を作っているのだという肯定の部分も大きい。振り返るだけでなく、前に進むための物語です。

色々な過去が絡み合う導入から中盤までは圧巻で、少し中だるみするかなーという感じがありますが、後半には静かな緊張感が戻ってきます。登場人物の誰も声高ではないのに、そこからにじみ出してくる痛々しさはクリアにつたわってくる。
Jamesの視点からのシーンがもうちょっとあればいいかなーとか、ラストでもうちょっと「手紙」についてJamesがどう思ったか知りたいなあとかありますが、過去の罪に対する人の心の動きが丁寧に描き出された物語だと思います。
すべてが丸くおさまったわけではない、そのあたりのさじ加減が憎い。読み終わった後、気持ちが動いて後を引く本です。
しかし3つ差のカプなんだけど、「younger man」とやたら年の差を強調するのは何なのだ。作者の萌えか。

人は、過去と和解しなければ前に進むことが出来ない。
罪とか過去とか、そういうテーマが好きな人に。スラ成分もちゃんと入っている、味わい深い話です。

★父親の罪
★手紙

In and Out
L.B. Gregg
※出版社の問題で一時的にリンクを外してます。
In and Out★★★ summary:
Men of Smithfieldシリーズ4。

作家、探検家、有名テレビ番組のナビゲーターであった Holden Worthingtonは、今や自分の家から一歩も外に出ることができなかった。
二年前、彼の名声をすべて滅ぼしたあの一件から。
豪華な家に1人で住み、金にも仕事にも困らなかったが、彼は家の囚人だった。

打ち捨てられた庭の手入れのために、1人の若者が働き出した時、Holdenの世界はふたたび動きはじめる。

Adam Morganは謎めいた若者だった。Holdenのジョークに笑わず、常に警戒を崩さず、黙々と働く彼の姿は、Holdenの中に久々の感情を呼びさます。不器用でピュアなAdamの姿を眺める時間はHoldenにとってかけがえのない息抜きだった。
だが、Adamが裏庭から掘り出した一体の死体が、Holdenの世界の安定を脅かす。静かだった暮らしに警官が立ち入り、ふたたびニュースとゴシップのネタにされ、彼は追いつめられていく。

そんな中、二年間家から出たことのないHoldenを、Adamは車に乗せて表に連れ出し…
.....



Men of Smithfieldシリーズですが、どれも独立して読めます。シリーズ全体に出ているのはresident trooperのTony。(resident trooperって、コネチカット州の一部で保安官の代わりに使われている駐在システムのようです)
ユーモアとテンポがよく絡み合ったスピーディな展開のシリーズですが、今回はいつもより真面目。あちこちおかしいけど。
広場恐怖症の40歳Holden Worthingtonと、24歳の庭師Adam Morganの話。

2人とも、それぞれに影を持つ。
Holdenの影はかつての栄光とそこから落下した痛み、それによって彼が陥った恐怖症。
彼はきわめて陽気でユーモアにあふれ、現状をそれほど嘆いているわけではない。
とは言え、世界からひきこもった彼の時間はとまっていて、そのユーモアは緊張やネガティブな感情の裏返しであることも多い。一種のヒステリーというか。
どこか強迫観念に追いかけられているところがあって、世界を回って集めたレシピをアルファベット順に毎日作り、家の中でワークアウトを行う。

一方のAdamは、人の感情や言葉の裏を読むのが苦手です。
それは病のたぐいではなく、何かで手ひどく傷ついてから人と距離を離し、その裏にあるものをできるだけ見ないようにしているAdamの立ち位置であるようです。なにしろ段々とHoldenに気持ちを許すにつれ、Adamは誰よりもよくHoldenの内面を読むようになるからです。
そして彼は、Holdenを守ろうとするようになる。
HoldenもAdamの存在で変わりはじめるけれども、AdamもまたHoldenの存在によって変わりつつある、それが行間から見えてくるのがいい。

そんな2人の世界を揺らすのが、裏庭から出てきた死体。
町の勝手な噂ではそれはHoldenを2年前に陥れた前の恋人で、Holdenが彼を殺して埋めたのだと言う。
家から出られない自分がどうやって?とHoldenはうんざりしつつその元恋人にコンタクトをとり、町の人間に姿を見せるようたのむけれども、現れた元恋人の様子がおかしいし、しまいには姿を消してしまう。
しかも、離婚協議中でHoldenの家にころがりこんでいる兄も、何故かいなくなる。

Holdenの家はたくさん部屋があって、普段は静かなのに、殺人事件をきっかけに人が入り乱れます。なのに、Holdenが必要とする時には誰もその姿を見せてくれない。
事件はまるでHoldenを犯人と指し示しているようだけれども、勿論Holdenは自分でないことはわかっている。
では、誰が?

Holdenが家の中から見る自然の描写──傾いた陽の光や夜の霧、花の色や芝生にあたる陽の反射などが本当に美しくて、失われた外界への憧憬が鮮やかに描き出されています。
Adamに対する彼の強い気持ちもそうで、彼はAdamから土の香りや太陽のぬくもりを感じる。ふれて、味わってみたい。それはほとんど本能的な衝動です。
広場恐怖症の人間が庭師に恋に落ちると言うのは、なかなか深いものがあります。

テンポが速く、軽いユーモアがあちこちにちりばめられていて、読んでいて楽しい一冊。ほぼ家だけに舞台が限られているのですが、それをうまく逆手にとって、5日間でおこる変化がつづられています。

エロもあるけどエロばかりじゃないよ、という話が読みたい人におすすめ。
テーマは重いようですが、この作者独特の軽みとキャラのしぶとさがあって、読んでいる感じも読後感も軽やかです。

★広場恐怖症

After Arsenic and Rio
D. J. Manly
Arsenic and Rio★★ summary:
Arsenic and Rio」の続編。

少年だったMarshall Callettiだが、あの事件から10年が経ち、彼は償いを終えて社会に復帰していた。
今や小さな画材屋を持ち、恋人と家を買って一緒に暮らしている。

かつて社会からドロップアウトして犯罪に手を染めたあの少年からは想像も付かない、満ち足りた生活の筈だった。
だが、Marshallは夢を見つづけていた。
Angelo Farelliの夢──Marshallが愛した、そして殺しかけた男。
リオで2人ですごした、あの白い砂浜の記憶。

解決した筈の事件が、Halの仮釈放申請によって過去からよみがえる。
仮釈放反対の証人としてMarshallは証言を求められた。そしてその証言の場に、Angeloも証人として来ると言う。
.....



Arsenic and Rio」の続編で、前の事件から時が経った2人の話です。
愛した男を殺しかけた過去を、Marshallは忘れることが出来ない。大人になって、自分の人生をしっかり生きながら、彼はAngeloの夢を見つづけていて、それを今の恋人は快く思わない。
彼は、MarshallがまだAngeloを愛していること、いや、Angeloこそが愛したただ1人の男であることを、どこかで感じているのでしょう。

再会したMarshallとAngeloの間には、まだ愛がある。どちらも相手を忘れてはいない。
でもそれは、彼らがやり直せると言うことではない。Angeloは、自分を裏切り、殺しかけたMarshallを許し、信頼することが出来るのかどうか。
信頼できないまま体だけをつなげても、彼らには未来があるのか。

Marshallの感情の強さがきめ細かく描かれていて、あの痛々しかった前作の少年を思うと、とても応援したくなります。
もうちょっと2人の葛藤について、段階を踏んで書いてあってもよかったかなあと思いますが、後半はややサスペンス風味なので、感情的な葛藤はそちらに呑み込まれがちかも。でも再会の情熱と、そこにある痛みの鮮やかさなんかは見事です。

Angeloの芯にある強さや誇り高さが、後半の展開でしっかり描写されていて、前作で「典型的ないい男」という感じだった彼に個性が出てきたのはすごくいい。
そんなふうに強さを持つ彼なのに、あの事件の後、アルコール中毒に陥った彼には、今こそMarshallが必要です。強い男のそういう脆さっていうのもいいなあ。

前作ほどのボリュームはありませんが、「あの後の2人が気になる!」という人におすすめの1作。2人だけでなく、悪党Halの行く末もわかります。こいつほんとに悪党だなあ。
前作を読んでからでないと、単独ではわかりにくいです。実はシリーズ物だと気付かずこっちを先に買って読んでいたのですが(途中で気付いて1冊目を買いに行った)、前提がないとストーリーはわかるのですが、キャラの感情に置いていかれがちです。あっちの書店ってシリーズ物表記しないところが多いよね…

★再会
★許し

The Beach House
Shawn Lane
The Beach House★★ summary:
若い美貌のモデルMason Adamsは、パーティやセックス、ドラッグまみれの生活にぼろぼろになり、すんでのところで命をとりとめた。
エージェントはリハビリとして、海岸そばのビーチハウスで一夏すごすように手配する。テレビもなし、車もなし、電話もなし。のどかすぎる田舎での暮らしに、Masonははじめる前から退屈していた。
隣の家に住むJohn Hardingと顔を合わせるまでは。

John Hardingは、兵士としての人生を足の負傷で失ってから、犯罪ものの小説を書いて生計を立てていた。生活に不自由はなかったが、心のどこかが満たされていない。
隣のビーチハウスにやってきた都会的で美しい男に目を奪われたのは、そんな日のことであった。

だが、この夏が終わればMasonは去っていく。
一夏だけの、わずかな楽しみ。
夏が終わって2人に残る物は何だろう。
思い出か、心の傷か、それとも…
.....



20代前半の若くて美形のモデルMasonと元兵士のクライムノベル作家Johnの、出会いと、夏の恋の話。
Masonのどこか投げやりなはかなさと、Johnの保護者的な愛情が読んでいて楽しい一冊です。

Masonはとにかく美しい。JohnははじめてMasonを見た時、「あんなにきれいだと人生大変そうだな」と思うのですが、それくらいきれいで、顔のおかげでMasonは誰かにちやほやされて生きてきました。
その一方で、Masonはそのことに浮かれ騒いでいるわけではない。いや、多分浮かれ騒いで日々をすごしてきたんだろうけど、彼の奥深くには暗い孤独感がある。周囲の人間が、Masonの金やコネ、またはMasonとのセックスを求めて群がっているだけで、本当の友人ではないことを彼はよく知っている。
その孤独感は、彼を打ちのめし、命までもをおびやかします。
傷つき、打ちひしがれて、ビーチハウスへやってきた。Masonはそういう若者です。

Johnは、そんなMasonの見た目にも惹かれる一方で、彼の中にあるピュアさや、素直さに惹かれていく。
人との関係を欲得ずくかセックスかでしか割り切れないMasonに、Johnは一夏を通してそれ以外の人間関係を教えます。デートに連れ出し、何でもない日常を一緒に楽しむ。相手とのセックスだけではなく、相手を好きになることを教える。

2人が互いに惹かれて相手になじんでいく様子が丁寧に書かれていて、読みやすく、読んでいて心地いい。お互いが相手によって少しずつ変えられていく感じが、いかにも「恋に落ちてる」って感じでほほえましいです。
ほのぼのとした読みどころがある、素直なラブストーリーです。

海やのどかな町の情景も美しく、なごみたい時におすすめの読書。

★リハビリ

All She Wrote
Josh Lanyon
All She Wrote★★★ summary:
Holmes & Moriarityシリーズ2

古典的なミステリ作家であるChristopher Holmesは、巻きこまれた殺人事件の渦中で、5歳年下のベストセラー作家J.X. Moriarityと再会したのだった。
3ヶ月たって、彼らの関係はまだ続いていたが、Christopherはぎこちない思いをしつづけていた。長年の恋人は、彼を捨てて年下の男と逃げた。J.X.がいつか、Chrisが様々な面倒に値しないと気付いて、同じように彼の前から姿を消さないとは限らない。

だから、かつての恩師であるAnna Hitchcockからかかってきた助けを求める電話はChrisにとって渡りに船だった。階段から転落して足を折った彼女の代わりに、作家の卵たちのセミナーの講師役をつとめることは、週末のJ.X.との予定をキャンセルするいい口実だった。

だが、それはただの口実ではすまず、J.X.との関係に決定的な亀裂を入れてしまう。
そして、家を訪れたChrisに、Anna Hitchcockは思わぬことを告げるのだった。自分の命が狙われていると。その犯人をChrisに探し出してほしいと。
.....



前作「Somebody Killed His Editor」でじたばたしながら殺人に巻きこまれて右往左往していた落ち目の作家、Chrisふたたびの1冊。

Chrisは、何とか出版業界で生き残っているけれども、いささか先のあやしい作家です。恋人のJ.X.は元警官で、書くものはなんでもベストセラーリスト入りする。
そんな恋人に、Chrisは引け目を感じているし、年の差が気になるし、お互いの釣り合いが取れてない気がして仕方ない。彼は及び腰で、J.X.はそこにどう踏み入っていいのかわからない。

Chrisは猫と植物学者の女性を探偵役にした古典的ミステリのシリーズを長いこと書いています。今やそんなに売れてはいない。そのことも彼の悩みの種で、J.X.も彼のそのシリーズに対して「現実味がない」と手厳しい。
おもしろいのは、J.X.が決してChrisの作家としての技量を低く見ているわけではないところ。前作でもそうでしたが、J.X.は「Chrisはもっと自分をさらけ出して書くべきだ」と思っている。「お前は俺よりいい作家なんだから、自分をさらけ出すことを恐れずに、自分の体験に基づいたことを書くべきだ」と。
それをコンスタントに言われるのもChrisにとっては重荷で、苛立ちの元なんですが、果たしていつか彼はJ.X.の忠告に従うんだろうか。意地っ張りだから簡単には従わないと思うけど、楽しみ。

Chrisは頑固で、ちょっと天然が入っていて、皮肉屋。でも見た目以上に実は繊細で、クールに見えるのはシャイなだけで、長年の恋人の裏切りに今もまだひどく傷ついています。
でも今回、Chrisの回想によれば、彼らはどっちもTopを好んで、義務感からBottom役をかわりがわりにやっていたけれどもそれを楽しんだことはなかったし、何となくぼんやりして2人ですごす時に手を握りあうこともなかった。彼と元彼の関係が、愛情や情熱に満ちた甘いものだったようには見えません。
シャイなあまり、そういう不器用な人間関係しか結べないのがChrisで、今回、J.X.はひとつずつ彼の防御を壊しにかかります。そしてChrisはJ.X.にそれを許す。
ただの週末の関係から、恋人同士になっていく、そのステップが小さいながらもドラマティックで、はらはらします。
J.X.は優しくて、Chrisに首ったけだけれども、何か言う時はまじで容赦なく本音。実際Chrisはめんどくさい人間なので、そういう人とまっすぐ向き合うには相当の体力や誠実さを要すると思うのですが、惚れた弱みとは言え、J.X.もよくがんばるなあ。探偵ごっこにもちゃんとつきあって、彼をどこまでも守ろうとする。

ぎこちない作家が、5歳年下の作家仲間に追いつめられて、逃げ場を探しながら落ちてく感じが可愛い。恋にちょっとおろおろしながら、探偵役もやろうとして右往左往している。頑固で、誠実に。でもそんな彼が最後に対面する真実は残酷なものでもあります。

ミステリの軸もしっかりしていて、読みやすいです。前回の舞台も外界から切り離された館で、古典的なミステリの形式を踏襲してましたが、今回もほぼ館内で物事が進みます。物理的に隔絶されているわけではありませんが、やはり古典的な雰囲気の残るミステリに仕上がっています。
作者のLanyonは、Adrien Englishシリーズを完結させた後はこれを主軸にしたいのかな。今回Chrisが旅の間に読もうと思って持って行った本に「Adrien Englishシリーズ」の本が入っていたのはご愛嬌。

肉食系×草食系のカプが好きな人、古典的ミステリの雰囲気が好きな人におすすめ。ユーモアと恋愛模様とミステリのバランスがよく取れてて、読みやすい1冊に仕上がってると思います。

★古典ミステリ

Winter Knights
Harper Fox
WinterKnights.jpg★☆ summary:
Gavin Lowdenは若い歴史学者で、アーサー王伝説についての検証を行いにNorthumberlandを訪れていた。
アーサーとランスロットとの間に特別なつながり──ロマンスがあったというのが、彼の説だった。

そしてそのクリスマスの日、ホテルで、彼は恋人のPiersを待っていた。敬虔なカトリックであるPiersは、宗教的な罪悪感や、家族に秘密をもつ後ろめたさをかかえながら、Gavinとの関係を続けてきた。
彼を楽にしてやりたくて、Gavinはこのクリスマスの日、家族にカミングアウトしてホテルに来るようにPiersに提案したのだった。

だが、恋人は来ず、かわりに別れの電話だけがくる。
雪の中にさまよい出したGavinは、やがてふたりのレスキュー隊員に救い出されるが、それは思いもかけずにエロティックな一夜となり…
.....



MenUnderTheMistletoe.jpgCarina Pressのクリスマスアンソロジー「Men Under the Mistletoe」に含まれている1篇。
それぞれバラでも買えますが、いいアンソロです。


この話を書いたHarper Foxは、人の心の痛みを書かせると本当にうまい。痛みがどっしりと心にのしかかってきて、ひびを入れ、今にも体ごと粉々になりそうなつらさが、文章からにじみ出してくるようです。
一方でそこに気合い入っちゃって、別のところがおろそかになる気配があるんですが。シーンはすごくいいけど話全体のバランスが。
どう言ったらいいのか、いびつでアンバランスですけど、読みごたえはある。


今回の話はかなり変わったクリスマスストーリーで、GavinとPiersというメインカップルよりも、Gavinを助けるふたりのレスキュー隊に話のフォーカスの半分があたっています。
謎めいたレスキュー隊で、しかも片方はGavinと地下にとじこめられた最中にちょっとエロい展開になったりして、読んでいるとびっくりします。いいのかそれ?と思うんですが、その先に「実は…」という真実のターンテーブルも用意されていて、正体が段々見えてくる。
この2人がマジですごく格好いいです。何とも心痛む、でも愛らしいカップル。

一方で、GavinとPiersには読んでてもあんまり気持ちがときめかなかったかなあ。とは言え、宗教的な重荷に苦しみつつGavinとの関係を続けてきたPiersの決断とか、彼の立場に立って思いやることが出来なかったGavinが自分の身勝手さに気付くシーンとか、印象深い萌え場面はいくつもあります。
もう少し話が短い方が、その印象は際立ったかもしれない。Gavinがレスキューの2人の正体を知ったあたりでどんと切ってくれたら、★ひとつ上がったと思うんだけど、ちょっと話の尻が長かったですね。
痛みとか別れとか、そういうドラマティックなシーンを書くのは半端なくうまいけど、それ以外の淡々としたシーンを書きこなすのがこの作家の課題かなと思います。期待してますが。

クリスマスの奇跡が、ひびわれたカップルをふたたび結びつける。そんなロマンティックな話です。
アーサー王伝説と噛んでますが、とりあえずアーサー王の友人で頼れる騎士がランスロット、というところだけ押さえておけばいいでしょう。Gavinはガウェイン、Piersはパーシヴァルと、ほかの騎士の名前とも絡めてあるんだと思うけど。
苦悩と幸福の対比が鮮やかで、読みごたえがあります。いくつかマイナスポイントはあるものの、読後感もよく、骨太のクリスマスストーリーが読みたい人におすすめ。

★超常現象
★レスキュー

★Three-Star rating system★


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