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[タグ]キャラ:人狼 の記事一覧

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Allergies
T. A. Chase
Allergies★★★ summary:
デザイナーのRaymond Marvelsは、仕事場にあるパソコンの不調のため、会社にエンジニアを派遣してもらう。
部屋に入ってきたエンジニアは見たこともないほどゴージャスな男で、彼らの関係はあっというまに深まるが、どういうわけか、RayはそのLou Canisがそばに来るたびに強いアレルギー反応を示すのだった。とは言え、それは彼らの関係を妨げはしなかった。

Louは、新しい職場で出会ったRayに夢中だった。このシャイで奥手なデザイナーはこれまでの彼の「タイプ」ではなかったが、Louは、行きずりや短い情事では終わらないものが2人の間にあることを感じていた。
たとえRayが、彼が半径3メートル以内に近づくたびにくしゃみを連発しようとも、この新しい恋人を離す気はない。
だが、Louにはひとつ、出会ったばかりの恋人に言えない大きな秘密があった。そしてその秘密が、Rayのアレルギーの原因なのではないかと、Louは疑っていた。
Louの家族に会ったRayは兄弟にアレルギー反応を示し、Louは確信する。恋人のアレルギーは──Louに対するものが一番ひどいとしても──Lou個人ではなく、彼らの一族に対するものなのだ。
Louの一家は、人狼の一族であった。

LouはどうやってRayに自分の秘密を言うべきかわからない。かつて人間の恋人に正体をあかして殺されそうになった姉は「本当に好きなら、まだ黙っていた方がいい」とアドバイスするし、兄は「関係が深くなればなるだけ傷も深くなる。もし駄目になっても立ち直れるよう早いうちに告白してしまった方がいい」と言う。
Rayは人間としてのLouを好きになってくれた。だが、狼としてのLouは?

いつかは言わなければならない。だが、いつ?

その一方で、見知らぬ人狼がLouの一家のテリトリー内へ断りなく入って…
.....



人狼の恋人にアレルギーになってしまった、という、全体に幸せな話。
スラには人狼ものはかなり多いですが、ここの一族は大変「狼」っぽいのがいいです。Louには8人の兄弟がいて、末っ子の彼以外は全員双子です。姉の生んだ子供すら双子。
彼らは仲がよく、荒々しく、陽気で、つねに「群れ」の中での序列を競っている。一瞬で結束し、外から見ると驚くほど喧嘩し、そして全員、「犬」に関するジョークに目がない。
Rayに対してもLouの中の狼は独占欲を見せ、命令し、支配したがる。Rayはそれを受け入れるけれども、決して弱々しく言いなりになるタイプの恋人でもない。

Rayはシャイですが、地に足がついていて、おだやかでユーモアにあふれた男です。T.A.の受けはいつもそういうところが可愛いと思う。
ちょっとあたふたしたり、及び腰だったりするんだけども、一度恋に落ちてしまえば、その中でとても幸せそうにのびのびしているのが愛らしい。
Louの秘密、Rayのアレルギー、となかなかに前途多難な恋人たちですが、それを感じさせない幸せっぷりです。

この話はT.A.が彼のブログで更新していたもので、ちょっとだけ加筆や修正があるけれども、基本的には同じものです。ブログでは毎週火・水曜日に(通常は)話の更新がされているので、興味がある人はどうぞ。今は西部劇風の連載をしています。

「Allergies」は人狼の話ですが、この後にブログでこれとつながる吸血鬼の話を書いていまして、そのうちまとめられて出版される予定になっています。それぞれ完結した別々の話だけれども、あわせて読むとまた楽しい。
誰かが「人外」を狩りはじめている。それは誰か? 人狼と吸血鬼、そしてその他の一族も、力をあわせ、新たな敵に対して戦わなければならない。その先に何があるのか、というのも楽しみなところ。

ラブラブなのが好きな人には絶対おすすめ。
あと大家族の感じが好きな人、双子萌えでもいける。

★人外(人狼)
★甘エロ

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Without Reservations
J. L. Langley
WithoutReservations★★★ summary:
ネイティブアメリカンの血を引く獣医のChayton Winstonは、実は人狼でもあった。満月になると狼に姿を変えて狩りに出かける。
ある時、彼の群れの仲間が撃たれた狼を──それも人狼を──Chayのもとに運びこんできた。白い狼を一目見た瞬間、いや見るまでもなく近づいた時から、Chayはそれが彼の「mate」であると知る。
狼には運命の相手がいる。それはただの恋ではなく、どこか大きな力で運命づけられたただ一人の相手。否応なしに惹きつけられ、一生を分かちあう相手だ。
Chayはまだ4つの時から、ずっと自分のmateを夢に見てきた。白い肌と青い目のパートナー。ついに出会ったことにChayは喜ぶが、同時に予期せぬ驚愕にもとらえられていた。彼の運命の相手は、雄狼──男だったのだ。

Keaton Reynoldsは傷から回復して目をさまし、自分がmateとともにいることを悟る。一瞬で、彼は惹かれ、とらえられるが、次の瞬間に相手がストレートの男であることを知って、その喜びは砕け散る。
昔の恋人が「自分はゲイではない」と周囲にふるまう態度に傷つけられたことのあるKeatonは、「ゲイではない」男とまたかかわりあう気はなかった。mateであれ、何であれ。

Keatonは彼らの出会いをなかったことにしようとするが、Chayは後に引かない。はじめのうちこそ驚いたが、Chayはずっと望んでいたmateを前にして後ずさりするような男ではなかった。そしてKeatonと少しずつ関係を積みかさねながら、Chayは心の底から、この美しく、強情で癇癪もちの、小柄な狼を好きになっていく。まさしくKeatonは、彼の求めるmateだった。
Chayの心を信じながら、それでもKeatonは彼らの未来を信じられない。いつか、Chayはやはり女の子の方がいいと思いはじめるのではないだろうか。それにChayの家族や友人が、彼のmateが男であると知ったらどう思うだろう? 自分の存在や、自分たちの関係はChayの未来や幸せを傷つけてしまうのではないだろうか。

そんなある日、Keatonの車のブレーキホースが切断されて、事故をおこし…
.....



J.L. Langleyの人狼もの。
ここの人狼は、興奮すると目だけ狼になります。狼の目で見つめあったりして、大変エロい。
んでもって、女性の人狼はいないそうです。だからChayは、白い狼が自分のmateだ!と気付いた時、まず「女の狼がいるんだー」と感心する。まちがってるぞお前。でもまちがってることにびっくりしてなお、Chayはひるみません。小柄なKeatonを「Little Bit(ちっこいの)」と呼び、他にもKeatonを苛立たせるいろんな渾名を勝手につけながら、彼はどんどんKeatonの生活に入りこんでくる。ためらわないし、迷わない。
Keatonは希望と自制の間で揺れ動きながら、どうにかしてChayを自分の生活から押しやろうと思うけれども、一度「これは運命だ」と決心したChayをどうにかできるわけもない。

ゲイとストレートのカプの話ってのはそんなに珍しくないですが、ゲイ側(Keaton)がとにかく逃げよう逃げようとしているのがおもしろい。逃げると言ってもただの及び腰ではなく、「女じゃなくってすいませんね、こっちに気を使ってくれなくても全然結構ですよ」みたいな、ちょっと攻撃的な逃げ方です。
J.L. Langleyの受け(タイプ)はみんなそうなんですけど、Keatonも小柄で敏捷で、ユーモアと反骨精神に満ち、愛らしい癇癪もちでもあります。この受けを、包容で強引な攻め(タイプ。たまにリバやるので)が溺愛するという、まさに鉄板カプ。しかもすごい可愛い。
Keatonはとても強い狼で、Chayが属する群れの中でもおそらく最強の狼ですが、戦いや主導権争いを好まない。16歳の時に家族や仲間にゲイであることをカミングアウトし、拒絶された彼は家をとびだして自力で学費を稼ぎ、自分だけの力で生きてきた。その彼がはじめて自分を預けられるほど信頼した相手が、Chayです。逃げよう逃げようとしながら、Keatonは頑固で誠実なChayにふれるにつれ、彼に傾いていく。

2人が飼っている子犬(ChayからKeatonへのプレゼントです)がまた可愛い。いいムードになったところでChayの爪先をかじり、Chayが狼に変身すれば「遊んで!」とばかりにChayの耳をかじる。どうにかしてくれ!と狼のまなざしでKeatonにうったえるChayが笑えます。狼なのに。
Chayの友人や母親など、障害は多けれど、彼らは互いとともに新しい生活を作りはじめる。
その一方、誰かがKeatonを狙っていることが段々とあきらかになります。はたして彼らはすべてのトラブルを無事のりこえられるのか?

ほんとーに愛らしい、笑えるカプです。
いくらか残った問題が気になるのですが、何故ChayがKeatonの狼としての強さを嗅ぎとることができないのかとか、銀の弾丸が最後に効かなかったのはどうしてかとか、あれは裏設定があるのかないのか。
まあでもそれはさておいて、とても楽しめる一冊。気になる友人のRemiの話は、続編が出てるので読んでみるつもりです。

★人狼もの
★運命の相手(mate)

With Caution
J. L. Langley
WithCaution★★ summary:
兄弟としての誓い。恋人としての約束。どちらも守るのは命懸けとなる。

Remington Lassiterは命を落とすところを人狼の血によって救われ、その結果人狼となってしまう。新しい生活に慣れるのに必死の彼に、弟から助けを求める電話がかかってくる。
年の離れた弟は、Remiにとって唯一の「家族」のようなものだった。子供を束縛し母やRemiを殴る父親と、その父親から離れられず言いなりになる母に、彼は愛情を感じられない。
だが弟を守るためなら、Remiは父の言うことすべてに従った。まだ14歳の弟がどうにか無事に大人になるまで、Remiは何でも耐える覚悟だった。

探偵事務所を営むJake Romeroは、Remiを助けようと決心する。
Remiは気付いていないが、彼を人狼に変えたのはJakeの血であった。その時にもう、彼はRemiは彼のmate(運命の相手)だと知っていた。だがそのことをRemiには言えない。Remiは人狼になったばかりで、しかもストレートで、友人のChayが男の恋人を持った時に口をきわめて罵った「ホモ嫌い」である。そして今や、弟と父親についてのトラブルもかかえている。
やむなく自分の欲望を押しこめ、JakeはRemiを守ろうとする。
Remiの父親の過去を調べはじめた彼は、やがて暗いRemiの過去と、そこにある殺人事件に行きあたる。

その一方で、RemiはどんどんとJakeに惹かれていく自分を抑えきれなくなってきていた。また、人狼としてのRemiにも奇妙な現象がおこりはじめ…
.....



Without Reservations」の続編です。Without..に出ていたChayの友人のRemiと、群れの仲間のJakeの話。
前作のネタバレ含むので、ご注意。


Remiは前作でKeatonを「おかま野郎」と罵倒したほどのhomophobia(恐怖症というより、homohaterって感じですが…)です。なので、Jakeが彼のmateであることは皆で「しばらくRemiには伏せておこうか」ということになっている。
しかしそれを知らないまま、RemiはJakeに惹かれて、あれだけ拒否反応を示したにしちゃJakeに近づくことに対してあまり葛藤がない。
Remiが何故そうなのか、何故あれほどKeatonをののしったのか、何故前作であれほど「嫌なやつ」でありながらChayの長年の友人だったのか、そういうことがこの作品できちんと語られていきます。
彼が何から自分を、そして年の離れた弟を守らなければならなかったのか。守るために多くを捨て、自分を覆い隠し、攻撃的な態度を身にまとった、そんなRemiの人生が次第に浮き上がってくる。

自分自身を犠牲にして弟を守ってきたRemiは、Jakeと出会ってはじめて弟と同じほど──あるいは弟以上に大切な存在を見つける。そのことが彼に戦う勇気を与えますが、過去の恐怖をのりこえることは簡単ではない。
それでも手遅れになる前に、彼は弟を父親の手から救い出そうとする。

この弟(Sterling)がかわいいんですよ。まあよくしゃべるよくしゃべる。明るくてこまっしゃくれてて、勘がよく、たじろがない。
Remiが彼をかわいがるのもよくわかります。SterlingにとってもRemiは父親がわりのようなもので、RemiがJakeやその友人と会っていることを知ったSterlingは(兄に友人ができたことを喜びつつ)、彼らを見定めにかかります。14歳ながらも、Remiのことを守ろうとするんですね。
だがその彼もまた、この戦いの中で無傷ではいられない。

一方で、Remiは狼として「オメガ」であり、Jakeは彼の「アルファ」であるということがわかる。それは彼らの属する群れを2つに割る結果となり、彼らは元の群れを離れて自分たちの群れを持たねばならない。
なかなか大変です。はたしてRemiはSterlingを守りきれるのか、そしてJakeはRemiを守りきれるのか。

補足すると、人狼もののスラにはよく「アルファ」「ベータ」、そしてたまに「オメガ」が出てきます。
動物学上、群れのリーダーをアルファ、そしてそのアルファをサポートする副官的存在がベータ、さらに群れで最弱の個体をオメガと言う。オメガはどうしてもみそっかすにされたりいじめられたりするのですが、群れという全体を構成する上で必要な存在らしい。
スラの場合、大抵オメガは珍重されます。オメガは弱いが、オメガを手に入れるということは名誉であり、オメガを自分のものにするということは自分が群れのアルファになるということを意味する。
で、何か元ネタがあるんじゃないかと思うけど、「オメガは戦いには向かないが、特殊能力がある」という設定がとても多いです。いわゆる超能力レベルのものから、群れをまとめるための何らかのシンパシー的能力まで色々ありますが。また一般に人狼のオメガは「オメガとして生まれる」存在で、オメガでなかった者がオメガになったりすることはない。
このへんの「お約束」はどこからはじまったんだろうなあ。


Remiの印象が前作とあまりにちがってくるのでとまどいましたが、次第にそれも納得いくし(もうちょっと変化の過程がほしい気もしましたが)ドラマティックでおもしろい話でした。
SterlingとRhysの話がまた後に引いてますけど、これはそのうち書くそうです。本当に愛らしいぞSterling。彼らの短編がJ.L.Langleyのサイトにのっていますので、本編読了後にどうぞ(下部の「free story」のところから)。
何かゴージャスで手に負えない男になりそうだなあ、Sterling…

ボリュームが結構あるんですが、スピード感もあり、バランスのとてもいい話です。
前作の「Without Reservations」を楽しんだ人なら絶対におすすめ。

★人狼もの
★運命の相手

Feral
Joely Skye
feral★★ summary:
Ethanはクーガーのシェイプシフターであった。8年前、それを珍しがった人狼の群れが彼をとらえ、Ethanの友人である雌の人狼は死に、Ethanは繰り返し拷問を受けた。
シェイプシフターは変身することで傷を癒やすことができる。傷と痛みには終わりがない。
どうにか逃げ出したEthanは、ひ弱な人間の体を忌み嫌い、クーガーに変身して2度と人間には戻らなかった。8年間。
そして彼は決して再び、人間に戻るつもりはなかった。

だが、もはや人間であることがどういうものなのか忘れかけた彼を、また人狼の群れが追う。

Bramは、Ethanが拷問されていた時、その群れにいた。後ろ盾もなく、力もなく、狼である自分をコントロールする力の弱い彼は、その時どうすることもできずにそのクーガーを見ているしかなかった。
8年たち、その時の残酷なリーダーはもういない。だが次にリーダーになった男は、アルファとしての力を誇示してBramを支配する、傲慢な男であった。
「野生に戻ったクーガーは殺さなければならない」と、リーダーは言う。人であることを忘れたクーガーは人間を襲って食う。その前に狩って、殺す必要があると。
Ethanが殺されないようにする方法はただひとつ、彼をとらえ、人間であることを思い出させ、手なずけることだった。

Bramは人肌のあたたかさで、Ethanを人間の形に引き戻し、彼を人として世界につなぎとめようとする。Ethanの怒りと憎しみの前で、それは簡単なことではない。
Ethanはただ自由を求めてもがく。それがどんな方向であろうとも。
.....



人狼ものは大量にありますし、狼以外の獣のシェイプシフターが入っているのもままありますが、これは「人」とその内なる「獣」との対立や引きあうダイナミズムを中心に書かれた、その意味で珍しい話です。詳細な心理描写で、緊張感のある展開が続く。
人と獣はシームレスにつながっているわけではなく、どこか痛みをともなう形でもつれあっています。変身には10分から、時には半時間もかかる。変身を終えた時、記憶はいくらかとび、混乱して、自分がどこにいるのか何がおこっているのか、多くのことが抜け落ちている。

Ethanは8年もの間、必死にクーガーの姿を保ってきた。だが人間にふれられ、人間のあたたかさを思い出すと、孤独をのがれようとして人の形に戻ってしまう。
彼の中の獣はその弱さを嫌い、牙を剥いて獣の形にしがみつこうとする。人間が孤独をうずめるために他人にふれようとする一方で、獣は怒りにふるえている。
そんなふうに、彼らは2つの顔を持ち、時にその両方に引き裂かれます。

また、Ethanが長年の孤独と痛みをかかえる一方で、BramにはBramの問題がある。彼は群れのオメガであり、彼の中の狼は服従することに慣れているが、Bram自身はそのことに怒りを覚えている。
彼は服従しながらも反発し、アルファに対して卑屈であることに馴染みながらもそれを忌み嫌う、ねじれたオメガなのです。

このアルファがじつに、嫌な感じで。一見まともな男に見えるだけに、何かこう落ちつきの悪い嫌さがある。
Bramが何か変な感じに弱々しいので、前半は読んでてかなり焦れます。ハラハラというよりイライラ。イライラしながら読みすすめたい人にはうってつけの話です(結構楽しい)。ちゃんと終わりにはきっちりと落とし前をつけるので、イライラの分だけカタルシスも楽しめる。
Ethanがクーガーから人間の世界へと戻ってくる前半部もおもしろいですが、後半のBramの変化もなかなか読みごたえがある。
クーガーは人狼のように群れを作る性質はないので、Ethanは群れだのオメガだのがピンとこない。それはBramにとって救いでもあり、つらくもある。
2人はちがう種ですが、互いによりそい、信頼するすべを覚えていく。そしてその信頼をもとに、ふりかかっていく危機をのりこえていかなければならない。シフターを追うのは、狼たちばかりではない。

普通じゃないシフターものを読みたい人とか、クーガーたまらねえ!という人とか、リハビリ過程があるものに萌える人におすすめ。
猫科のシフターものって、もっとみんな書けばいいと思うよ!

★シェイプシフター(野生)
★逃亡

Bound by Nature
Cooper Davis
Bound by Nature★★ summary:
Hayden Garrettにとって、Josh Petersonは1番世の中で顔を合わせたくない相手であった。
JoshのすべてがHaydenの感情をかき乱す。何よりきまりが悪いことに、HaydenはJoshが近くに来るだけで欲情を覚え、それはあからさまにJoshにばれている筈だった。
「狼」の嗅覚には、Haydenの体の反応を知るのなど簡単なことだ。

彼らはその地区に住むふたつの大きな「狼」の群れの、それぞれ後継者であった。
どちらも服従することを知らない、力の強いアルファ。
そして何よりJoshはストレートだ。Haydenに興味があるわけがない。

だがJoshは、大学から戻ってきたHaydenに近づく。
Joshは昔から、自分とは違って理知的でシャイなHaydenのことが気になっていた。いい友達になれそうだし、彼と一緒に狼として満月の下を走るのは楽しそうだった。

2人が呑もうと約束した夜。
その夜に何かがあった。
何か、感情を昂揚させる素晴らしい出来事。そして、Haydenの記憶を閉ざすほどおぞましい出来事。

その出来事がHaydenを5年もの間刑務所にとじこめ、出てきた時には彼は別人のようになっていた。
JoshはそんなHaydenの信頼を得ようと必死に彼に語りかけるが、Haydenは世の中のすべてを拒む。彼がJoshに見せるのは、裏切られた痛みと憎しみばかりで…
.....



狼2匹の、過去と現在が入り混じった話です。
シャイでちょっと考えすぎで、自分がJoshに惹かれていることを隠そうとして隠しきれず、そのことに自己嫌悪を抱いているHaydenと、何だかHaydenと友達になりたいなーのJosh。
頭脳派と肉体派、みたいな感じですが、どっちも体格はいい。

話は大学から戻ってきたHaydenがJoshに「飲みに行かないか」と誘われるところからはじまりますが、その後、いきなり5年後にとびます。
何故かJoshに裏切られたと思ってうらんでいるHayden。彼はかつて約束された未来を失い、前科持ちとして小屋のようなところに住んでいる。

でもJoshを拒んでばかりもいられません。
5年の間に、2つの狼の群れは対立し、争いが激化して、長老たちは和平が必要だと考えていた。
群れの和平のためには絆を結ぶ必要があって、白羽の矢が立ったのはHaydenとJosh──それぞれの群れの後継者。彼らがMateになれば、争いはおのずとやむ、ということで、要するに彼らは政略結婚を迫られています。
これは大変。つうか、いいのか男同士で(細かいことは気にしない)?

勿論Haydenは拒んで逃げますが、どうしてかJoshはあきらめない。
5年前にHaydenを裏切って陥れた(筈)の男が何故今さら自分を求めるのか、そもそもJoshはストレートじゃないのか? とHaydenは混乱する。
その混乱の中で、5年前に本当は何があったのか、Haydenが失った記憶の中身があらわになっていきます。

「狼」の狼らしさと言うか、本能の強さのようなもの、野生があちこちにちりばめられていて、そこに読みごたえがありますね。
Cooper Davisは描写のきめが細かくて、体温とか匂いの描写が読んでいて気持ちいい。その世界にゆっくりと引き込まれていく感じです。
結局、Joshが5年前のことをどう解決してふたたびHaydenに会うことにしたのか、そのあたりがすとんと腑に落ちない感じはありますが(ちゃんと説明はされてるんだけど穴があると思う)、本編のテンションの高さと、この作者独特の丁寧で情熱を秘めた描写はさすがです。

狼好きだけでなく、傷ついた2人がもがく話が好きな人におすすめ。

★人狼
★裏切り

Wolf's Survival
T. A. Chase
Wolf's Survival★★ summary:
アメリカ内務省で野生生物保護の仕事をしているOliver Wingateは、Red Criffの町を訪れる。
絶滅した狼の回復活動の一環として、内務省は狼のペアをRed Criffに接する野生の保護地域に離すことを決定したのだった。
それは狼の種としての回復とともに、野生の動物の生態系のバランスを取り戻すための試みでもあった。

小さな町の保守的な牧場主たちは、狼と役人の両方を毛嫌いして、激しく反発する。
かつてこの地には狼たちの群れがいたが、人々はそこを開拓し、狼を絶滅させてこの町を作ったのだった。

だが、彼らの知らないところで、狼は生きのびていた。
ただ一頭の生き残り。群れを失った狼は、人と関わりをほとんど持たずに孤独に暮らしていた。
家族を失い、最後の一頭となった人狼。
Jacob Tasker。

Oliverに出会ったJacobは、長い年月の中ではじめて誰かに心を許しはじめる。
だがJacobの秘密と長すぎた孤独は、彼を最後のところで押しとどめる。

果たして二人は、Jacobの心の中の壁をこえてお互いに手を差し伸べることができるのか。
.....



今回ぐぐってみて知ったのですが、「狼の再導入」と呼ばれる回復計画は1970年代から行われていたんですね。
人狼の末裔のJacobは、故郷を離れているうちにすべての一族を失い、残っていた妹までも人間のせいで見失った。彼は人を信じていない。
牧場の犬たちだけが、孤独な彼の友です。

Oliverは狼を愛し、人を信じている。
彼は5年前に恋人をイラクで失ってから、その喪失をかかえていきています。前向きだけれども、繊細でシャイな男。

彼らは、出会った時から相手に対して大きな磁力を感じる。けれどもJacobの気難しさや、彼のかかえる秘密が二人の間にたちはだかる。
「狼をこの地に呼び戻したい」とJacobの協力を求めるOliverに、Jacobは「彼らはその時がきたら人の力を借りずに戻ってくる」と冷淡に答えます。彼はもう、人を信じていない。

とは言え、T.A.Chaseのカプらしく、相手に対して純粋な気持ちを向ける様子は愛らしくて、苦しみをかかえたそれぞれの様子もそんなにダークなものではありません。
甥っ子の教育のために「毒づかない」と決めているOliverの口調がかわいくて、「shit」とか「fuck」とか「damn」とか言えないものだから、色々な形で何か言ってます。何故か食べ物が多い。"swedish fishes" とか "duck farts" とか。
あんまりバリエーションがあるんで、今度リストにしてみようかと思います。

Oliverに強い支配欲を覚えつつ、人間不信や自分が抱えた秘密の重さに葛藤するJacobの姿が、物語にいい具合の陰影を付けています。
Jacobが満月の夜、死んだ一族の毛皮を保管している秘密の部屋で、ひとりずつの毛皮の匂いを嗅いで孤独を噛みしめるシーンは深くて、味わい深い。

元々ブログで連載していたストーリーですが、エピローグやシーンをいくつか足していますね。特に追加されたラストは、Jacobの言った「狼たちは、その時がきたら戻ってくる」という言葉に呼応していて、希望に満ちています。
孤独な狼と、シャイだけど強気な男のカプに萌える人におすすめ。Oliverに対する自分の保護欲の強さにとまどっているJacobの様子なんか、とても愛らしいです。でかくてゴツくて、支配的なのに、肝心なところでたまにたどたどしいんですよ。

★最後の狼

With Abandon
J. L. Langley
With Abandon★★☆ summary:
With or Withoutシリーズ4。

Aubrey Reynoldsは由緒ある家と会社の跡継ぎとして、また人狼の群れのリーダーの跡継ぎとして、重圧と期待に応えるために日々苦悩していた。

弟の友人、Mattがアトランタの大学に通うためにこっちにやってくると聞き、彼は自分の住み処の一部屋を提供することにする。
Mattとはメールをやり取りするようになっていて、Aubreyは顔を合わせたことのないこの年若い友人を気に入っていた。

Matt Mahihkanは、空港に迎えに来た女性の匂いに強く反応し、彼女こそが自分のメイト──運命の相手──だと感じて混乱する。Mattはゲイなのに、何故女性のメイトが?
だが、Aubreyに直接顔を合わせた瞬間、真実が明らかになる。Mattは女性についていたAubreyの匂いに反応したのだ。
彼のメイトは、Aubreyだった。

だが、Aubreyは、周囲にはストレートとして通しており、スキャンダルを許すことのできない立場にあった。すべてを秘密にしなければならないと、Aubreyは告げる。ふたりの関係は決して明るみに出てはいけないのだと。
.....



J.LLangleyの人気の人狼シリーズの4です。
今回の新刊は、前回の「With Caution」でJakeの事務所で働いていた派手な格好の男の子、Mattと、その前の「Without Reservations」で主人公Keatonから誤解を受けていた兄、Aubreyの話。
Without Reservations」のエピソードがある程度元になってるので、少なくともこっちを読んでいないとわからないところ多し。

19歳で、純情で気のやさしい男の子Mattは、大勢の兄弟の面倒を見てきた大家族の長男。
Aubreyは30歳で、ホテル経営の家業を継いで苦労している、生真面目で、傲慢なほど自分のやり方を通すことに慣れた男。
ふたりは一瞬でお互いが "mate" だと知るのだけれども、Aubreyは決してカミングアウトするつもりはないのです。Mattは「いつか」を待とうとして、Aubreyは「いつか」Mattを手放さなければならないと思っている。

色々と事情は入り組んでいますが、話は思いのほかシンプルに、2人の気持ちのやり取りや行きつ戻りつを中心にして進んでいきます。Mattに必要以上に惹かれまいと思いながら、ついついチョコレートとか買って帰ってしまうAubreyが可愛い。自分で思ってるほどクールに振る舞えてないぞ!というところが。
Mattの弟のLoganもいい味出してます。あー、彼のプリンス・アルバート(ペニスへのピアス)が狼に変身した時にどう見えるのかはほんとに気になる…

血なまぐさい事件も起こるんだけど、話のトーンは全体に明るくて軽い。
逆にそのせいか、ちょっと展開が散漫な印象もあるのは惜しい。ものすごく盛り上がる刹那のドラマ感や濃厚さはあまりなくて、流れるように読んでしまったかな。Mattの色覚障害とかもう少し使いどころがあった気がするなあ。
しかし生き生きしたキャラ達と萌えシーンがたっぷりあるので、充分楽しめるし、Mattの無垢な感じもほほえましい。Aubreyはあれをちゃんと守らなきゃ駄目だよ。
あとMattの兄弟たち! やんちゃな犬の群れっぽくて、読んでると何ともほだされます。

作者のLanglayは自分のサイトで、出版にあたって本編から削除したシーンを公開しています。話のはじめ部分に一つ、エピローグ近辺(というかエピローグだったんだと思う)にひとつ。特に後ろのはネタバレなので注意。
私はこれ、両方とも入っていた方がよかったんじゃないかと思うんですけど、作者がこれを除いたということは、全体に話をあっさり仕上げたいという意図があったのではないかとも思います。

シリーズのファンには勿論、しがらみに縛られたビジネスマン×純情でシャイな男の子の組み合わせに萌える人にもおすすめ。
人狼の「メイト」は問答無用の運命の相手なのですが、今回はそのメイトの幸せな部分だけでなく、負の部分も描かれているのがなかなかに新鮮です。

★メイト
★秘密の関係

★Three-Star rating system★


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・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
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・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
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*他訳者さん*
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・恋人までのA to Z
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