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[タグ]キャラ:ボディガード の記事一覧

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No Going Home
T. A. Chase
No Going Home★★★ summary:
馬術競技で名のある騎手であったLesは、障害飛越でのジャンプに失敗し、頭に蹄を受けて深刻な怪我を負ってしまう。彼の名声がなくなるやいなや手の平を返した恋人は彼の価値を否定し、彼を病院に残して去った。
一度は起き上がることすらできないと思われたLesはなんとか回復し、リハビリを行い、父の牧場を引き継ぐとともに自分の牧場をはじめる。彼のもとには色々な「迷子」が訪れる。それは行き場をなくした人間であったり、見捨てられた馬であったりしたが、すべてをLesは引き受け、同時に彼らが回復して去っていくのを見送ってきた。彼はいつも傍観者であって、ふたたび恋に落ちることはなかった。何かが癒やされないまま、それでもそうして怪我から6年がたった。

ロデオカウボーイのRandyは、ロデオで負った怪我のために久々に実家の牧場へ帰る。彼は父親と深刻な不和の種をかかえており、家に帰ってからもまた争ってしまう。もはやそこは彼にとっては「家」とは思えない場所だった。
そんなある日、妹が借地の代金として目の見えない馬を渡すと言うのを聞き、何か裏があるのではないかとついていった彼は、隣人であるLes Hardinとはじめて顔をあわせる。
強靭で、己の信念に満ち、人生の厳しい面を見ながらも頭をまっすぐに上げている男にRandyはすぐに惹かれるが、LesとちがってRandyは己の性癖をカミングアウトしていない。Lesの方へ一歩踏み出すことは、父との関係、自分の人生、すべてを変えてしまうことになるという予感が彼を不安にさせる。
一方のLesも、陽気で子供っぽい、そして傷を負ったRandyにすぐに興味を持ったが…



T.A.はとても好きな作家なので、ブログをはじめるなら最初の紹介は彼の作品から、と決めてました。と言ってもブログやろうかと思ったのが一週間くらい前なのですが。
わりと真正面からの恋を書く人で、キャラは皆それぞれ自分に確信と誇りを持ちながら、人生の中で傷ついたり迷ったりしている。シニカルだったり、厳しかったりしますが、どのキャラも深い誠実さと強さを持っていて、自分を偽らない感情の交錯はとてもドラマティックです。エロシーン度も高し。
基本的に結構甘めのハッピーエンドですが、彼の作品の中では必ず登場人物が「選択」をせまられます。自分が何者であるのか、何者でありたいのか、どこにいるべきなのか。
生まれ育った場所だけが「家」ではなく、血のつながった相手だけが「家族」ではない。Homeシリーズでは、誰もが自分の居場所を探し、それを互いの腕の中に見出すけれども、そこまでの間には様々な選択がある。恋は甘いが、人生は厳しい…

Lesは一度は傷つきますが、とても誇り高い、強い男です。Randyはまだ若く、強さもあるが、父親との軋轢に苦しみ、カミングアウトが自分のキャリアにもたらす影響を恐れてもいる。自分自身を否定しながら、自分に問いつづけている彼を、Lesはその影の中から出してやりたいと願う。
そんなLesに強く惹かれながらも、Randyはどこに自分の足を置くべきか迷いつづける。何を選ぶべきか。何を捨てられるか。ただ恋に落ちるだけでなく、選ぶことで彼らはその先の人生を手に入れるのだが、その一歩を踏み出すことが難しい。

「No Going Home」は「Home」シリーズの1作目で、「Home Of His Own」が2作目になります。主人公はちがいまして、No Going HomeではLesとRandy、Home Of His Ownでは一作目の脇役であったTonyと、彼の相手であるBrodyの話。この作品も好きなんだ!ブルライダー(ロデオで牛に乗るカウボーイ)のTonyが何かとても可愛い。彼もまだ少年のうちに家を捨て、家族を捨てざるを得なかった男です。
まだ出ていませんが、次作は「His Heart's Home」。やはり主人公を変えながら、この先3作(かな?)予定されているそうです。

しかしカウボーイスラの例に洩れず、ワイオミングが舞台。
何でスラッシュのカウボーイはみんなワイオミングに住むんだろう。テキサスは駄目か?

★エロ度高
★ラブラブ度高

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Home Of His Own
T.A. Chase
HomeOfHisOwn★★★ summary:
Tony Romanosはプロのロデオライダーとして各地を旅しながら、友人のRandyとLesが暮らす牧場にたびたび転がりこむ。彼らはTonyを家族のように迎え、家族のように愛した。そこはほとんど、Tonyにとって「家」と呼べる唯一の存在だった。

Tonyは15の時、家族にカミングアウトしたがそれは悲惨な結果におわり、家族が決して自分を受け入れないことを悟った彼は家を出ていく。ひとりで生きていくことを学び、ひとりで生き抜いてブルライダーとなった彼は、RandyやLesのような友人を得て幸福だったが、彼自身の家──彼だけの居場所はいまだにどこにもなかった。
そんなある日、縁を切った、彼を嫌悪している筈の家から手紙が来る。Tonyの甥にあたるJuanがどうやらカミングアウトして、実家は大騒ぎになっているらしい。来てほしいと姉に乞われるが、Tonyは一体自分に何を求められているのか、どうしていいのかよくわからない。自分が自分でありつづけるために家族を捨ててきた彼が、今さら甥に何を言えるだろう。

Brody MacCaffertyは、弟と2人で身をよせあうように暮らしていたが、ギャングの犯罪行為に関ったことからついに殺すか殺されるかというところまで追いつめられ、弟を残して故郷を去る。
LAでボディガードとして身をたて、やがて自分の警備会社を持つまでになった彼は「必ず迎えにいく」と約束した弟を探し出そうとする。だがたぐった糸は、奇妙なところでTonyと彼とを結びつけていた。

どちらも一夜の関係(one-night stand)だと思っていた。もう一度会うとは思っていなかった。
どちらも自分にとっての「家」を持たずに生きてきた。互いが互いの帰る場所になることなど、想像もしていなかった。
.....


No Going Homeに出てきたブル・ロデオのカウボーイTonyの物語です。No Going HomeはRandyとLesの話でしたが、この話では彼らが脇役になります。
この「Home of his own」は本当にとても大好きな話です。話もいいし、キャラもいい。
Tonyはしたたかでシニカルな大人ですが(煙草を吸っている様子が非常に格好いい)、ユーモアに満ちた男です。RandyやLesなどの心を許した相手のそばにいると子供のような面も見せ、Randyとは特に兄弟のようで、何かあるととっくみあったりしてもう大変。
その一方、Tonyは家族を捨ててきたことによる深い孤独の影も持っている。自分の内側に空虚な場所があることを知っていて、それが埋められる日を心のどこかで待っているが、そういう日がこないだろうとも思っている。
多分、自分の中にある影ゆえに、彼はどこか無邪気なRandyが好きなのだと思う。そしてTonyはLesにも惹かれ、LesもTonyに惹かれているが、RandyとLesの間にあるものはTonyにとって手をのばせないものだった。多分、出会うのが少し遅かった。
Randyたちと一緒にいる時間はTonyにとって楽しい時間ですが、ほろ苦くもある。

人生を生き抜くことを知り、その苦さも知りながら、煙草を吸って自分自身ごと笑いとばす──Tonyはそんな男で、BrodyはそんなTonyに強く惹かれていきますが、その一方でTonyが命がけで牛に乗っていることにも向き合わなければならない。馬のロデオ以上に牛のロデオは危険で、いつ大怪我をするか、もしかしたら命を落とすことすらあるかもしれない。
ある日ロデオサーキットで事故を目のあたりにしたBrodyは、その悲惨さを恐れる。だがそれはTonyの生き方で、Tonyと関係する限り受け入れなければならないものでもある。
一方のTonyは甥の問題に力を貸してあげたいと思うが、実家のほとんどの人間はTonyを相変わらず蛇蝎のように忌み嫌い、そこに戻る場所はもうない。Tonyがかつて一度は「Home」だと思った場所は、もはやこの地上のどこにもない。

どちらも強く、自分の力で生きてきた男たちが、よりかかるのではなくよりそうように、恋以上のものを育てていく。その日々は濃密で、ドラマティックで、時にユーモアに満ちている。
彼らは自分の「Home」を手に入れることができるのか。人にとって「Home」や「Family」というものが何であるのか、それはただ場所や血のつながりのことを言うのか。

ちなみにTonyが加わっている「PBR」はブル・ライド専門のロデオ組織で、PRCA(プロフェッショナル・ロデオ・カウボーイズ協会)におけるブル・ライドの地位の低さに不満を持った選手が設立した協会です。プロとして加わるにはいくつかの条件が必要ですが、賞金が高いことで知られ、アメリカ1のロデオ組織です(対抗組織としてCBRというのもあります)。ロデオ、それも牛を使ったブル・ライドは今アメリカでビッグビジネスになりつつあるようで、その牛の競りもすごく盛り上がるらしい。
前作の「No Going Home」ではTonyはまだPBRに加わってなかったので、その次の年に条件を満たして参加し、ブルライダーとして順調にやってきたようです。

あと、おまけとしてRandyとLesのクリスマスストーリー「Where His Home Lies」がついています。これはひたすらに甘い! 作者のT.Aは男性ですが、スラ読んでると男の人の方がロマンティックな話を書く気がします。

★エロ度高

Death Or Life
T.A. Chase
Death or Life★★ summary:
Noah Wiltsonは、静かに暮らすこと以外は何も望んでいなかった。だが大統領選挙に立候補する父のため、「理想の家族」を見せるためのキャンペーンにつきあわざるを得ない。
父親にそれ以上の興味や関心を持たれていないことを、Noahは知っていた。息子がゲイであることが明るみに出れば、自分の選挙に大きくかかわる。父が気にしているのはそれだけだ。
Noahは普段は父親や家族と距離をあけ、必要とされればキャンペーンにつきあい、父の邪魔にならないようにしてきた。

だからある夜部屋に戻ると、殺し屋が待ち受けていたこと、そしてその殺し屋から雇い主が父親であることを聞き、Noahは心の底から驚愕した。

殺し屋は、これが最後の仕事になることを知っていた。Noahの存在を誰かが邪魔にしているように、自分の存在も誰かの邪魔になっている。消される前に消えるしかない。
Noahを殺すか、生かすか。その選択は彼の手の中にある。もしもうこの仕事を続けないのなら、Noahを殺すことに何の意味があるだろう?

自分の身を父親から守るための書類を持って、Noahは母方の祖父の元へ身を寄せる。事情を呑みこんだ祖父はNoahのために護衛チームを雇った。
セキュリティのリーダーにはCain Packertがついた。かつて政府のために働いた経歴を持つというこの男にNoahは強く惹かれるが、同時に、Cainの中に、暗闇で出会ったあの殺し屋に似たものを感じていた。
.....



父親に殺されかかった青年と、殺し屋と、護衛の話。
誰と誰がカプなのかはとりあえず内緒。ていうか、途中までまさか三角関係??とびっくりしたのですが(T.A.らしくないので)、そんなこともなく、甘々カップルでした。やっぱりね。

そして内緒にするとあまり書けることがない…
相変わらずカプ的には幸せですが、今回は殺し屋やその出生の秘密などが絡んでいて、どことなくあやうい緊張感が常に張りつめています。
そしてまた、Noahの父親はまだNoahのことをあきらめていない。Noahの危険はまだ去っていない。

Noahはただの研究員であって、生死のやりとりや殺し屋の存在は彼の理解を越えている。突然の事態に翻弄されながらも、彼は彼らしくまっすぐに物事に対処しようとしています。
おだやかでありながら、芯が強いあたりは、いかにもT.Aのキャラらしい。恋人に秘密があることを感じとりながらも、それをこえた信頼を寄せる様子がなかなか愛らしいです。

殺し屋の独特な性格づけが、物語に陰影を与えています。どこか人生に無関心で、人を殺すことを何とも思っていないが、決して残酷な男ではない。現実的で、シニカルで、感情を抑えた男。
彼がNoahを助けたのは決して感傷からではない。だがそのことは、Noahだけでなく彼自身の人生を決定的に変えることにもなる。

あらすじの割にそれほど暗かったり、悲壮だったりということはなく、読みやすい作品だと思います。長さとしても一気に読めるし、わりと万人向けというか、サスペンス+甘々カプが好きな人ならさらにおすすめ。
作中に出てきたもう一組のカプ(Lordと口のきけない青年Mars)の物語がすごく気になります。T.Aによると彼らの話もそのうち書くそうなので、そっちも楽しみ!

★殺し屋

Cover Me
L.B. Gregg
※出版社の問題で一時的にリンクを外してます。
Cover_Me.jpg★★★ summary:
Michael “Finn” Finneganは、寄宿学校の英語の教師である。
だが、彼が個人的に指導している生徒の兄、Max Douglasは彼の教え方が「ゆるい」と言い、それ以上の個人授業を断る。
その宣告は最悪のタイミングだった。FinnがMaxと寝た、ほんの数分後。
2人はそれきり、になる筈だった。

警備会社で働いているMaxは、とある生徒の警護のためにFinnの勤める学校へとやってくる。
彼の厳格で妥協のない物言いと、学内のことをとりしきるFinnの考えは常に対立した。
2人は、どちらも生徒を守ろうとしていた。だがFinnは教師として生徒の生活や自由も含めて守ろうとし、Maxはただ危害から守ることだけを考えている。
どちらも自分の仕事に誇りを持ち、どちらも頑固だった。

Maxは常にFinnを怒らせ、昂らせ、気持ちをかき乱す。
押し流されるように彼らはまた体を重ねるが、その関係が体以上のものにならないだろうこともFinnはわかっていた。Maxは彼をだらしがないと言い、Finnが何をしても眉をひそめるような男だ。
それなのに、Finnは自分の気持ちが、このむかつく頑固な元海軍の男に向かって落ちていくのをとめられず…
.....



Men of Smithfieldシリーズ3。

Finnは陽気で、生徒に人気があり、ちょっとお茶目なところもある男です。なにしろハロウィンの仮装にトースターのかぶりものを着ていっちゃう。
Maxは感情を表情に出さず、言葉はぶっきらぼうで、時に無神経なほど剥き出し。
Finnは自分の勢いのままにそんなMaxと寝てしまいますが、後からめりこむほど後悔する。でもまたMaxと出会い、ついつい体の関係がはじまってしまうのです。

Finnの一人称ですが、すごく可愛い。彼が生き生きとし、じつに人生を楽しんでいるのがつたわってくる。彼の視点からでも当人の溌剌とした様子、刺々しさ、頑固さ、癇癪、そんなものがわかります。
そしてMaxが、Finnのことを「理解しがたい」と思っているのもわかる。そんで、理解できないままこっそりと、Finnに対してめろめろになっているのも。

この2人のやりとりが笑える。MaxはFinnをつついて怒らせるのが好きで、激しい反応が見たさにうっかりときついことを言ってみたりする。頭に血がのぼったFinn、というのに心底ときめいてしまうらしい。
屈折してるぞ。好きな子をいじめる男の子じゃあるまいし。
FinnはMaxの術中にはまって怒りちらし、自己嫌悪や当惑の中でぐるぐるし、やばい、と思いながらMaxに惹かれていく。そんでいきなり甘やかされて、もう駄目だと思いながら逃げようともがく。Maxはどうせ遊びだろうし(←Finnの頭の中的に)、Max相手に失恋なんて耐えられない。
ここのぐるぐるが、読んでいてすごくおもしろい。

その一方で、学内では様々なことがおこりはじめる。動物の死骸、吊るされた人形、紛失した部屋の鍵。
誰かの悪意が身にせまってくるのを感じながら、Finnはそれが誰であるのか悩む。学内で自由に動き回る、それは生徒の一人なのだろうか? それほどの悪意を持つ者が生徒の中にいるのだろうか?

攻めの寡黙さにやきもきする受けと、生き生きとした受けの一挙一動にこっそり萌えてしまう攻め、という組み合わせが好きなら鉄板です。
エロの最中でも甘やかしたり苛めたりするのが、大変に可愛い。

★寡黙×溌剌
★トースター

Brier's Bargain
Carol Lynne
Brier's Bargain★★☆ summary:
Brier Blackstoneは数年前まで、生涯のほとんどを病院ですごしてきた。
まだ幼児の頃、父親の虐待で頭に傷を負ったため彼は知能の発達が標準よりも遅れ、感情のコントロールが難しい。虐待から保護するために、政府は彼を家族と離した。
ほんの十年前まで、双子の弟すら彼の存在自体を知らなかった。

その弟の尽力によって、Brierは病院から出て人並みの生活を営むことが出来るようになり、ボディガードの会社の事務として働くまでに回復した。
そして、その会社で想像もしてなかった素晴らしい相手と出会った。
Jackie Benoit──会社のボディガードスタッフの一人。
Brierの恋人。

そのJackieが中東の任務でひどく負傷し、片足を失って帰ってきた。

Jackieはこの無垢でひたむきな恋人を愛していた。彼が乗りこえてこなければならなかった過去も知っている。かつて病院を脱走し、感情のままに罪を犯したこと、収監された病院で性的虐待を受けていたこと。
それをのりこえ、ハンディキャップを持ちながらフルタイムで働き、様々なことにチャレンジし始めたBrierの姿は、Jackieが自分の傷と向き合うための力でもあった。

だがまだBrierの心は脆い。
そんな時、性的虐待の加害者が捕まったとFBIから連絡があり、JackieはBrierにどう話したものか悩む。FBIはBrierの調書を取りたいと言うが、ふたたびあの体験を思い出させるのは気が進まない。

しかしBrierの覚悟は決まっていた。Jackieや、双子の弟が思う以上に。そしてきっと、彼らが望む以上に。
.....



Brierは軽い知能障害があるけれども、きちんとまっすぐに物事を考える人です。彼なりの筋道を立て、人のことを思いやりながら生きている。36歳。
Jackieは彼の初恋。
そのJackieが中東へ仕事へ行ってしまっている間、淋しさのあまり感情的にめちゃめちゃになって双子の弟を心配させたりしてしまいます。

でもJackieが負傷して帰ってきてから、Jackieの世話をし、そばで暮らしながらBrierの気持ちも落ち着いていく。
そんな彼のひたむきな様子と、彼にめろめろのJackieの様子がかわいらしい。また実際、Brierの弱いながらも凛としたたたずまいが綺麗で、Jackieの気持ちがまっすぐ彼に向かっているのもつたわってくる。
JackieがBrierの面倒を一方的に見ているわけでも、子供のように扱っているわけでもなく、彼らは互いに支えあう対等な恋人同士なのです。そこがいい。

周囲の人間はBrierを守ろうとするけれども、Brier自身は段々と自分の頭で物事を噛みしめ、自分の足で歩こうとしていて、その覚悟は時たま周囲とぶつかる。
そのBrierの気持ちの変化と、それを受け入れていかざるを得ない周囲との変化が書かれています。

読み始めて、知能障害というのはあまり好きなテーマではないので迷ったのですが、とてもおもしろかった。読んでいる間も、読後感もいい。兄に罪悪感を感じながら過保護にふるまう双子の弟もかわいい。
作者のCarol Lynneは前にも下肢の障害がある人の話を書いたりしていたので、何らかのハンディキャップ(精神的な弱さとかも含む)をかかえたテーマが好きなのかもしれない。うまくツボを押すエピソードが重なっているけれども、決してお涙ちょうだい系でもありません。
この作者のキャラは根がポジティブでたくましいので、重いテーマでも話が暗くならないのかな。性格はわりと乙女っぽかったり繊細だったりするんだけど、それでもどこか前向きで、世界を信じている感じがします。

Brierが過去をのりこえ、自分の新しい一歩を世界に刻んだことが、最後の騒動からもよくわかる。
世界は彼にとって優しい場所ではないけれども、彼はまだその世界を信じ、人間の善意を信じている。Jackieが、Brierの視点を通して見える世界が美しいと思うのも無理はない。

この「Bodyguards in Love」は作者の新しいシリーズで(まだ全部読んでないんだけど、代表作のCattle Valleyシリーズが終わったのかな?)、このボディガード会社を舞台に進んでいくと思う。
見るからにゲイばっかりの会社ですが、まあそれもよし。先が楽しみです。

ある意味かなり極めた「包容攻め×けなげ受け」なので、そういうシチュ萌えの人に特におすすめ。エロも多めで、全体に楽しく読めます。

★障害
★保護欲

Seb's Surrender
Carol Lynne
Seb's Surrender★★☆ summary:
Bodyguards In Loveシリーズ 2

Jared Grantは人生のほぼすべてに渡って、様々な虐待を受けてきた。
自殺を試みて入れられた病院では看護人からの性的虐待を受け、退院してからも、その男につけこまれてみじめな暮らしをしていた。
警備会社で働くBrierが、裁判の証言者として彼を探し出し、説得してそこから連れ出すまで。

そして今、Jaredは警備会社の寮に世話になっていた。周囲をボディガードの男たちに囲まれ、Jaredにとって、それは人生で初めて安全な時間であった。
だがそれも、逮捕されている筈の彼の虐待者から脅迫の手紙が届くまでだった。

ボディガードのSebastian Jamesは、Jaredのくぐり抜けてきた虐待について、自分自身の過去の経験から多少の想像がついた。
心身ともに傷ついたJaredを守ってやりたいと思うのは、共感からだろうか。
Sebは弟を失ってから、誰かに気持ちをよせたことはない。必要以上な関わりは避けてきた。だが長い年月で初めて、JaredはSebの心の奥のやわらかな部分にふれる存在だった。

SebはJaredを守ろうとするが、Jaredは深い傷をかかえていて、簡単に気持ちをひらこうとしない。
彼には学ぶことがたくさんあった。自立して生きること、誰かをたよること、酒を飲んだからといって誰もが人を殴るわけではないということ。
そしてSebもまた、Jaredに信頼してもらうためには、長年自分を覆ってきた殻をひらかねばならない。誰も知らない過去の自分を、見せなければならないのだった。
.....



前作はBrierとJackieの話でしたが、そのラストでBrierが救い出した同じ虐待の被害者Jaredと、ボディガードの会社で働くSebの話。
こういうちょっと弱い感じのキャラを書くと、Carol Lynneはうまい。
ただ深刻に書くのではなく、深刻な一面を切り取りつつ多少の軽みも加えて読みやすく仕立てているあたりが、さすがだと思います。

長年の虐待の被害者であるJaredの様子が、またよく出ている。
誰かにたよることを知らず、何かが起こっても立ち向かうのではなく、ただそれが過ぎ去っていくのを待とうとする。
意見の食い違いからSebが怒った時に、思わず頭を抱えこんでその場にうずくまるJaredの様子は、その象徴でしょう。Jaredにとっては当然の行動ですが、Sebは自分に殴られるのを恐れるかのようなJaredの行為にショックを受ける。

2人ともに、心に壁があります。
Jaredは被害者としての殻にこもっているし、Sebはかつて弟を失った時のつらさから、誰かに心をひらくのを拒んでいる。
どちらも、もしかしたら恋に落ちる準備はできていないのかもしれないけれども、彼らはわりとおだやかに、何だか相手の存在に気付くように関係を深めていきます。
実のところ、色々なトラブルがあって、そんなにのどかに構えてはいられないのですが、染みこんでいくような恋の展開はなかなか素敵だ。

うまく色々なことを盛り込んであって、読んでいる間に気持ちをそらさない、切なくも前向きな話です。ほのぼのだけじゃない色々なおっかないエピソードもこみですが、そこもいい味。

たよれる男がトラウマからひっぱり出してくれる、とかその手の話が好きな人におすすめ。このボディガード会社はほんとにでっかい家族みたいなので、「仲間」という感じが好きな人にもおすすめです。
今は金持ちの男をたぶらかしてる遊び人Ravenの話とか、そのうち読めるかな。読みたいなあ。

★虐待
★立ち直り


ここの会社の経営者たちの話は別のシリーズにも出てきますので、もしBrierの兄のBramや下の弟の話が読みたい人は、この「Reunion」ものぞいてみるといいかと。BrierとJackieがはじめてくっつく時のエピソードも楽しい。
こっちはやたらとキャラが多いので、多少人間関係の基礎知識つけてから読んだ方がおもしろいと思います。

Anarchy in Blood
T.A. Chase
Carol Lynne
Anarchy in Blood★★☆ summary:
Dracul's Revengeシリーズ2。

ホワイトハウスの周辺で金髪の若い男の死体が発見される。
それがはじめての死体ではなかった。そして、最後の死体でも。

Douglas大統領の個人秘書として働くAaron Bakerは、その死体と大統領とを結びつけようとする噂に頭を痛めていた。
誰かが大統領を陥れようとしているのだろうか? 彼と相いれない副大統領の策謀だろうか?

Aaronは、元シークレットサービスのGrayson Millsに連絡をとり、調査を依頼する。
Grayson Millsは、ゲイ嫌いの副大統領によってあらぬ言いがかりをつけられて、シークレットサービスを首にされた男だ。

Grayは、転落の原因であったホワイトハウスに2度と関わりたくはないのが本音だった。
だが、Aaronの頼みであるならば、話は別だ。数度しか会話をしたことのないこの若い男に、Grayはずっと惹かれていた。

彼らは次々と現れる死体の謎を解こうととりかかる。
何よりもGrayを悩ませたのは、金髪で若いその被害者の特徴が、まさにAaronにもあてはまることだった。それは偶然なのだろうか。
.....



Dracul's Bloodの続編です。前回のカプとは違うカプで、でも友達なので途中で前のカプも出てくる。

Aaronは子供のころから知っているDouglasのために大学生の頃に選挙スタッフとしてボランティア参加し、今では大統領の個人的秘書として働いていますが、まだ若くて生き生きとしている青年です。
彼は大統領を尊敬していて、その窮地を救うためにGrayに連絡する。AaronはずっとGrayの事が気になっていたのですが、Grayがホワイトハウスを去ってからの二人は縁が切れている。

Grayは一度は転落した男で、そこから這い上がって今は探偵社をやっています。
彼もまた、ホワイトハウスにいるうちからAaronのことが気になっていましたが、結局声をかけられないままに、人の策謀によってホワイトハウスを追われた。
そんな二人を、血なまぐさい事件が再び結びつける。

すぐに惹かれあう二人ですが、なかなか簡単にはいきません。
事件の調査もあるし、Aaronはホワイトハウスで働くだけあって労働時間が無茶苦茶。なかなか会えなかったり、あっても時間が短かったりしますが、彼らは一緒にいる時間を精いっぱい楽しむ。

Grayはかつて戦場の秘密任務で負傷して軍隊を離れ、ホワイトハウスでシークレットサービスとなるも、ゲイ嫌いの副大統領に言いがかりをつけて追い出された。
人生の落後者となり、そこから這い上がった彼には強さと弱さが同居していて、それが複雑なキャラクターの陰影を作っています。
彼が若くて少しやんちゃなAaronに恋をして、幸せそうになっていく様子がいい。
Aaronが煙草の匂いに執着していて、Grayのキスの匂いなんかに興奮してる様子もなかなかエロくていいと思います。

話は前作の「血のワイン」の存在を引き継ぎ、秘められた結社である「Knights of Paiderastia」の存在がまた浮かび上がってくる。
それはAaronの中に流れる血筋とも重なり合って、最後にスリリングなクライマックスとなっていきます。いや、ラストの方には意表を突かれた。

作者二人の合作二作目で、かなりいい感じの調和が取れてきていると思います。
現代の吸血鬼ものが好きな人におすすめ。前作を読んでいた方がいいですが、単独でも読めます。

★ホワイトハウス
★連続殺人事件

★Three-Star rating system★


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