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Hawkins Ranch: Falling
Cameron Dane
★★★ summary:
Hawkins3兄弟(Conner、Cain、Caleb)は牧場の経営者としてその町に落ち着いていたが、彼らはじつは兄弟ではない。それどころか、人間ではなかった。
人より古くから地上に生きていた太古の一族──悪魔──、それが彼らの正体である。
一族との暮らしを捨て、それぞれイギリスをさまよううちに3人は出会い、自分たちの人生を求めてともにアメリカに渡ってきたのだった。血のつながりはなく、そして悪魔としても種族の異なる彼らであったが、3人をつなぐものはまさに「家族の絆」としか言いようのないほど強く、あたたかな気持ちだった。
だが、今ではConnerは悪魔ではない。愛する女性の力によって人間となっていた(1作目「Demon Moon」)。
そんな兄を、Cainは心の底から羨望していた。Cainは男性を好んでいたが、彼の種族は種の繁栄のために決して同性愛を許さず、もし同性と関ったことが知られたら即座に処刑が待っていた。そのため、Cainはその長い人生の中で一度も、そして誰とも関係を結んだことがなかった。
兄夫婦が暮らす家から出たCainは自分の家と厩舎を建て、虐待され傷ついた馬を引き取って訓練する牧場を1人で切り回していた。孤独には慣れていたし、彼は馬たちを心の底から愛していた。

そんなある日、Cainは兄から呼び出される。兄の妻Cassyの幼馴染、Lukeがひどい怪我を負って前の牧場を追い出され、退院した後も行き場がなく、そのまま兄の家の居候となっているというのだ。Cassyのそばに男がうろうろするのが許せない、という兄の子供っぽさに少々あきれつつも、Cainは仕方なく自分の牧場でLukeを引き取って働かせることを承知する。
だがそれがひどく危険であることも、わかっていた。彼は3年前にLukeと顔をあわせた時から、ずっとLukeに惹かれ、そんな自分の気持ちを恐れていた。もしLukeに対する気持ちが抑えられなければ、その先には破滅しかない。
それを肝に命じながら、それでもCainはLukeとともに働く毎日を楽しみはじめる。彼らはどちらも馬に対する深い愛情をもっていた。明るく、繊細で、だが時に驚くほど頑固なLukeの存在は、それまで孤独しか知らなかったCainにとってかけがえのない存在になりはじめていた。

長年の孤独と自制が作りあげた心の壁と、そして処刑への恐れ。さらにはその先に必ず訪れるであろう、処刑そのもの。Cainが乗り越えなければならないものはあまりに大きい。それは望みのない道に見えたが…
.....



Hawkins Ranchシリーズ。とりあえず今回は「Falling」を。
これシリーズ2作目なんですけども、1作目の「Demon Moon」はノマカプものです。結構あっちのスラ作家さんは、男女ものとスラの両刀書きだったり、男女ものをずっと書いてる人がスラに参入してきたりしますね。シリーズの中でまざってると微妙に困ったりしますが。
男女ものと混ぜて読むのはなあ、という人は1作目を読まなくてもいけると思います。

Cameron Daneはとにかく何もかもドラマティック!な作品を書く人で、登場人物は痛いほどむき出しに自分をぶつけあい、時に削るように互いを変えていきます。ちょっとテンションとしては昼ドラめいたところすらある。何というか、まさに「ハーレクイン」って感じもします。
力技なところもあるんですが、その「力」が半端ではなくキャラも皆魅力的なので、一度入りこむとそのまま最後まで話の中に引きずりこまれる。

「Falling」のCainは、とにかく「落ちまい、落ちまい」としながらLukeの存在に落ちていく、もがく男です。もがく悪魔というか。
誇り高く、自分の存在に自信を持っている、孤高な男ですが、彼の世界はLukeの存在に完全に揺さぶられてしまう。時に怯え、時に反発し、それでもCainはLukeに対して誠実であろうとする。
そんな力強い、苦しげな存在に、Lukeも否応なく惹かれていく。彼にはCainのかかえている問題が見えていないが、Cainの誠実さと優しさを愛し、そのぎこちなさの向こうにある痛みに手をさしのべたいと願う。
時に2人はただ感情に押し流され、時に混乱し、それでも魂は痛みや傷をこえてただまっすぐに相手を求める。

エロはかなり激しいです。Cameron Daneの書くエロシーンは当人によると「人の心と体がどちらももっともむき出しになる瞬間」という位置付けがあり、感情的なぶつかりあい、融合、心の変化にともなう体の反応などなどストーリーそのものを投影するエロです。非常に濃密な感情があふれています。喜び、痛み、怒り、相手への思い、時に拒絶など、意志と感情が互いへまっすぐに向かい、激しい反応を引きおこす。その中で、相手のもっとも深いところにふれ、さらに深くを求める。そういうエロです。なんか「情事」って感じがよくあてはまるような。
最中によくしゃべるのはご愛嬌。

色々な意味で「激しい」とか、「溺愛」路線が好きな人におすすめ。家族の絆とか、そういうあたりもしっかり押さえられている。
カウボーイものって、わりとよくホームドラマ要素もつきますね。牧場は家族経営が多いからかなあ。

★エロ度高
★人外(変身エロあり)

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Dreaming of Dragons
T. A. Chase
Dreaming of Dragons★★★ summary:
エルフのMordredと聖騎士Georgeは、幻想界で長年に渡る恋人同士であった。何ものも自分たちの関係をおびやかすことはない。2人のどちらも、そう考えていた。

だがドラゴンや、魔法の生物たちが幻想界の領域を越えて人間の世界に現れはじめ、Georgeはガイアの命を無視して人間に力を貸すために立ち上がる。2つの世界のバランスを取り戻すために。
恋人が自分から離れていくことに、Mordredは気付いてはいたがどうすることもできなかった。人間たちに──主にKaelとHughに──力を貸してやりたいのはMordredも同じだ。
ただ恋人の高潔なほどの犠牲的精神は、Mordredは持ち合わせていなかった。
そしてGeorgeの正義を求めるまっすぐな心根を、Mordredは愛していたが、理解しているとは言いがたかった。

GeorgeはMordredから離れて別のものを守りはじめ、だが彼らの戦いを嘲笑うかのようにドラゴンは現われつづける。
Mordredは、ドラゴン出現の裏で糸を引く者の正体を暴くために最後の賭けに出た。
それは恋人のため、そして人間界にいる友人たちのための賭けであった。だがその賭けがGeorgeとMordredを大きく引きはなすことになる。

2人は世界を守るため、友人たちを守るためにどこまで自分たちを犠牲にしなければならないのか。
そしてMordredは恐れていたことを目のあたりにする。Georgeの高潔さは、彼の──彼らの──すべてを犠牲にするほど強いものであることを。
.....



Here Be Dragons」の続編。かつ、完結編(おそらく)。
KaelとHughの2人の人間を中心に語られた前作に対し、今作は幻想界の人たち、魅惑的で移り気な美しいエルフMordredと、はからずも遠い昔に彼と恋に落ちてしまった気高い聖Georgeを中心にして展開していきます。

前回に引きつづき、まだドラゴンや海蛇は人間界で暴れ回っています。KaelとHughはドラゴン狩りに追われ、Georgeはそれを影のように助ける。
Mordredは、ちょっと暇にしています。んでもって、暇になるとかまってほしくなるのが、この猫のように高慢なエルフの気質でもある。皆が駆けずり回っているこの非常時に無責任ですが、そのへんが可愛いところです。

もともと彼は、聖Georgeなんていう堅物と恋に落ちるつもりはなかった。1人の恋人とずっとつれ添うなんてことは、気まぐれなエルフにとって予想の外だった。
それでもお互い、とらわれるように恋に落ちてしまった、その遠い昔の出会いと回想が物語のそこかしこにはさんであって、「いやホントにそんなつもりはなかったんだけど」というMordredのつぶやきが聞こえてくるようで、おもしろい。

わがままを言ってばかりではなく、MordredはMordredで仕事はしてますが、忙しいGeorgeに「お前は暇でいいな」と言われてカチンとしたりする。そりゃGeorgeほど熱心じゃないけどさ、そんな言い方あるかよ、てな感じでやさぐれたりします。
いや本当、可愛いです、このエルフ。あんまりこれを1人にしちゃいかんよ、Georgeも。
実際に悪い虫が近づいてきたりするわけですが、Mordredの方が虫よりたちが悪いかも。

私は、前作を読んだ段階ではそんなにこのカプには興味が沸かなかったのですが(何か出来すぎな感じのカプだし)、いざこの2人に焦点を移して語られてみると、感情のやりとりや重ねてきた年月が鮮やかにせまってきてとても楽しめました。
一方で、Kealの問題もちゃんと書かれていて、Kaelが前作で描かれたトラウマから完全に立ち直っている様子も見てとれます。よかったなあ。なかなかにいさましくて、Keal好きならそこだけで一読の価値あり。相変わらずHughとラブラブです。

2人の人間と、エルフと騎士は、ドラゴンの出現をとめられるか。そのメインのストーリーもしっかり書かれていて、隙なく楽しめる話に仕上がっています。
そして最後に、彼らは何かを犠牲にしなければならない。命、記憶、恋。犠牲を払うのは誰なのか。
ある意味ベタな展開ですが、それが正面きって書かれていて、文句なしに最後の最後まで盛り上がります。「王道」はやはりこうでなきゃ。

前作を楽しんだ人なら絶対におすすめ。
2冊あわせて上質の「物語」でもあるので、ドラマとファンタジーと愛らしいカップリングを同時に楽しみたい人に。

★堅物騎士×移り気エルフ
★自己犠牲

Gaven
J. C. Owens
gaven★☆ summary:
Gavenは敗北に打ちのめされていた。
Masarianの軍勢の前に彼らの民は破れ、友であるMichaelも死んだ。

自分自身も殺されることを予想していた彼は、突然現われたMasarianの将軍によってとらえられ、彼の「父親」であるという人間の前につれていかれる。
その「父親」はMasarianの権力者であった──
Gavenが敵だと信じて疑わなかったMasarianは、彼自身の生まれ故郷だったのだ。

人生の変化を拒み、彼らの元から逃げ出したGavenは、Michaelを埋葬するために故郷へと走る。

だが彼の力では及ばないほどの荒々しい力が、Gavenを追ってきていた。彼をとらえたあの男、年をとらず、人の血を呑む戦士──Vlar。
.....



BLにあって商業スラにないもの、というのは色々ありますが、「無理矢理」カテゴリってのが基本的にない。ネット上では見かけるので、嗜好というよりモラル的なもんなのだろうかと思ったりしてます。
でもファンタジーだとたまにそんな話があったりして、「ファンタジーだからちょっとガイドラインがゆるくなるんだろうな」とも思ったりもしてます。

で、この話が「敵につかまって、父親と名乗る男によって別の男に身柄を与えられる」みたいなあらすじだったんで、こりゃまずまちがいなく無理矢理系かと思ったら、かなりちがいました。ううむ。そんなところに文化差を感じたり。

基本的に、Gavenの成長ストーリーです。ファンタジー部分がしっかりしていて、描写も丁寧なのでファンタジー好きなら読んでいて楽しい。
Gavenが何度も逃げ出そうとしてもがくところや、自分の非力さに打ちのめされる心の動きもよく書かれていて、世界に自然に入りこめます。
Gavenの価値観は根底からくつがえされ、彼は傷つき、追いつめられる。自分を疑い、世界を信じることができない。選択は目の前に2つあって、そのどちらを選ぶこともできない。
そういう気持ち、そしてGaven自身の変化が、脱走や身にふりかかる苦難を通して描き出される。

どちらかと言うと、スラ部分よりはそういう「ファンタジー」の部分を楽しむ話だと思います。私はファンタジーが好きなので、かなりよかった。
人外が出てくるんですが、そんなに人外っぽくもなく、そこはちょっと惜しいかなあ。前半がすごく丁寧に書かれてる分、逆にあっさりと終わったのも勿体ない。人外がいるならもうちょっとエロエロしてもいいだろう!「儀式」だってあるんだしさ。…とかまあ、それはこっちの勝手なイメージですが。
でもエロが1つもなくても成り立つような、ちゃんとしたファンタジーです。
Gavenは苦しみ、孤独の末に、最後に自分の帰る場所を発見する。

ファンタジージャンルが好きな人におすすめ。

★敵
★ファンタジー

Paul's Dream
Rowan McBride
Paul's Dream★★ summary:
Paul Grahamの人生はくっきりとして、シンプルであった。弁護士として働きながら、さらなるキャリアを目指す。
誰とも深い関係を結んだことがなかったが、興味もなく、彼は自分の今の人生に満足していた。

淫魔のKianは魔道士にとらえられ、下僕となっていたが、ある時その牢獄を1人の人間が訪れる。
人間はあっさりとKianの鎖を解き、彼を解放して、消えた。
自由になったKianはその男を探し、人間界へと入りこむ。あの男はとてつもなく強力なDream walkerだ。なのに自分が夢の中を歩いているということすらわかっていないようだった。

Paulは、いきなり目の前に現れた美しい男にとまどう。Kianを救った覚えなど、彼にはない。
一方のKianは、Paulが彼になびこうとしないことに仰天する。人間はインキュバスの力には抗えない。だがPaulは、Kianの魅力にまるで気付きもしない様子だった。
──KianがPaulにふれるまでは。

Kianの情熱はPaulの心の壁を押し崩し、情熱に火をつける。
Paulは人生の新たな面を味わっていた。喜び、欲望、そして幸福。そして彼の炎は、Kianにもそれまで知らなかった充足を与える。
だが、Paulの奥に秘められた謎も、忘れられた夢も、彼らを放っておいてはくれなかった。
.....



現代ファンタジーというか、舞台は現代で、夢と魔法をテーマにした話。
その中でもちょっと変わっていて、夢をどう解くかがポイントです。
あとはインキュバスと人間の甘エロな関係が、じつに濃くて楽しい。

Paulは覚えていないけれども、彼は眠っている間、人の夢の中で色々な謎を解きながら生きている。他人の謎を解き、その問題を解決するのが彼の人生です。
たとえば、そんな夢のひとつで、Kianを解放したように。

Kianはただ、自分を解放してくれた人間に一時の快楽を与えようとしてPaulに近づくけれども、予期せず恋に落ちていく。
インキュバスは恋をしない。する筈がない。そういう生き物ではない。
ならこの気持ちは何だろう?と、彼は彼なりに考えこむ。
一瞬の快楽を求めながらとんでもないほど長い時間を生きてきたくせに、意外と純情なインキュバスです。

うわべは冷ややかで、何にも心を動かすことのないPaulの壁をKianの情熱が溶かして、ラブラブになっていく様子がかわいい。その絆はPaulの人生に光を当て、その光でPaulははじめて自分のことを見ます。欠けた記憶。欠けた夢。そしてなおもPaulの中にある、凍りついた壁。
Paulの中には大きく欠けた部分があって、それを見つけ出していくのが物語のひとつの核となっています。Paulは人の謎を解くけれども、Paul自身の謎はこれまで手付かずだった。

全体にドラマティックで、魔力の存在とストーリーがうまく絡み合っています。
Kianは恋に落ちて幸せだけれども、一方でPaulの存在は彼の弱みとなる。Paulにも、恋はそれまで知らなかった苦しみや痛みを味わわせます。Kianの姿を見失うたびに、彼は苦しむ。
恋は幸福なことばかりではない。それでも2人でいることには深い喜びがあって、そのためなら弱さも痛みもその価値がある。
Paulの心の謎を解くことは、彼を殺しかねないけれども、Kianのために彼はそれを乗り越えなければならないのです。

シリーズ化するみたいな感じですね。
エロありドラマあり魔法ありで、キャラも一風ユニークですがしっかりと強い輪郭を持って書かれています。ニューヨークの守護者、天才魔道士Asherの話が読みたいな。
ちょっと変わった話が読みたいとか、人間にめろめろのインキュバスに萌え!という人におすすめ。

★謎解き
★現代ファンタジー

Skin Deep
S. W. Vaughn
Skin Deep★★☆ summary:
Will AmbroseはNYのラジオ局の人気ジョッキーで、ゲイ向けのラジオ番組でリスナーからかかってくる質問に答え、時に相談を聞き、助言を与えていた。
だが彼自身の恋愛関係は悲惨なものだった。何故かいつでもサディスティックな恋人を引き当ててしまう彼は、一番最近の恋人の暴力に悩んでいた。暴力は段々エスカレートしてきていたが、警察には行けない。恋人は警官であった。

そんなある日、彼は友人に連れられてタトゥショップに入る。
そこにいたのは、Cobaltという通り名のタトゥアーティスト。彼の何かがWillに親近感を感じさせたが、どこでこの美しい男と自分に接点があったのか、Willにはわからなかった。

Cobaltは、Willのラジオに一度相談を持ちかけたことを、後悔していた。
ばかげたことだ。恋人が死に、あるいは気が狂ったと言っても、人間がそれを偶然だと思うのは当たり前だ。彼が関わった人間は皆不幸になるのだとも、Cobal自身が人間ではないことも、告げられるわけがなかった。

Cobaltは「Fae」という種族の一員だったが、許されない相手と関係を持ち、追放された。
その相手は何故か人間界までCobaltを追ってきて、彼にいまだに執着している。半ば狂気に陥りかかった彼を避けるため、Cobaltは結界を張った店にこもっていたが、孤独だった。

Willをその目で見た彼は、この人間に惹かれるが、二度と過ちをくり返してはならないとも思う。二度と、誰も苦しめたくはない。
だがWilの恋人の暴力はさらに悪化して‥‥
.....



パラノーマルとかタトゥとかDVとか、色々盛りだくさんの話です。異種エロあり。現代ファンタジー。
Willのキャラがいいですね。DV男をひきあてちゃう受けは弱々しいのが典型ですが、Willはなかなかにしぶとい。なら何故にそういう男にひっかかる、というのはありますが、彼はどうやら微弱なエンパスの能力があるらしく、そのあたりが貧乏くじを引く原因になっているのではないかと思われる。
Cobaltはもう格好いい攻めそのものなんだけど、たまに子供っぽいところが可愛い。Willが絡むとすぐ気持ちが弱くなるし。

この2人がなかなかくっつかず、好きだ、でもどうしよう!を延々やっている様子も楽しいですが、Cobaltの過去の絡みや、彼のもとに逃げ込んできた同種族の男との複雑な関係、段々と明かされていく秘密など、ファンタジー部分の骨子がすごくしっかりしています。
最後のクライマックスに入っていくところは、脇キャラにすごく萌えてしまった。いや、骨肉の争いとか、近親憎悪と裏腹の愛情とか、そういうの好きな人はたまらんと思う。

scarificationという言葉が出てきますが、これは傷で体に模様を描くもので、もともとアフリカの部族などが行っていたもの。今ではピアスやタトゥなどの身体改造の一ジャンルです。
タトゥーショップを舞台にし、scarificationを話題にするわりに、話の中でのそのへんの掘り込みは薄いかな。WillはDVを受けながら、自分にそういう痛みを好む性向があるのかと悩みますが、そのへんからBDSMに入っていくということもなく、最後までエロはわりとノーマルな感じ。
異種エロがあるので「ノーマル」じゃないかもしれませんが、でも全体に恋愛はほのぼのしていて、純で可愛いです。
エロとか、カップリングの感じは、ちょっとBLっぽいかも。

クライマックスで意外にも無力だと思われた人間(Will)がお役立ちするところとか、最後にWillがラジオで受ける相談とか、話の締めがとても鮮やかで、読みごたえがあります。話を読んだ!という手応えがある。
ファンタジーが好きな人、異種ものが好きな人におすすめ。

★現代ファンタジー
★異種

Knowing Caleb
Cameron Dane
Knowing Caleb★★★ summary:
Hawkins兄弟は本当は兄弟ではない。彼らはそれぞれ悪魔の種族の出であり、今は一族から離れ、アメリカで牧場を経営しながら新たな人生を送る仲間であった。
そのうちの2人が恋人と出会い、それぞれ苦難を経て人間になった今、Caleb Hawkinsだけが残されていた。

だがCalebは、自分が決して兄たちのような真実の恋を見つけることはないだろうと、わかっていた。
彼の過去を誰も知らない。彼が背負わなければならない罪を、兄たちですら知らない。悪魔だとばれるよりも、その罪が暴かれることの方がCalebにとっては恐ろしかった。

Jake Chaseは6年前に最愛の妻を失ってから、生きる希望を取り戻せずにいた。
Calebは悲嘆に暮れているJakeを見つけ、牧場に雇い入れる。
特に何も問題はないはずだった。

だが2人は互いに強く惹きつけられるのを感じ、2人ともに愕然とする。
どちらもゲイではない。
それなのに、どちらも相手を無視できず、拒否できない。感じたことのない飢えや欲望に流されるように相手に手をのばしながら、どちらも、もがくようにそこから逃れようとしていた。

果たしてストレートの2人の男は、それぞれの過去を乗り越えて2人をつなぐものを直視できるのだろうか。そしてCalebは、自分の罪をJakeに見せることができるのだろうか。
.....



Hawkins Ranchシリーズ。最後に残った3人目の兄弟の話なので、もしかしたらシリーズ最終巻かもしれません。
これまであまり正体というか、本当の性格がよく見えていなかったCalebの話です。

Calebは陽気で、女好きで、これまでのシリーズでも実にいい男です。「Falling」でCainが人間になれる方法やその他あやしげな魔法を探し出してきたのも彼だし、「ReneCade」でRenの理解ある雇い主として気を配っていたのも彼。
でもその中で、Caleb自身がどういう人なのか、いまいち見えてきていないのも確かです。どこかつかみどころがない。

それが何故なのか、彼は本当は外に見せかけているほど「この世に悩みなき」明るい人ではないのだということが、この話の中でかかれています。

そして、いまだ妻の喪失から立ち直れないJake。彼の痛みも深く、その悲嘆は読んでいるこちらが息苦しいほどです。
それぞれ、強い輪郭を持つ男2人にフォーカスが強く当てられた話で、彼らをつなぐ性的な欲望も含め、強烈な話運びになっています。
やっぱとにかく激しいぞ、Cameron Dane。この人はこの牧場シリーズが一番強烈な気がする。
その中でも、「男と男」という感じでがんがんぶつかりあい、傷つけあったりしていくのがこの話。とにかくまっすぐぶつかりあい、はらわたを引きずり出すように互いの内側をのぞきこむ。
何と言うか、本当に力技な話だと思う。うっかり引いたりしないで一気に盛り上がって読んでいきましょう。いやもうほんと激しくて、Calebが本当は悪魔なんだ!ということなんか、ささいな問題な気がするくらいです。

話としては、彼らの関わりの他、Calebが何度も狙われる謎の狙撃事件などが起きたりして、そちらもなかなか相手の正体が見えずにおもしろいです。
そんでやっぱり、兄弟の絆がいいですね。色々なものをくぐり抜けてきた彼らが幸せに暮らしている様子を見ると、ほのぼのします。この話の中での数少ない息抜きポイント。

もう、台風かなんかの夜に読んだ方がいいんじゃないだろうかというくらい、激しくドラマティックな話。
激しいもの好き、ストレート同士がもがく話が好き、あとは苦しんでるキャラに萌えるんだよねという人におすすめ。

★ストレート×ストレート
★悪魔

Crimson
Ethan X. Thomas
Crimson★☆ summary:
Polisの警察官BenとAdamはドラッグディーラーのTazuを追っていたが、罠にかかってチームの2人以外は全滅した。
どうにか生きのびた2人は、快楽の町Granatasへの潜入捜査を命じられる。

Adamには言っていないが、Benは性的に奴隷の嗜好を持ち、かつてTazuのクローンの1人と「奴隷」として性的な関係を結んでいた。麻薬ディーラーの男を知らずにベッドに招き入れた過去を、彼は強く悔やんでいた。
そのBenをGranatasで待っていたのは、Tazuの別のクローン。
このクローンはBenを知っているだろうか? Benの中にある欲望を?

Adamはstarlingという奴隷種族の出で、成り行きからsymbiotという高性能の寄生体を首の後ろに埋め込まれ、警官となったのだった。彼はBenに強い憧憬を抱いていたが、彼らの関係が、Granatasへ来て緊張感を持ったものに変わったのを感じる。
やはりstarlingの種族は、Benの目には低いものとして見えているのだろうか?

Granatasでの捜査はあやしい地下クラブに及び、BenとAdamは主人と奴隷としてクラブに潜入する。
Adamが奴隷役だ。当然、それしかない。starlingは奴隷種族であって、主人にはなれない。
その筈だった。
.....



Men in Space シリーズ。
ほかをまだ読んでないのですが、作家も主人公も違うようで、別にシリーズとしてのつながりはないのかな。シェアワールドかもしれないけど。
この作者名は2人の合同ペンネームみたいですね。

話はおもしろかったんですがわかりにくいところが多くて、Adamの種族についてとか(羽毛が生えてるみたい)、Benと麻薬ディーラーのTazuの関わりについて、またGranatasの町の様子とか、はっきり説明されないのでいささかめんどくさい。
でも上に書いたあらすじくらいの前提を把握していれば、わりとスムーズに読めるかもしれません。

やや迷いのある読書ではありましたが、色々と印象深い瞬間があります。麻薬Crimsonのもたらす酩酊の中で2人が落ちていく感情的なもつれ、彼らのパワーバランスが崩れる瞬間のダイナミズム。
歓楽街であり、巨大なリゾートビルディングのGranatasはとても魅力的な舞台だし。街のルールとして、感情を色にして映し出すブレスレットをつけさせられるところもいい。
設定はすごくよくできてると思います。つうか、設定でお釣りが来るほど萌えたかもしれない。

BDSMが重要なテーマの一部ではあるけども、掘り込みはちょっと浅いかなあ。それは全体にこの話の問題点でもあり、何つーか「惜しい」という感の話ではあります。寄生体symbiotのおかげだと思うが、2人がテレパシーでやり取りできるあたりとか、Benの背中の翼のタトゥとか、もうちょっとエロ的に使ったらおいしいと思うんだけどな!

好きなテーマで、好きな雰囲気なので、つい「もうちょっと」という気分になるけれども、話としては充分楽しめた一冊でした。
SFが好きだとか、ちょっと凝った設定が好きな人におすすめ。

★SF
★奴隷種族

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